― 狼さんと彼氏の秘密 (第1話) ―



ピロピロリ・・・・

       ピロピロリ・・・・・・・・・・・


メールの着信音が俺の起床を促す。
目を覚まして身体を起こすとメールを確認する。
送信者は、
“公園で待ってるからとりあえず来て。“
と言う短い文が打ちこまれていた。
こんな風に突然な呼び出しははじめてでないので眠いたい目をこすりこすり、それでも俺は玄関へと向かう。
折角の彼女の誘いだし。








それが、始まりだった。




















公園へ向かうと日曜なのにもかかわらずそこには誰もいなくて妙に静かだった。
呼び出した当の本人はいない。
「?」
疑疑問符を浮かべながら公園の中に足を踏み入れるがやはり姿は見えなくて、変りに彼女と同じぐらいの長さの髪を一つに結んでいる長身の男が立っていた。




俯いていた彼は顔をあげる。そして俺と視線が合った。
その時、



その時俺の中に流れてきた感情は不思議なもので、初めて会ったのにそんな気がしなかった。
女顔という訳ではないのに中世的な雰囲気を漂わせているその「良い男」に、俺はドキリとした。
端整な顔立ちの、まっすぐな瞳は俺を見つめて。彼は口を開いた。

「遅いよ、英二。」







・・・・・・・・・へ・・・・・・・?なんでこの人が俺の名前を知ってるんだ?






「・・・・・・・?」
見ず知らずの男に名前を呼ばれて固まっている俺を見てクスクスと笑いながら彼は近づく。
そんな笑い方は、とても・・・・・・・俺の彼女の行動と似ていて重なった。
だから、問う。
「えぇと、のお兄さん?」
「似てる?」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・なんか重なる・・・・かも。」
「ソウ、英二はに兄弟いるって話、聞いた事あんの?」
「え・・・・・いや、無いけど。」
「じゃぁ、違うじゃん。」
にこにこと、彼は笑う。俺はそんな彼を見て、むーー・・・と、考えた。



そうだよなぁ。は一人っ子だし。
でもこの人知ってるみたいだし。そんじゃ従兄弟かなぁ。
「従兄弟、とか?」
「ブブー―。はずれ。」
楽しげに笑う。その笑顔は本当にと似ていて。
しかも相手は男だからまた違った感じがして。
胸が高鳴るのはどうかと、そう思った。














「アタシよ、アタシvv」
その人はにっこりと笑う。俺は困る。ますます、だ。
・・・・・・・・・・・・・・・・・こ・・・・・・・・・・・・・・こんなかっこいい人がオカマなのかぁ!?
とか思いつつ、俺は恐る恐る見上げる。
「俺、オカマの知り合いいないもんっ。」
「ひどいな。自分の彼女を忘れた?」


その言葉に、俺はずざっ!と後ろへ下がる。
「なお悪いよ!!!!悪いけど、俺はソッチの趣味無いから!!!!!!」
「うーーん。予想通りの反応vv」
全然気にしていない感じで彼は俺との距離を縮める。
俺は背中に冷たい汗を感じてじりじりと距離を広げる。
彼の浮かべる微笑は変らない。その瞳の色も、変りはなさない。








「英二、本当に分からないの?」
「だからっ・・・・・・・!」
「私は、「彼女」と、ソウ言ったんだよ?」









そう言って、彼は首を傾げる。確かに、確かにそう言われてみれば彼はと似ている。


















でも、は女だ。




















「何言ってるかわかんないけど、自分男じゃん。」
「そーねー。あのクソムカツク乾ロボのおかげでね。」
にっこぉり。と、恐ろしいまでの笑顔を彼は浮かべた。
「乾?乾の事知ってんの?」
「だぁかぁらぁ。私は本人だって言ってんでしょ?
乾とは同じクラスなんだから知ってて当然じゃん。」
呆れた。とでも言う風に目を細める名も知れない彼。
そうは言われても、この非現実的な出来事を簡単に受け入れるはずがない。






