最近、好きな人が出来ました。









― 儚げなモノ ―












最近、好きな人が出来た。
だから、その人に会う為に今日もまた学校の前へと直行する。
直に会う事は出来ないから、電柱の後ろからそっと見て。
悲しいけど、それが今の現状。
それが、俺の精一杯。



















・・・・・・・・・・・・・・・・・ぁあ・・・・・相変わらずめちゃめちゃビューティホ〜〜〜〜・・・・


とか、なんとか思ったりする。
俺の目の前にいるのは、不二周助。
こんな気持ち、おかしいとか思ったりする?
でもあーーんなに可愛くて綺麗なんじゃ好きになるのしょうがないよね。


色素の抜けた蜂蜜色の髪。淡い茶色の瞳。
細い躯。
その全てが
ダイスキ。


でもまさか、男の俺が自分の気持ちなんか伝えられるわけないし?
しかも俺ってば他校だから絶対無理無理。







しかも、さ。








不二の隣はもう指定席できまってんの。













「不〜〜〜二ぃ〜〜〜〜。」


ほぅらね。やっぱり現れたよ。
彼の名前は菊丸英二。
彼も負けず劣らず可愛いけど、俺ってば綺麗な子の方が好きって言うか、
元気満々も良いんだけど静かに笑ってて儚げなのが好みなんだよね〜〜〜


菊丸君と不二はとても仲が良い。
本当に、良い。




もしかして付き合ってたりしたら・・・どーすんべ・・・・・・



でも、まさか。
不二ってばそっちの人種?



にしても、可愛いなぁ・・・・。



いやいや、それだったら俺と同じって事でまたそれはそれで嬉しいんだけど。
でも、結局不二の隣にいるのは菊丸君って事になるからやっぱり、微妙だな。





どうでも良いけど、可愛いなぁ・・・・。





と、考えをめぐらしてやっぱり、じっ、と不二を見ていた。
部活が終わってその髪には少しばかり水滴がついていて
菊丸君に向けられている笑顔がとても優しくて






はぁぁぁ・・・・・・・不二・・・・・・・君ってば、罪な人。


















な、瞬間。




















ばちり。と、目があってしまった。





















俺は思わず電柱の後ろに隠れる。

げ〜〜〜〜〜やば〜〜〜やっちゃったかも…。

不二は俺と目が会ったときその糸目の瞳を大きく見開いたから、絶対ばれてると思う。
しかも、なんで後ろに隠れたりしちゃったんだろう・・・。
あやしすぎだって、俺。
でもさぁ、慌てるよなぁ、普通。

思わずへたれこんでしまった。
ずるずると電柱に背中を押し当ててその場にしゃがみこむ。
電柱から伝わってくるぬくもりも何も無い冷たい温度が、背中へとじわじわ広がっていく。


















「千石君?」













うわぁ………絶体絶命………・……
千石清純大ピー―ンチ・……………。汗。








ゆっくりと顔を上げて、精一杯な笑顔と、平常心を保つ。
「…………・・こんにちわvv」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
あぁぁぁぁ・・・・・不思議がってる…・・・・・・
「こんな所で何してるの?」
え゛・・・・・・何って言うか、不二に会いに来たんだけど。
てぇ、んなこと言えるわけ無いじゃん。
どうしよ・・・・あぁ、どうしよう・・・・
「・・・・・・・・・・・・・・・・」
「また可愛い子物色?」
「そ・・そう!!そうなんだよねっ!!!青学は可愛い子多いからさぁ〜〜〜。」

ナイスフォロー、不二っ!
もしかして俺達良いコンビになれるんじゃないかなっ。
なぁんて、ね。
可愛い子って言うのは不二なんだけど、この際何でも良いや。


そしたら不二は、くすり。と笑った。
「またまた・・・・そんな事言って青学の事偵察に来たんじゃないの?」
「あれぇ、ばれちゃったかな〜〜〜?」
あはは。とか笑ってみる。
なんだ、結構普通に話してるじゃん、俺。
俺ってばなんて演技派。
もしかしたら俳優になれるんんじゃないの?






でもね。


俺の心臓はすんごく早く脈打ってる。
どくどくどくどくどく・・・・・・・・・・
それは五月蝿いほどに。

きっとこれが君を好きだという証なんだろうね。












「桃だったら残念ながらレギュラー落ちしちゃってね。」
「・…・・・・・・そうなの?」
それはびっくり。一体誰に負けたのかな?
ていうかさ、オモシロ君負けちゃ駄目じゃん。
負けちゃったら君に負けた俺はどうなんのさ。


驚きの声を上げたら不二はまた淡く笑う。
俺は不二のこんな風にかすかに笑う笑顔が好きだ。
だまらない。
とても儚げでね、抱きしめたあげたくなるような。














・・・・・・・・・・・・っつー・・・・・・・・・・か・・・・・・マジ男殺しだよ・・…不二。










抱きしめたい、キスしたい、抱きしめたい、キスしたい、想いを、告げたい……
そう頭の中でエコーがかかっていく。
催眠術の如く。
俺を、術にかける。









考えてみたら、こんなチャンスめったにないんじゃない?
これを逃したら駄目なんじゃない?












