― もしも願いが一つだけ ―



「ふ〜〜〜じ〜〜〜。」

眩しいばかりの青空よりも眩しい笑顔の英二が不二を呼びかけた。
呼び声にくるりと振り返ると、それはまた青空よりも爽やかな笑顔の不二がいた。

今日は良く晴れてる。最高のテニス日和だ。

「どうしたの?」

「あのねっ、あのねっ、聞いて〜〜〜vv」

「うん、良いよ。」

にこにこにこ。ふふ、英二可愛いなぁ。と、よこしまな事を考えつつもそれを顔には出さない。

「俺さぁ、昨日夢見たんだよ。」

「夢?」

「そ!そんでね、夢の中の神様は一つだけ願いをかなえてくれるって言ったんだよ?」

「か・・・みさま?」

「そう!」

すっごく楽しそうに笑う英二。
少し戸惑いながら頷く不二。
いくら不二とも言えども、英二の世界には時々ついていけないところがある。

けれど、そこは魔王。全然ひるまない。

「そう、良かったね。それで?」

「うん。不二だったら何を願う?」

「僕?」

「ん(こっくり)」

「そうだねぇ・・・・・・・・・・・・・・・・・でもなんで?」

「え―――――――。」

ちょっと照れくさそうに笑う英二を見て、不二は首をかしげた。


「俺ね。」

「うん。」

「一番大好きな人の願いを叶えてくださいって、言ったんだよ?」

思わず言われて目が開いた。
いつもは細めの瞳が大きく見開かれる。
こんな事はたまにしかなく。しかもいつもそれをするのは   菊丸英二、だ。


「(また罪作りな事を・・・)」

内心嬉しさに顔を歪めつつも、そんな事は少しも見せない。


「そう、ありがとう。」

「えっへへ。」

「(ヤバイ、可愛すぎ・・・・・・・・・・・・・・・食べちゃおっかな。)」

コラ。まだ部活前ですよ。




「それで、それで?不二は何を願う?」

「んー―――――――?」

「何?何?」

わくわくしながら自分を見る英二を横目でちらりとみて、不二は口を吊り上げ、笑った。




「とりあえず、不二王国を作る。」





「・・・・・・・・・・・・はにゃ?」

言われた事が一瞬理解出来ない。何?不二王国?

「だぁかぁらぁ。不二王国だってば。」

「不二王様になりたいの?」

「まぁね。」

ちょっと意外な答えをもらって、うにゅーー?と、首をかしげた。

(ふふ、英二可愛い・・・vv)

萌えるなよ、不二。




「・・・・・・なんで・・・・・・?」

ちょっと嫌な予感がしつつも、目をつむり恐る恐る聞いてみたりする。
嗚呼、人間の好奇心は自虐行為の始まりなのか。


「なんでって、そりゃ自分中心に世界が廻ったほうが得だからに決まってるよ。」

「・・・・・・・・・・・もうすでに不二が中心に廻ってるくせに(ぼそ)」

「なんか言った?」

「いえ、なんでも。で、なにすんのさ。」

「だから色々。」

「色々って?」

「そうだね。とりあえず英二は僕の第一婦人にしてあげる。」

「ええ!?(ヤだ!!)」

「ちなみに手塚は第二、だよ。」

「それは聞き捨てならないっスね。」

二人が声のしたほうに視線を向けると、いつのまにそこにいたのかリョ―マが立っていた。

「なんだ、いたの。越前。」

「いましたよ。てかなんすか、第二って。」

「越前は第三かな・・・。クソ生意気な子を手なずけるってわくわくするよね。」

明らかに殺気を出してる不二に、思わず逃げ出したくなる衝動に英二は駆られる。
ほら、動物だから。
その点、王子は全然平気だ。

「遠慮しときます。あんたの妻なんざごめんだね。」

「それは残念。」

「てゆーかうちの嫁に手を出さないで下さい。」

「嫁?それって手塚が言ったの?」

「不二先輩だって英二先輩の了解を取ったわけじゃないじゃん。ね?英二先輩。」

「(え゛ぇっっ。俺に話を振られたら困る!!汗)」

「(英二・・・まさか"NO"なんて答えたら許さないよ?)」

「(うわぁぁぁ・・・不二が見てるぅ。おちびの馬鹿!!!)」


困った猫は部長に助けを求めることにした。
うん。なんていったって部長だし。       とか、思うのは甘い。

「手塚っ!」

「なんだ菊丸。」

「止めてよ、あの二人。恐いよ〜〜〜〜〜。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・菊丸。」

「う?」

「俺はな、勉強したんだ。」

「え、何を?てかなんでも良いから止めて。」

「いちいち突っ込むから後で痛い目にあう。だったら最初から関わらなければいい。」

「ええ!?(にゃにそれ、職務放棄ですか!?)」

「ふぅん、手塚も流石に学習したわけか。」

「その点不二先輩のは学習しないですよね。」

「良いんだよ。そこが可愛いんだから。」

「そっスね。」

とてとてとて。と、王子は歩いて行く。向かう先は英二か手塚か。
未だわんわんと口論してる二人の間にリョ―マは立つ。

「あ゛――――――!!おちび!!もとわと言えばおちびの・・・・・っっ!!」

せいだぞ!とか言いたかったのだろうが言葉は打ち切られる。


ばふっ。


そんな効果音と共にリョ―マが英二の腰に手を回した。

「んにゃ!?」

口元には、悠然の笑み。

「(・・・・・・・・っっ・・・・・・越前っ・・・・・・怒)」

「(ぎゃ――――――――!!不二が見てる!!!)」

「先輩俺の国に来なよ。だって先輩俺のペットだもんね。」

「は、はぁ?にゃにいってんのさ!!」

「そうだよ、何言ってるのさ。」

調子こくのもいいかげんにしろよ、クソ餓鬼。

とか言う超殺気立った瞳でリョ―マを見下ろした。
それでも口元の笑みは消えない王子。

「不二先輩。ここは和解といきましょーよ。」

「(なんでもいいから英二から離れろ) どういう心情の変化?」

「だってどうせ喧嘩して戦争起こすぐらいだったら、はじめから領地を半分にしたほうが良くないっすか?
その代わり、隣国のペットや恋人にはちょっかい出してもいい、と。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・良いね。」

「「ぇえー――――――――!!!(もっとヤだ!!!)」」

「ちょっ、にゃに了解してんの?」

「そうだ!越前!!お前は俺が不二に何されても良いのか!?」

「そこまでいくんだったら速攻で殺します。」

「僕も。英二をペットとして扱う分なら問題ないけどね。」

「じゃ、同盟締結ですね。」

「だね。」

「Noooooooooooooooooooooooo!!!」



その時英二は誓った。
もしアラジンとかのランプを見つけても、絶対絶対不二とおちびには触らせるもんかと。
大好きな人の願いを叶える前に、自分の身の安全確保が先だと。







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こんなもんだよ、不二とリョ―マが考えてる事なんざ。
手塚天然で可愛い。菊ちゃんは天然でしかも学習能力ないところがますます可愛い。


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