― for you ―
「侑士って、なんで眼鏡なんてかけてんの?」
突然、俺の顔をじぃと見つめていたがそう尋ねた。
「なんで言われても・・・目が悪いからに決まってるやんか。」
誰もいない教室にて、テニス雑誌を読んでいた俺は顔をあげた。
夕闇にかかるのはまだ少し先の話の時間。
外では部活動をする青春人達の声が聞こえる。
顔をあげて、目が合った彼女こそ、俺の恋人。
大きな瞳が印象的で、どこか気の強そうな印象を持つ。
名を、という。
は俺の答えにあまり納得がいってない様子で目を細めるとゆっくりと両手を上げた。
細くて長い指。
色は雪のように白くて。綺麗に手入れされた爪が俺の眼鏡の銀縁に触れる。
丸眼鏡をなぞるように両指を動かして。
口元には、微笑み。
企んだように楽しそうに嗤うと、眼鏡を引いた。
突然視界がぼやけて、の顔も見えなくなる。
「・・・・・・っ・・・・・何すんねん。」
「私、彼氏は見せびらかすのが趣味なのよね。」
にやりと不敵な微笑を称えた。
ゆっくりと目を細める様は、まさに月の女王そのもの。
「せやかて、見えへんかったら意味ないやん。」
「侑士は素顔の方がずっと美人でかっこいいよ?(にっこり)」
「(人の話ぜんっぜん聞いてあらへんな・・・)返してくれへんと、困るんやけど。」
「だいじょーぶ。私が侑士の目になってあげるからvv」
自分勝手で自己中心的な女王様は、今日は引く気はさらさらないらしい。
にっこりと嬉しそうに笑うの笑顔が眩しい(眼鏡ないからよく見えへんけど)
仕方がないので、俺は立ちあがった。
「お。諦めた?」
そうして、一つの溜息。
「何言うたって敵わへんこと知っとるから。」
諦め顔で言ったら、ぼやけたの表情は見て取れるほど笑みを深めた。
そうして、自分も立って鞄を取る。
「お送りしましょう?部室まで(にっこり)」
「そいつは・・・どうも。」
言って、足を一歩踏み出した。
・・・・・・・
ガンッ!!
「侑士!!!」
ちょっと歩いただけやのに、椅子にぶつかり机にぶつかった。
激しく音を立てて俺は四つんばいの格好になる。
が驚いたように俺の名を呼ぶ。
・・・・・・・・・・どくん。
心の中で鼓動が大きく跳ねたのを聞こえた。
けれどそれは彼女には届かない。
気づく事もない。
「・・・・・・・・だいじょぶ?」
「・・・・・・・・・・・・うん。」
「はい。」
そう言って手渡されたのは、眼鏡。
俺はソレを見て手を伸ばすと元あるべき場所に収めた。
そのおかげで随分と視界が良くなる。
「・・・・・・・・・・・・・おおきに。」
「いいえー(笑顔)」
返すんやったら最初から返してくれればえーのに・・・。
せやけど恐いので口には出さない。
外に出ると、一瞬だけ風が強く吹いた。
うざったい俺の髪の毛は大きく風と踊って、眼鏡の奥にまで入ってきた髪の毛を邪魔だと思う。
ちらとを見遣ると、の髪の毛も風によってなびいていた。
さやさやと、絹糸のような髪の毛はゆるやかになびく。
嗚呼、綺麗や。
同じ髪の毛なのにどうしてこんなにも違うんやろ。
俺の髪の毛はうざいこと極まりいないのに、どうしての髪の毛はこんなにさらさらしているんやろか。
穏やかに微笑みその横顔はとても綺麗。
ふっくらとした桃色の唇。
その唇から漏れる声で、呼んで欲しい。
そうすれば
何処にいたってかけつけるのに。
不意に視線を感じたのか、が横を向く。
視線が交わる。
俺の瞳とぶつかったら、はいっそう笑みを深めた。
眩しくて、そしてとても綺麗。
どうしてそんなに嬉しそうに笑うんや?