言ってみようか・・・・・・・・・・・・・・・・









でもっ!!!断られたら・・・・・・っつーかその前に怖がられたらっ!


でもっ!




言ったらきっと楽になるんだろうなぁ。菊丸君の事も気になるしさ。














…………・男だろ、俺っっ!!!



















「ふっ・・・・不二!!!!!」
勢い良く立ちあがったから不二は少し驚いたように瞳を開けた。
その効果音にふさわしく、がしりっ。と両肩を掴んで口を開く。
「不二、俺っっ・・・・・・・・・・・・・・。」








「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」













「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ιιιιιι」


















「千石君?」
「・・・・・・・・・・・・ごめん、なんでもないιι」


がくぅ。と、不二の肩二手を置いたままうなだれる。
どうしてこうかなぁ?意気地なしめ・・・・・・・・・・・



あぁ、でももう少しこのままで。
このまま、もう少しだけ君に触れさせて。






「大丈夫?」
言われて、顔を上げる。
至近距離で見た不二は、やっぱり綺麗だった。
思わず、鳥肌が立った。





目を、大きく見開く。










「ご・・・・・・・ごめん・・・平気!!!」
肩をぐっと押して、身体を引き離す。
どくどくどく・・・・と、鼓動の音が聞こえる。




やばい・・・・・・・・ついキスしそうになった。








俺はちょっと今の状況に危険を感じたから、少し名残惜しいけど帰ることを決断した。
「それじゃ、俺帰るね。」
なんだか困ったような、泣いているような、おかしな笑顔を浮かべていたかもしれない。












そうして、走る。全速力で。





















ぐんぐん小さくなって行く清純を、その背中を見つめる。
「不二?どうしたの??」
英二が肩越しに声をかけて、にょっこりと肩に首を乗せる。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・何が、言いたかったんだろう?」
「にゃにが?」
不思議そうに尋ねてくる英二を横で見遣って、目を細めた。
「ううん、なんでもないよ。帰ろ?」
お決まりのにっこり笑顔。







どうしてか







何故か









彼と会って話しをした事を、他の誰にも教えたくなかった。









この気持ちはなんだか、まだ分からない。






















――――――――――



「亜久津ぅ〜〜〜〜〜!!!!!!!!」

がしいっ!!!

と、後ろから亜久津に向けてタックル。
そのまま清純は腰に手を回す。

「げっ・・・・・・千石。」
「げっ、とは何さ、げっ、とわ〜〜〜〜。」
唇を尖らして清純は言った。
亜久津は嫌そうに顔をしかめる、が、清純は気にするそぶりを全く見せない。
「聞いてよ〜〜〜阿久津〜〜〜俺の悲しいお話。」
「ぜって―嫌だ。」
今前での経験上、良くない事が分かっているのであえて断る。
そのまま清純を引きずって、歩く。
ずるずるずる・・・・・・・・・・と、音がするが、気にしない。

(どうせこいつの事だから・・・・・・・・・)

「不二がさぁ〜〜〜〜〜」

(ほらな)

悟ったように、亜久津は思う。
なぜならこの頃うざいぐらいに清純が不二周助の事について何かあるごとに語りまくるからだ。
はっきり言って迷惑なのだが。
一度話しが始まったら最後、それが終わる事は決して無い。
つ――か、離してくれる事も、無い。






「亜久津〜〜〜〜〜〜ぅ〜〜。」
言われても、無視。
とにかく、無視。

「お前うぜぇんだよ!あいつの話は他の奴にしろ!」
「え〜〜〜だってこの恋心は亜久津にしか話せないんだって。」
「迷惑だっつの!」
「良いじゃん、暇なんでしょ?聞いてよ、あっく〜〜〜ん・・・・・・。」



それでも亜久津は全くの無視で。
全然聞く気は全く見せない。
そんな亜久津の態度を見て、清純は引きずられたまま




すぅ、と目を細めた。







みしぃっ!!!




