「英二、今年のクリスマスプレゼント何が良い?」
今日も無事部活が終了して、制服に着替えていた時に不二は言った。
英二は顔をタオルでふいていたのを止めると不二に目を向ける。
「えっ、にゃににゃに、なんかくれんの?」
なんだか嬉しくて、英二はワクワクしながら不二に近づく。
不二は英二に視線を合わせるとにっこり笑った。
「記念日だからね。」
「うわぃ!!」
こんなベタ甘な光景はいつのも事なので、誰も何も気にしない。
ただ、いつもなんとなく嫌な方向に行ってしまうので聞き耳を立てつつも無視を決め込む。
最も、大石は例外だが。
「俺もなにか上げなきゃ!」
「ふふ、そんな事は気にしなくて良いの。」
「なんで?」
「だって英二はプレゼント用意しなくても良いから。」
「?」
不二の言ってる事は難しい。
含みのある笑い方で笑うから何を言いたいのか分からない。
「ふぅん…。」
「それで?なにか欲しいものある?」
「おっきいクリスマスツリー!!!」
なにぃぃぃぃぃ―――――!!!(その他全員)
不二以外、その場にいた皆がうなだれた。
明らかに無理だろうな感じで。
(菊丸…ツリーは普通に考えて無理だろう by手塚)
(先輩ってもしやサンタ信じてる派か…? by桃)
(英二…お前ってやつぁ…(萌え悶え) by大石)
(流石英二先輩。万年ピーターパン。 by越前)
(ふしゅぅぅぅぅ…ιι by海堂)
(子猫ちゃんベリーキュー――ト!!! by河村)
(さて、不二…どうする…? by乾)
不二はしばし止まる。
そしてきらきら輝く瞳の英二を見据える。
そうしてにっこり。
「なぁんだ。そんなもので良いの?」
ぬぁに―――――!!!???
おおっと、これは予想外の反応だ。
「ふむ、良いデータ―が取れたぞ。」
「先輩…そんな事言ってる場合じゃないっす(ふしゅぅぅ)」
「というか…不二の家はそんなに金持ちなのか?(大石)」
「ありえない話じゃないと思いますけどね(桃)」
「・・・・・・・・(もうこんな部活嫌だ…)」
「部長、今辞めたいって思ったでしょ?」
ぎゅう。と、リョ―マは手塚の腰に手を回して見上げた。
はっ、と、手塚が下を見る。
「越前っ、人の心を読むのは犯罪だぞ!!!」
「そんな法律ないっすよ。」
「校庭走ってこい!!!」
「部長の考えうはばればれなんですって。しかも部活終わったから効果なしだしさ。」
「むぅ…」
「クス。かーわい…。」
「怒・・・・・・・・」
明らかに背の高さと正反対に優性劣勢が分かれている。
まさにこの闘いはマングースと虎と言えよう。
リョ―マは未だ怒りマークを飛ばしている手塚を尻目に不二と英二を見た。そうして口を開く。
「てか、不二先輩は悪の大魔王なんだから裏で沢山寄付金がくるじゃないっすか。ツリーなんて朝飯なんじゃないの?」
そうかっ・・…!!それは盲点だった!!!
ここで信じる辺り、部員である。
向こうでわいわい騒いでいるその他(酷い扱い)もろもろを凄い喜んでいる英二を抱き締めて、ちろりと不二は見た。
その刹那
ぴしゃぁぁぁん!!!!!
何かが起きた。
ただならぬ空気を感じてその他もろもろ達は青ざめる。
しかしそこは生意気ルーキー。
越前だけはひるまない。
「どうやら帰った方がよさそうっすね。部長、帰りましょ?」
「う…。」
「固まってる場合じゃないじゃないっすか。」
「・・・・・・・・」
「部長?」
なかなか動かない手塚に痺れを切らしたのか、王子は見上げながら眉をひそめる。
「き・…」
「き?」
「残される菊丸が不憫だ…(てか心配)」
「(ムカ)」
部長ぉぉぉぉぉ・・・・・・・!!!
ここで手塚の下部が一気に上がり、信者が増えたのはいうまでもない。
流石手塚、凄いぞ手塚!!
最も、付け加えれば手塚は小動物が好きである(にやり)
反対に、王子は不機嫌そのもの。
そりゃぁ自分よりも気にかける存在にはむかっぱらが立つだろう。
「はいはい、部長はやさしいっスね。でも帰るよ!!」
「なっ、越前!?俺の話を聞いてたのか??」
「聞いてたっスよ。」
怒りマークをつけながらずるずると手塚を引っ張ってゆく。
「後でお仕置きっっ・…(怒)」
「っっっ・・・・・!!」
俺が何をしたんだぁぁぁぁ…・・・・・・!!!