ついと指が俺の髪の毛先にふれる。
つん、と、少しだけひっぱると目を細めた。
「侑士の髪の毛は、綺麗ね。」
「・・・・・・・・・・・・・・・そ・・う?」
「うん。艶があって、強い風が吹いているのに綺麗さが欠けないの。」
の方がよっぽど綺麗やのに。
そんな事を思う。
「好きだな、侑士の髪の毛。」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どくん。
鼓動が鳴る。
けれど、それもまた彼女には届かない。
否、気付かない。
毛っ先に触れていた指が俺の頬をいとおしむように撫でる。
それに酔いそうになって、俺は目を細めた。
するりと手の平は首の後ろを這って、力を入れられる。
強い力ではないけれど抵抗はしない。
そのまま俯く感じになった俺の唇へ
は優しいキスを送った。
近い視線が一層近くなる。
交わるのではなく、絡まる瞳。
楽しげに笑う月の女王は、いつも美しい。
「・・・・・・・・じゃぁね。」
名残惜しげに離れると、俺の横をすり抜けた。
俺の表情は変わらない。
だけど、鼓動は早い。
鼓膜を打ち破くのではないかと思うほどに。
その「音」は大きく響く。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・オイ、邪魔なんだよ。」
「いったぁ!!!」
どげし!と、言わんばかりに俺の膝の裏を跡部は容赦なく蹴り飛ばした。
思わずするどい痛みが走って悲鳴をあげる。
「な、なにすんねん!!!」
ちょっと涙目になってしまう。
本気で痛かったで!?今のは!!!
「部室の前でいちゃいちゃしてんじゃねーよ。」
不機嫌度MAX・・・・(汗)
整った顔にしわが寄る。
恐い、恐すぎる…
「別にいちゃいちゃなんてしてへんで。」
「ほーぅ。お前はそんなに俺に自慢したいのか。」
「(誰もそんな事言ってへんて、汗)……………今自分が彼女いないからって人に当たるなや(ぼそ)」
ぼそりと小声で言ったら、跡部は「どがっ!!」と、有り得ない効果音を立てて部室のドアを開けよった。
……………乱暴なやっちゃ。
無言で機嫌が悪い事を象徴する跡部に俺は溜息をつきながらも部室に入る。
あーあーあー…、ドア、壊れてんで?
跡部は、ばさりと制服を脱ぐと着替え始める。
色素の薄い髪の毛がさらさらと流れた。
整った顔立ち、全てを見透かすようなその瞳。
この男には
「完璧」という言葉が相応しい。
「?……なに見てんだよ。」
「いや、なんでもあらへん。」
まさか男に見とれてたなんて言えへんから、そう答えたら跡部はフンと鼻を鳴らして額にしわを寄せる。
視線は俺から外れたから、少し安心した。
「お前、とはどうなんだよ。」
突然、薄い唇がそう尋ねたから言葉に詰まった。
「どうって…別に普通やけど。」
「ふぅん。」
「なんでや。」
「別に。」
「………。」
「に何か言われたん?」
胸につまる言葉を吐き出した。
さら…茶色の髪の毛が揺れる。瞳はゆっくりと俺にと合わせられた。
強い瞳。俺はこの瞳が苦手や。
「………………………お前にとって、あいつはベストパートナーか?」
跡部は時折遠まわしに俺に尋ねることがある。
その問いに、その言い回しに、気づく事が出来なくて俺は答えられない。
今回もそうや。
跡部は言いたい事を隠して遠まわしに俺に伝える。
だから
俺は考えなければならない。
「?………ベストパートナーってなんやねん。」
「アイツとお前は全然全く違う性質のものだろ。水と油が相容れないように、お前とも相容れないんじゃないかって思っただけだ。」
相容れない?