「・・・・・・・っっ・・・・・・!!」
回していた手に必要以上の力をこめる。
思わず、亜久津の足が止まった。
「やぁっと・・・・止まってくれたねぇ。」
にぃ。と、口元を三日月の如く歪めて、清純は嗤う。
その表情は亜久津からだと見えない。
けれども先ほどとは明らかに違う声の質に恐怖を覚える。
「千石、俺は…ι」
「っつーか・・・・・・・・・聞けよ。」
「…………………………」






ぼそり、と言われた言葉には、「強迫」の2文字が含まれていた。
逃れる術は、ない。

















「だからさぁ、やっぱりあの時は逃すべきじゃなかったって、思うんだよね!」
(・・・・・・・なんで俺こいつの話を聞いてるんだ?)
屋上にて、亜久津はタバコをふかしながらそんな事を思う。





けれど、結局従うしかないのだ.
何故か何故か清純にだけはいつも逆らえない。





「にしても、不二ってば相変わらず可愛くてさぁ。思わずきゅーーん・・・てなっちゃったvv」




こいつは不二の前でもこんな態度をとったりするのか?



いつもはおちゃらけててお気楽な奴だけれど、ときどきとても鋭い目をする。
というか、自らで化けの皮を剥ぐ。



こいつのもう一つの顔、不二は知ってんのかよ。



知らないのなら、是非教えたあげたいものだ。
勿論、そんな事をすれば清純に何をされるか分からないので言わないが。




誰でも、命は惜しいものだ。
亜久津も例外ではない。






それにこいつの事だからしっかり不二の前では猫かぶってんだろうし。




そう、まさにその通り。
清純はしっかり不二の前では猫をかぶって、「良い人」を演じきっている。
けれど
果たしてどちらが良いのだろうか。


好きな人に好きになってもらうために自分を作るのと。
全てをさらけ出せる人がいるのと。
本当はどちらの方が良いのだろうか。

好きな人に全てを見せれる事が一番良いのだろうけど、
人間だし。
そんなのは、無理だ。





人は誰でもそーゆーどろどろした物を持っているから。
たまらなく、臆病だから。
弱い、ものだから。

だから。


仮面無しでは生きていけない。





それが大切にしたい人、大好きな人だったらなおさらな事。














「亜久津だったら言えるのにな――――・・・・・・・。」
足を伸ばして、空を見上げる。
そんな清純を横目で阿久津は見る。









「それは不二周助に言うから意味があるんだろうが。」
「良くワかってんじゃん。」
ふ・・・・・と、清純は笑った。
そしてそのまま亜久津へと手を伸ばして、タバコを取った。
そのまま口へと持っていく。



吐き出された紫煙は空へと消えていく。






「俺はお前のそんな姿を見せてやりたいぜ。」
「無駄だよ、へまはしない。」
目をゆっくりと細めて清純はまた煙を吸った。








空へと向けられた瞳が横にそれて亜久津に向かわれた。
「ねぇ、俺の家に今日来ない?」





何度も聞いた台詞。






「またあいつの変わりか?」
くっ、と嘲笑する。
「違うよ、亜久津は亜久津だもんvv」







てめぇは嘘ばっかりだ。




だったら、どうして
今俺を求める?
不二と何かあったときたまらなく求めるんだ?





それは、お前が目を背けてるだけだ。










でも、亜久津は別に構わない。







自分でもどうして清純とそういう事をするのか分からないのだから。
しかもそれに素直にしたがっているのがおかしい。






ゆっくりと自分に伸びてくる指。髪に触れる、頬に触れる、指。
うっすらと。
きっと不二の前ではしないであろう不適な微笑を浮かべて清純は亜久津に近づく。
自分の唇を、合わせる。






合わせて、少し離して、
そして、ふっ………と、清純は表情を消す。







何故、俺は黙っているのか。
どうして、こいつを拒まないのか。







そうして、清純は亜久津の肩に首を乗せて細い息を吐き出すのだ。
どんな表情をしているか、大体想像がつく。



きっと







きっと何も命を宿していないであろう空っぽの表情を、コイツはしている。
そう、亜久津は思った。














肩にかかる人の重みを感じて、亜久津は髪に触れる。
清純はただ触れられる。









本当は放って置けないのかもしれない。






一人にしたら、それこそ。
壊れてしまう儚いのは不二ではなくて。


















目の前にいるコイツだと亜久津は思うから。














――――――――
後書き

お目汚しの背景すみませんです。汗。
雰囲気的に千石さんが不二に告白しようとして、結局出来なくて脱力してる場面です。
あぁ、何て可愛いの?キヨキヨvv(病気)
っつーか、私ったらなんという小説を。汗。
こんなぶっとんだカップリング、もとより構成なんて誰も考えませんよね、汗。
でも良いや、私楽しかったし(良いのか)

私のキヨに対する性格総まとめです。
私が思うに彼はこんな感じ。
阿久津の前ではおもいっきりブラックな感じで。
でも不二の前だと優しいにっこり爽やかさん。


そんでもって、不二受けだし。
まぁ、いいか。
菊ちゃんの時は攻めだし。



私のキヨ観はどこか壊れてると思う。
すごい、儚いの。
儚いのは、彼なの。
ドリ夢の時もキヨだけど





私が考えるキヨは、きっとこんな感じなのだ。



とか思ったらたまらなく書きたくなりました。


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