今でも覚えている。
否、忘れるはずないのに。







あのとき かんじた









鼓動の早さを。















― かくれんぼしましょ 忍び足 ―





薄ぐらい図書館。
そこの一番奥の窓際の席。
そこはセブルスが学生の時からの変わらない席。
誰しも自分の落ちつく場所があるように。セブルスもあるのだ。


今は就寝前なので図書館にまで残ってる人間はいない。
けれども、教職についたセブルスには可能の事。
教職について良い事があったといえば、これぐらいだ。
セブルスにとっては、毎日毎日無能な人間に自分の知識を与えるなど、無意味な事甚だしいと思っている。





月の明かりで読み物をする。
明かりはそんなに必要ない。むしろ自分の居場所を示す事になってしまうからそちらの方がごめんだ。







カタ・・・




小さな音に反応する。
静かな図書館ではどんな小さな音でも目立ってしまうから。


途端に瞳が厳しく光った。
自分の周りの空気を殺気立たせて、







そうして、自分の周りに壁を作る。








誰も入ってこれないようにと。




















「・・・・・・・・何者だ・・・。」


見えない影に声を押し殺した。ピーブスではない。
あいつならば騒がしいほどにせせら笑ってるはずだから。




「もう一度忠告する。そこに「透明マント」を使って隠れているのは、誰だ?」




言われて、見えない影がゆらりと動いた。





「流石先生。」




ぱさりと透明マントを落としたのは、だった。
闇に溶け込むように黒い艶のかかった髪が月明かりの下で揺れた。
瞳だけは変わらずに光っている。

その人物を見て、セブルスは顔をしかめる。


。今が何時か分かっているか?」

「はい。」

「グリフィんドール10点減点。」



の瞳がすぅと細くなる。
口元には微笑。変わらない笑顔に寒気がした。
瞳だけがただ光っていて。今にも消え入りそうなのに、それなのに。。。


「先生、凄い顔。」

「何故ここにいる?」

「先生に会いたかったから。」

またそれか。と、溜息をつかざるえない。
本当にこの女子生徒にはまいる。一人にして欲しいのに、いつもいつも五月蝿くつきまとって。



そう、





まさに「アイツ」みたいに。








暗がりの中でみると、全然違うのにシルエットが重なる。





あの、ジェームズ・ポッターに・・・。





自分を捨て、結婚し、去っていった憎むべきあの男に。













「お前は、今ここがどこで何時だか分かっていないようだ。」

「やだなぁ。分かってますよぅ。」

「お前に処罰を与えよう。」

「愛の?」

「それ以上なめた口調をすると、更に重くなるぞ。」









苦々しげに「早く去ね。」と、言わんばかりの気迫にもぜんぜん動じない。

淡い微笑をたたえたまま、セブルスに近づく。

「それ以上近づくな。」

「恐いの?」

「何?」


近くまで来ると、机の上にこしかけた。
月の光がいっそうを照らす。
瞳がいっそう光を集めるのに反比するように暗さを帯びる。








胸の奥に潜むもの。
不安、焦燥、・・・・・・・・・・・・恐 怖。

解放されたい気持ちと縛られたい気持ちに悩まされた若かりし頃。

何故もこうしてこの子供に惹かれるのか。

気に、なるのか。






本当は気付いていたとしても、聞けなくて。

聞いたら、きっと戻れない。




ありえない展開に、きっと夢を見る。









お願いだから











吾輩を呼ぶな。

















「・・・・・・・・・・・・・・先生。」




ビクッ。と、あらかさまに驚いてしまった。
は大きな瞳を更に見開いてセブルスを凝視する。
自分の失態に気付いて顔が熱くなるのを感じだ。







「・・・・・・・・・・・っ・・・・・・・・ぷぷ・・・・・。」

「・・・・・・・そんなにおかしいか。」

「怒らないで下さい。私はそんな先生も大好きです。」

「さっさと自分の寮に戻れ。」

「処罰は?」

「もういい。早く私の前から消え去れ。」




今はもうこれ以上この子供といなくない。
早く自分一人で考える時間が欲しい。


かき乱される、感情。






そんな自分は認めたくない。








明らかに自分を拒絶するセブルスに、肩をすくめると「じゃぁ。」と言って透明マントを羽織った。








暗がりにふ・・・と闇に溶けこむ。





























ゆっくりと去ってゆく気配を感じながら、セブルスは座ったまま動けないでいた。
本に集中できるはずもなく。














薄い唇が言葉をなす。




















「・…・・・・・・・・・・・・・・・・・・待て。」






開かれたドアの前で、足が止まる。
気配がうっすらと現れた。





「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・お前 は    誰だ。」










馬鹿なことを。

そんな事は分かっている。に他ならないのに。

ありえないのに聞いてしまう自分は馬鹿だとは思うけれど。



透明マントがするりと半分落とされた。
半身だけ映る。片方の黒い瞳だけが「見える世界」に現れた。

静かに光るその光はあの頃と変わらない。






赤い唇が、嗤う。


























「・・…・・・・・・ジェームズ・ポッター。」








それだけ言うと、意地が悪い微笑を浮かべたままきすびを返した。









「おやすみ、“セブルス”。良い夢を。」




背を向けたままジェームズは言った。


















残されたセブルスはまだ動けずにいる。


冗談か。本気か。




分かっている、冗談のはずだ。
何故って、そんな事はありえない。



あいつは、



吾輩を裏切って、結婚して、そして    死んだ。



あの雨が降っている日に。
月の隠れた日に。





月は吾輩で、太陽はあの男で。








暗い雲に月を隠して。




最後まで吾輩を拒絶して死んだ。

死に目にもあわせなかった、ジェームズ・ポッター。
















震えにも似た髄が        浸透した。






















―――――――――
やったね。ジェスネスター――トォ!!!
やばい、やばいハリポタ好き。
なんか表現が意味訳分からないけどいっか(良いのか)
でもハリポタ一人で反乱起こして良いもんか。・・・・・・いっか。楽しいし。

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