人は誰しも違う性質をもつ。
だから俺とが違う性質を持っていたとしても全然おかしくない事だ。むしろ当然。
けれど跡部はあえて尋ねてくる。
何故だ。
茶色の瞳は黙った俺の心を読み取るかのように深く色づいた。
「はお前を束縛したがるだろ。独占欲の強い女だ。」
「あー、せやな。そうかもしれへん。」
「だけどお前は恋愛に対して無頓着だろ。」
「別に…そういうわけじゃあらへんよ。」
「でもアイツの求めてるものは与えない。」
「………………。」
「からしたら冷めてて自分に興味がないのかと、そう思うんじゃねーか?」
そこでやっと俺は跡部の言いたい事が分かった。
だけど分かったけれども意図が理解できない。
だから俺も瞳を外さずに跡部に尋ねる。
「それはが跡部に言ったん?」
「たまたま、その話を聞いた。」
「なんで俺に言わへんかったんやろ…」
「へこむんじゃねーよ。たまたまだって言っただろ。」
しゅんと落ち込み気味で言ったら、跡部は「けっ」と言う顔をして俺に言った。
けれども、言った言葉にきは気遣いの情が含まれている事ぐらい俺にも分かる。
「それに自分の男にそんな事いえねぇだろうが。」
「せやけど言ってくれへんとわからへんもん。」
知らなかった。
だってはいつもと変わらず俺に接していて。
例えそれが偶然で、跡部の言うようにたまたまそんな話になったとしても。
せやけど、それはの本心だ。
きっと今俺は無表情で。
やはり何を考えているのか分からないと跡部に思われているのかもしれへん。
だけど、渦巻く心がある。
灰色のような怪しい雲が心に広がる。
無表情で、何もうつさない瞳は自らの心に向き合う。
どうして伝わらないのだろう
彼女に触れる度
彼女に名を呼ばれる度
こんなにも心が震えるのに
こんなにもイトシイと涙を流すのに
「俺…は。」
喉に異物が詰まったような感覚。
言葉がつまる。
跡部がゆっくりと顔をあげて俺に顔を向けた。
薄い色素の髪の毛がさらりと鳴った。
鋭い瞳が痛い。
その強くて美しい瞳は、いつも俺を見透かす。
そう、だ。
あの月の女王と同じように。
「俺は…別にが離れるんはしょうがないと思っとる。」
「なんだよ、それは。」
「せやかて、しょうがないやん。が離れたい思うてるんやったら…」
「んなこと聞いてるんじゃねーよ。」
「せやったらなんなん?」
苦笑したように、答える。跡部がだんだんいらだっているのが分かって。
多分それはと何かを話したんやとは思ったけれど、俺には話してくれない俺には分からない話。
それが少し悲しかった。
「少しはあいつの事考えて自分を出せっつってんだ。そこまで言われないと気がつかねーのか?」
思っとるよ。
せやのに、なんでそんな事いうねん。
「お前にとってアイツは特別じゃないんじゃないのか?」
「違う。」
「違くねーだろ。お前のアイツに対する態度はその他不特定多数の奴らと同じもんんだ。」
違う。
と、否定できない。
嗚呼、どうすれば良いだろう。
こんなにも想っているのに。
こんな時、決まって溜息をついてしまう。
理解してもらおうとは思わない。
自分がまいた種だ。それで離れてしまうのなら、仕方がない。
どうやって伝えたら良いのか分からないし。
伝える言葉を見つけることが出来ない。
「黙ってたらわからねーだろ。」
「跡部はなんでそんなに怒ってるん?」
「あぁ?」
「なんでそこまで怒ってるんや?俺の煮え切らない態度に腹が立つのはわかるねんけど、それにしたって深追いしすぎやろ。跡部らしくあらへんやん。」
「どういう意味だ。」
「跡部も…の、事。」
その後は続かない。
何故ならもしそうだとしても自分には敵わないからだ。分かっているからだ。
「馬鹿言うな。」
跡部は心底嫌そうにそう答えた。
「お前の妄想に付き合ってたらきりねーな。」
「せやったら、随分良い人やね。」
少し笑う。
それが本心じゃないやろ。そんな事を思いながら。
跡部はそんな俺の態度がむかついたのか更に額に皺を寄せる。
「気にせんといてや。に嫌われてもしかたあらへんねん。」
「の事はどうでも良い。お前はどうなんだ。」
何がしたくて、何が言いたい。
ソウ、尋ねているように思えた。
きつい口調と強い瞳の向こうに
終わる事無き優しさを持つ男。
「ほんまに、跡部は良いやつやなぁ…」
ククク…と、喉を鳴らす。
そうして、跡部に向かって微笑んだ。
「の相談相手に乗ってくれたんやな。ありがとう。」
「なんでお前が礼を言うんだよ。」
「俺に言えへん事やったんやろ?」
「お前…なぁ。」
「そろそろ…潮時かもしれへんな。」
刹那
部室が揺れるかと思ったぐらいの振動で扉が開いた。
外から入る風によって黒髪がなびく。
眼鏡のフィルターを通して見たのは
月のお姫さん。
俺のお姫さん。
愛しい、ヒト。
大きな瞳からこぼれそうに涙を一杯に溜めては立っていた。
俺の口が少し開いて名前を呼ぼうとしたのを、先に制した。
「――――――――っっ侑士の馬鹿ぁ!!!!!」
限りない声で叫んで、は飛び出した。
「っっ!!」
「………あの馬鹿。何飛び出してきてんだ。」
ぼそりと跡部が呟いたから思わず跡部の顔を見た。
跡部は片目をゆっくりと細めるような感じで俺を見て。そうして。
「行けよ。」
「え?」
「追いかけろ。」
俺は駆け出したんや。
**********
******
「………………っっ……!ちょお待ち!!!」
言葉には、応えない。
俺はただただ全速力で前を走る彼女を見ていた。
どうして追っているのか。
追ってなにを言うのか。
分からない。
どうせまた伝わる事なんてないのに。
思っていても、足を止める事が出来なかった。
距離が縮まる。
一歩、二歩と距離を縮める。髪がなびく。
待って。
置いていかないで。
「…………っ!!!離してよ!!!」
細い手首。俺が掴むとあまるほどの白い手首。
ようやっと捕まえて、ほっと息をつく間もなく汗が吹き出る。
鼓動は早い。
それは走ったからなのか、心の動揺か。
前者だったら良い。
怒りに満ちたの瞳は涙を沢山溜めていて。
溢れようとする涙を必死で堪えているように思えた。
どうしたら良い?
