― 起床 ―








深い闇の中に捕らわれていたワタシは
伸びてくる手によって腕を掴まれた


声は                   





言葉となって私に届く












“起きて起きて今スグに”


               “戻れなくなってしまう前に”





“早く早く”                      





『声』 は、私に呼びかける。








でも、眠いの。
もっと寝ていたいの。もう疲れたの。










無理して笑うのも、自分に嘘をつくのも。
全て、が。
うっとおしいの。














波に身を任せようとしたけれど
声は五月蝿くワタシに起きろと急き立てる









仕方無しに瞼を上げると



















貴方が不安気にワタシを見ていた。












「またどこかへ行ってたでしょ。」






「べつにィ。」







まだ眠くて、寝ぼけ眼で、夢心地に浸って、
私は云う。

そんな私を見て貴方は苦笑した。
細い指を私へと伸ばして髪に触れる。



向けられるのは、優しい瞳。
















「僕は、時々二度と目を覚まさないんじゃないかって不安に駆られる時があるんだ。」
少し悲しげな色へと、変る瞳。











今の君はとても弱くて儚モノに見えるから
崩れてしまうもろい城壁のように見えるから












「だから、心配だよ。」

















「いつも死んだように寝てるから、その姿があまりに綺麗だから。」
触れる髪を少しひっぱって貴方は言う。

「まるで眠れる森の美女だとか
                    白雪姫みたいだから。」










その甘い口説き文句に思わず笑ってしまう。
  そしたら頬に感じる柔らかい唇の感触が、した。













 声は、もっと近くなって私を酔わせる。
貴方のその美声が、私を酔わせる。





眠りを、誘う。












「だから・・・・・・・・・僕が呼んだら、起きてね。」













その声はとても不安気で、天才と呼ばれるいつも余裕癪癪な不二に似合わなくて。

流されるように頷いてしまった。











『呼んでもある日起きなかった』
なぁんていうバットエンディングは絶対ごめんだよ。




と、耳元で囁く。










そう言えば、考えて見たらいつも引き戻されるのは貴方の声で。

呼ばれて、五月蝿くて。                         


でも                             








手を、のばす。

















心地よい暗い闇。

否、                      

       外に出られないのかもしれない





頭上ではごうごうと大波が揺れているから、水面下ではこんな音が無くて
静かだというのに。














そう                 か


















私は、いつも貴方に呼ばれて戻って来れるんだ。




















ねぇ、まだ眠いよ。
まだ波が押し寄せてくるよ。


頑張って泳いでも、ね。
ただ疲れるだけで最期には力尽きてしまうの。










どうしたら、良い?











「不二・・・・・・・眠い・・・・・・・。」
「ねちゃ駄目。」
「・・・・・・・・・・拷問・・・・・・・・・。」





気だるげに私は貴方の膝の上に頭を乗せる。
貴方は目を細めて笑みを深めた。
















こんなにも眠くなってしまうのは、きっとワタシがまだ逃げているから。
全てに逃げたいから。

だから、眠くなってしまうに違いない。











「寝ても良いよ。ただし、一つ条件。」
「なぁに?」
「君の見る世界を、僕に見せてよ。」
「・・・・・・・・無茶言いなさんな。」
「君に見えるんだモノ。僕にも見えるはずだよね。」
「イヤ、ワタシの夢だし。」
















「夢、なの?」










「ふじ?」




不意に、髪をなでる手を止めて貴方は言った。
「それは本当に夢?」




「何が、言いたいの?」







茶色の瞳が私を捕らえて離さない。








「それは君にとってただの夢に過ぎないわけ?」













「・・・・・・・・・・・・・・ワカラナイ。」








素直にそう答えたら、不二は苦笑交じりに言った。
その表情はどこか寂しげ。
どこか、悲しげ。
どうして、そんな目で、表情で、私を見るの?








優しい声が、眠りへ誘う。













「だから、君を寝かせるのは嫌なんだよ。」










まるで子守唄の如く、その 「声」 は遠くに聞こえた。














――――――
後書き




一番投票数が多かった不二ドリ夢
ていうか、詩・…ですね。
しかもくらぁいっっ・・・。
でもでもオッシーが白だから不二が必然的に黒になってしまいました。
久しぶりの不二。
ドキドキします。
でも全然出てきてないですね。
そりゃそうだ。
だって詩だし。



でも、本当はちゃんと二万ヒット用のドリ夢は考えていました。
なので、次期書きます。
もう少しだけお待ち頂けると幸いです。


ちなみに、さかなはこのお花が大好きです。
綺麗で、赤で。
死をよぶ花。
そんないわれをもつお花がとても好きで。
だから今度ちゃんとお話に出させたいと思っております、うふふ。






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