
― 白い犬がくれたもの ―
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・どうしよう・・・・・・・・・・・・・・汗
自分にもたれかかってくる大きな犬の温かい体温を感じて、手塚はそんな事を考えていた。
跡部との試合の後、結構自分で考えていたよりも重症で、仙台ゆきを止む無くされた。
それでも残していく部員達に忍びなくて、考えても仕方なのないのにこの冬空の下散歩に出かけた。
ちょうどよい川原の坂道で、ぼーーーーっと座っていたら。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・一体いつからいたんだろうか・・・・・・・・・・
気付かない手塚も相当天然だとは思うが、どうにもこうにも鼻をぴすぴすしているこの犬をのける事が出来なかった。
ああ、もうなんでこんな事に、泣。
報われない男、手塚国光。
そんな手塚をよそに、川原の上で手塚を発見した男子生徒。
手には肉まんの入った袋がある。
(部長じゃん、なにやってんだろあの人・・・)
またどうせしょうもない事に巻きこまれてるんだろうと予想を立てながら川原を降りた。
「部長。」
「うわあっっ!!??」
「良いリアクションをどうも。」
「越前っ!?」
「(犬・・・?)何やってんの、こんなとこで。」
(あーもー、嫌な予想的中っぽいし、また。なんだかなぁ、この人・・・)
「あっ、なんだその顔!!」
「いえなんでもないっス。」
「どうせ俺はドジだ・・・」
「(なんにも言ってないし)被害妄想っスよ。あ、肉まん食べます?」
「いらんわっっ!!!」
どっこいせ。と、なんとも爺臭い掛け声とともに横に座って肉まんをほうばるルーキー越前。
・・・・・・・・・・・・・何故座る・・・・・・・・・・・・
一人で考えたい事があるときに限って捕まってしるんだ、そんな事を一人ごちた。
「ねぇ、部長。」
「なんだ。」
「マジで九州行くの?」
「・・・・・・・・・・そりゃぁ、まぁ。」
「なんで言ってくれなかったわけ?」
「・・・・・・・・・・・は?」
「は?じゃないよ。だからさ、なんで俺がみんなと同じ日に聞かなきゃいけなかったの?」
たんたんとしているが、明らかにその声は怒っていて。手塚は少し戸惑ってしまった。
なっ、何だろう・・・・・・・・・・・・・
全然分かってないし。
「(とりあえず)すまん。」
「いーえ。それで?何時帰ってくるの?」
「さぁ。」
「はあ?」
「(びくっ)だっ、だってそんなの怪我が治り次第だろうっ。」
「ああもう、だから無理するなって言ったじゃん。」
「だがあそこで引いたら色んな意味で負ける気がしてて・・・」
「結局負けたじゃん。」
「(ガー―――ン!!!)」
ちょっと落ちこむ手塚国光15歳。
さわさわと優しく冷たい風が二人の間を駆け抜ける。
手塚の後ろで寝ている犬の鼻がぴすぴすと匂いを無意識にかいだ。
草の香り。
「・・・・・・・・・・・・・・あんたは平気なの?」
「え?」
ポツリ。漏らした一言の意味が分からなくて、疑問符が頭にとんだ。
「俺は平気じゃない。全然。」
「越前・・・」
「きっと部長の肩具合から一ヶ月は会えないのは必須だし。絶対耐えられない。」
「そんな事言っても、あそこで直すのが一番良いんだぞ?」
「分かってるよ、そんなの。だから俺だってしぶしぶオーケー出したんじゃん。やっぱりまた部長とテニスしたいしさ。」
「・・・・・・・・じゃぁ・・・」
「だから、部長は平気なの?」
もう一度、念を押された。
うっ、と、言葉を一瞬詰まらせる。
夜空のような漆黒の瞳に見つめられて、目をそらせなかった。
「・・・・・・仕方なのない、事・・・だから。」
「本心は?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・寂しくないわけない。」
頬を赤く染めて、俯きがちにようやく手塚は言った。
その言葉に満足げにリョ―マは笑う。
「あー、でも本当に大丈夫かな、俺。」
「今生の別れでもないんだ、そんなに悲しむ事じゃない。」
「違うよ。一ヶ月以上も部長とヤれないなんて耐えられるかなっていってんの。」
「っっっっ!!!お前はどうしてそー不謹慎なんだ!!!」
「なんで?超重要じゃん、部長は平気なの?」
「平気に決まってるっっ!!!!」
あー、もう、やだコイツ・・・
本当に泣きたくなってきてしまった。
「あー、やっぱどう考えても無理。」
「お前も少し我慢する事を覚えた方がいい。」
「ヤダね、そんなの。あ、そっか。俺が行けば良いんだ。」
「絶対来るなっっ!!!」
「なぁんだ。なんで気付かなかったんだろ。」
「聞けよ人の話っ!!!」
「でもそれでも出来ない事に変わりはないし。」
「(もう本当にやだこの人・・・泣)」
「よし。今から俺の家に行こう。」
「なんでそうなるんだ!?」
「don't worry kunimitu 俺の家今誰もいないし。」
「そんな事は聞いてないっっ!!」
「だって今のうちに思う存分やっとかなきゃ。」
「今だって十分自分勝手だ・・・・・・・。」
「いーじゃん、どうせ部長だって最後には気持ち良い思いするんだから。」
「だからっ!!そう言う事を平然と口走るな!!!」
「愛ゆえだよ。さ、立って。」
「ええ!?(マジですか!!??)」
さっさと腕をひっぱるリョ―マに戸惑いながらも嫌がる手塚。
「部長、今ここで素直にならないと・・・・・・・・・・後が怖いよ?」
「(ぎゃぁっ!!)」
ふ、と薄笑いする王子は背の差もものともせずに微笑んだ。
非常に恐い。
ぎゃあぎゃあ言いながら去ってゆく二人の後に残ったのは、犬一匹。
ふさふさとした白い尻尾をゆらしてゆっくりと目を開けた。
(やれやれ、彼の苦労は耐えないわね・・・)
そんな事を思って、また新たな優しい風を身体に受けるとゆっくりと瞳を閉じだ。
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あっはっは、やってしまった、イラスト小説。
ていうか私ことごとく動物好きだなと思わずにはいられない。
なんど自分の作品に動物やらぬいぐるみやら出してんだよ。と、突っ込むしかない。
やっぱり手塚は受けだよね、受けしかありえないともう思ってしまいます。
ちなみにこのワンちゃんメスです。
気立てが優しい白いワンコ。うー――――。大型犬が欲しかったなぁ。
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