伝われば良いのに。
「………………嫌や。」
それを言うのに精一杯だった。
案の定、は少し目を見張りつつもまた瞳をきつくした。
「侑士さ、私のこと嫌いなの?」
え゙、そんな事あるわけないやんか。
「そんな事…。」
「だったらなんで嫌われても仕方ないとかそういうこというのさ!!」
「それは…。」
仕方あらへんやん。月の女王様が俺に飽きるってのは理解できる事や。
「いっつも無関心!私のことなんて飽きたんでしょ!!!!」
馬鹿な事を。
そんな事あるわけないやん。
「侑士は何も言わないし、いつも笑ってくれるけど、それは嘘なんじゃないの!!??」
そう、は俺のことをまくしたてた。
俺はただただ耳に入ってくる痛い言葉達を素通りさせていて。
まるでその言葉が小さな音となってただ無常に耳の中を駆け抜けていくようだ。
何も感じない。何も聞こえない。
ただ、の泣き顔が目に入る。
困惑と、切なさ。
襲いかかる。
泣かないで欲しいのに。
いつも笑って欲しいのに。
どうして届かない?
「私がどんなに我侭言っても怒らないし!!!」
「別にいちいち怒るようなことでもあらへんやん。」
「そういうの無関心っていうんだよ!!!」
もう、何言ってるんやろか。
好きな女なんやからそんな事ぐらいで怒ることあらへんのに。
「侑士はっ…………私のことなんてっっ!!!!!!」
………………………ぁ………………
目に飛び込んだのは教室の白い壁。
そこに取りつけてある三階の窓。
開いたその空間からバケツが見えて、
水滴…否、水の洪水が落ちてくる。
生徒の驚いた顔。
俺は思わず数歩距離の空いたとの距離を縮めた。
否、掴んだ手首を引き寄せた。
********
****
**
「………………つめたっ……なに………?」
バシャと背中にかかる冷たい感触。
最初は衝撃。そしてじわじわと広がる水。
何がおこったのか背を後ろにしてたんだから分かるはずもない。
私は小さく呟くと訝りげに眉をひそめた。
ぎゅうとそん私を頭から抱え込んで、侑士は少し顔をあげる。
「すっ…、すみません!!!大丈夫ですか!!!???」
「あー、ええよええよ。気にせんといて。」
ふ…と笑って男子生徒(多分1年生やろか…)に手を振ると、彼はぺこぺこと頭を下げて窓から姿を消した。
「…………っ侑士…。」
私の目に映った侑士は、頭から水をかぶったみたいに…否、かぶって全身びしょぬれだった。
黒い艶のついた髪からあとからあとから水滴がこぼれる。
呼び声に気がついて、私に顔を向けると侑士は少し湿った手の平を私の頬にあてた。
「少し濡れてしもたな。平気?」
「………。」
「?」
私がよっぽど間抜けな顔をして侑士を見上げていたからだろう。
侑士は頭に疑問符を浮かべつつも私に微笑みかける。
その姿を見て、ふつふつと怒りが沸いた。
「……………・っっの、馬鹿!!!!!」
「!!」
「何やってんのよ!濡れてんじゃん!びしょぬれじゃん!!!」
「ぇ、いや…濡れるかなー思て。」
「濡れてんのはお前だ!!!大事な体なのに!!!!」
「そんな、妊婦じゃあるまいし(苦笑)」
「(苦笑)じゃない!!!試合前の大事な体なのに!!この馬鹿馬鹿!!!」
馬鹿だ馬鹿だとまくしまくる私を見て、ちょっぴり侑士は驚きながら
でも
なんで
そんなイトオシソウニ笑って私を見るの。
私は胸がきゅーっとなってしまって、止まっていた涙がまた溢れ出した。
したしたと頬を濡らす。
切なくて
苦しくて
この人に
なんて言ったら伝わるのだろう。
******
***
目の前で愛しい人が泣いている。
俺はどうしたら良いんやろか。
微笑んだのに、泣かせてしまった。
微笑が消える。
どう、伝えれば良い?