そおんな手塚の断末魔が響く(哀れ、手塚…)
残された部員達は
「それじゃ、俺らも帰ろうか。」
触らぬ神に祟りなし。これ鉄則。
「・・・・・・ん?」
英二は気付いた。何気なく周りを見渡すと部室には不二と英二しか残っていない事に。
「不二…。」
「なに?英二(にっこり)」
「皆帰っちゃったみたい?」
「そうだねvv」
「(なんで嬉しそうなの…)じゃ、俺らも帰ろうっか。」
結構あっさりなお菊様である。
テニスバックを持って今にも部室から出そうな英二の詰襟を、不二は後ろから、掴んだ。
「ちょっと待った。」
「うげっ!」
首を締められて英二は立ち止まる。
「な・・…にゃに〜〜〜〜?汗。」
「英二…クリスマスツリー欲しいんでしょ?」
「え、うん。でもあれは冗談で、高そうだから…良いよ。」
「それは別に良いんだけど。」
「(にゃにそれっ!)」
ガァン!!!
と、少しショッキングな事実。
どうやら不二にして見ればツリーの一個ぐらいどうって事ないらしい。
しかしすぐに思いなおす。
「(いや、待て…ツリーって言ってもサイズ沢山あるじゃん。)」
きっと手のりサイズなんだな。
ふふっ、不二ったら可愛いんだから…vv
とか考えてしまうがそれは甘い。非常に、だ。
「特大サイズのツリーを買ってきてあげるねvv(にっこり)」
ぇえー――――――――!!!!!!
英二、二度目のショック。
やっぱり不二にしてみればツリーの一つぐらいどうって事なかったらしい。
「やっ、でも…高いから…良いよ?」
「ふふ、そんな事気にしてるの?可愛いな――英二は。」
にっこり嬉しそうに笑って跳ねっ毛のある髪の毛をくしゃくしゃする。
茶色く彩られた瞳が英二を見上げた。
「それ相応の物貰うからね…(クス)」
「うにゃっっ!!??」
おおっと、菊様大ピーンチ。
やはりそこは魔王不二の事、抜け目無しである。
しかしやはりそこは万年ピーターパン菊ちゃん。まだ気付かない。
マングースの牙はすぐそこに迫ってきている。
「・・・・・・・・でも、俺…不二みたいにお金もってないもん・・・。」
シュン。と、猫耳が垂れる。
俯きかげんの瞳が睫毛に隠される。
不二は一瞬呆けた様に英二を見た後、すぐに笑った。
「アハハ、英二は本当に期待を裏切らないよね。」
「?どういう事?」
「別に僕は物が欲しいわけじゃないよ。でもそんな英二が好き。」
カァァァァァァァ・・…
「好き」と、言われてみるみるうちに顔が赤くなる。
不二は頬を赤く染めて口を真一文字に結ぶ英二を見上げて目を細めた。
「僕が言ってるのは、側にいて?って、事だよ。」
「えーー、それだけで良いの?」
「勿論、でもその日はずっと日付変るまで一緒だよ?」
「ケーキを買って?」
「そう。」
コクリと不二が頷くと、英二の顔にみるみるうちに明るさを取り戻した。「そっかー」と、ちょっと照れながらも笑う。
不二はそんな英二を見て笑みを深めた。
英二は微笑む不二を見て、少し考えた後耳もとに唇を寄せた。
「あのね…俺、不二がそやって笑う時の顔が一番好き。」
一瞬止まって、そんな事言われると思ってもいなかったから予想が立たなくて。不二は言葉を失った。
茶色の瞳が少し見開かれる。
「・・…・・・・・・そう。」
クスリと笑う。
だってこうやって笑う時は英二が喜んでる時だから。
不二も英二が喜んでるときに見せてる笑顔が一番好きだと思ったから。
だから、何かが「繋がってる」気がして嬉しかった。
(ま、悶えてる時の英二もいっそう良いけどね…フフ)
不二、戻ってきて下さい。
聖夜の夜、それぞれがどんな風に過ごすのか。
果たして雪は降るのだろうか。
それぞれの想いと願いを込めて、深く溶けこむような空へと飛ばした。
「勿論、お礼は貰うけどねvv(身体で)」
「えぇっっ!!!???」
こんなクリスマスもありである。
― 終わり ―
小説バージョンの不二菊クリスマス
ぽちぽちとぎれてるのは続き物にしてたからだと思ったり。
やっぱり最後は同じですね。不二…
たまには菊ちゃんにとってもハッピーエンドにしても良いかな。と、思ったり。
ごめんね、今度はちゃんと終わらせるから…
良く考えたらこんな終わり方ばっかりじゃん、自分。
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