こんなにも君を愛しているのに
その言葉は届く事はない
言葉にならないこと贈る言葉を
どうすれば君に伝わるだろう
「…………侑…………士…………?」
風が吹いた。
髪についた水滴が空中へ舞い、くるくると空に呑みこまれていった。
の表情が見えないぐらい身体を寄せて、お互いの体温を感じられるほどきつく腕に抱く。
愛してる。
そんな事を思いながら。
「………な、なに…?どうしたの…。」
はいつもの俺と違うのを感じ取ったようで。
動揺を隠せずに俺に尋ねた。
瞳をすぅと開けて。
水滴がかかった眼鏡からはぼやけた風景しか見る事ができない。
このぼやけた世界は
まるで俺の心を現しているようだ。
「難しいわなぁ…。」
「な、何が?」
伝えたい言葉がある。
「人間て、言葉て、本当に難しいわ…。」
苦笑したように言葉を漏らすと、は疑問符を頭に浮かべて身体をよじらせて顔を上げた。
俺も視線を少し下げての瞳と合わせる。
「…………ありがと。」
「ふふ、随分遅い御礼やなー。」
「………………(む)」
「(苦笑)」
は少しむっとした表情もしつつも、両手をのばして俺の眼鏡を外した。
「濡れたね、眼鏡。」
「せやな、なんも見えへんわ。」
瞳を少し閉じて微笑む。
「やっぱ、私侑士の素顔が好き。」
「なんならコンタクトにした方がええ?」
「駄目。」
はっきりと言ったから目をぱちりと開けた。
そこには
夜空に輝く月があった。
強い意志を秘めた瞳が真昼なのにもかかわらずそこに在った。
そうして、表情の成されていない顔に色が出る。
悠然と微笑むその姿は、まさに女王様。
「これは私だけのものにしたいの。」
「さっきは見せびらかしたいって言ってへんかったっけ?」
「うーん、それは悩みどころなんだけどねぇ。」
少々口を尖らせぎみでが言ったから、俺は苦笑した。
「あっ!!」
「?」
「こんなことしてる場合じゃない!早く乾かさなきゃ!!!」
「別に平気やけど?」
「いや!平気じゃないし!!!身体冷たいし!!」
「そんな死人みたいなー。」
「そのうちそれが現実になるよ!!!」
「(それはちょっと嫌や…)」
確かに、この秋空の下濡れた身体をそのままにしていたら風邪を引いてしまうかもしれない。
「………えー、嫌やなぁ。」
「はぁ!?何いってんの!??」
「せやかて、もう少しこうしていたいもん。」
「っ。」
目を少し伏せみがちにしたら、は驚いたように目を見開いた。
それに、俺が疑問を抱く。
「(な、なに…)」
そうして、顔を紅く染めるのだ(可愛ぇけど…)
「そーゆー風に、言われると照れる。」
そういって顔を背けるは万倍可愛かった。
いや、本当に。
だからまたぎゅーと身体を抱き締めた。
「ちょ、ちょっと侑士!!身体拭かないと!!!」
「そんならが暖めてや。」
「ええ!!??」
触れるの頬が熱くなるのを直に感じて、少しほくそえむ。
そうして、少し味をしめた俺だった。
貴女に、伝えたい言葉があります
-----------
そんなこんなで侑士ドリ。
うわー、へたれな侑士を書いちゃった。長かったー。
けど楽しかったから良いや(良いんだ)
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