そんな俺の表情を読み取ったのか、先程の態度とはうって変って彼は、ふぅ。と、ため息をついた。
伏せた長い睫毛で瞳に影が落ちる。
「………そっか。やっぱり駄目か。」
その切ない表情には見覚えがある。
いつも元気一杯のが時折見せる顔。いつも姉御肌を漂わせているからそんな時俺自身までも切なくなってしまうのだ。
そうして、抱き締めずにいられなくなる。
抱き締めた後には決まって「なぁに、変なの。」と、言われる事がオチだけど。







なんだかとても申し訳ない感情に襲われて俺は口を開く。
「……………信じる、よ。」
「?」
「信じるよ。なんでしょ?」
言ったら、彼は一瞬とても驚いたような顔をして、そしてとても嬉しそうに笑った。
「どうもありがとう。」








そんな笑顔を見て俺は思う。だから、今度は「」に向かって話し始めた。
「やっぱりなんだ。」
「うん?だからさっきからそう言ってるじゃん。」
「いや、そうなんだけど普通信じられなくない?」
「そだね。だから別に良いやって思ってた。でも英二は信じてくれたし。」
そう言ってはふふふと笑う。



とりあえず、今自分の目の前にいるのはだとは……・まだちょっと信じられないけど、信じることにして。どうしてこうなってしまったのかが疑問だった。
「んで、どうしてこんな事になったの?」






尋ねたら、はまた先程の切ないような困ったような、そんな表情で微笑を浮かべた。





















++++++++++++++

家へ戻る道中ではポツリポツリと成り行きを話し始めた。
「あのね、昨日乾に新作のクッキー作ったから食べてみろって言われてさ。
私も暇だったから食べてみたわけよ。んでも、それが間違いだったの。」
「乾クッキー作ったりすんの?」
「さぁ。誰かさんへのプレゼントじゃない?海堂とか。」
「え、なんで…?」
「朝起きたら性転換してたからよ。」
「…………………………・・。」
「私は体の良い実験体にされたって訳ね。」
いともあっさりと言うに対して怒りが沸いてくる。



あんの乾めぇ〜〜〜〜〜人の彼女実験体にしやがってぇ。怒。



「そんで?乾とは連絡ついたの?」
「うん。ねぇ、なんで怒ってるの?」
「怒りたくもなるよっ!」
ぷぅ。と頬を膨らませたら隣で歩いているはくすり。と笑った。
「何?」
「んーー?だって英二、自分の事のように怒るから。」
くすくすと楽しそうに、嬉しそうにが笑うから、俺は頬が赤くなる。
「だって……………・・ムカツクじゃん。人の彼女実験体にしてさ。」
「じゃァ、アポ有りなら良かったのかな?」
「駄目。聞いてたら止めてたよ。」
「そこが英二の良い所だよね――――。」
さも嬉しそうに笑う。
笑った顔を見て、やはり彼はなのだと、そう思う。
そのしぐさの一つ一つが、たとえ性別は変ってしまっても長い年月の中で創り上げられた物だから。
ひとつひとつが合わさってを創っているのだから。

だから、変らないのかもしれない。











ふと、自分達に降り注がれる沢山の視線を感じた。
よく見ると、俺達の横を通りすぎる女の子達は振り返って頬を染める。
勿論、その視線はへと。


そりゃそうだ。こんなに良い男な訳だし。


妙に納得してしまった。
実際、きりりとしまった横顔に、優しげななかにも男らしさを残す端整な顔立ち。
一つに結ばれてあらわになっている首筋は色っぽい。





って……・・俺ってば何男にときめいてるんだ!?





いくら中身はだとは言っても見かけは今は男。
ときめいて良いはずがない。
たとえ

たとえそれが自分好みの男だったとしても、だ。







変な感覚に捕らわれてしまった俺は雑念を振り払うように頭を振る。
そしたら、不意にが話しかけてきた。
「ね、英二。私良い男かな?」
「え゛……なんで?」
「いや、視線が気になるから。これは英二に向けられたもの?」
たぶん八割方がへ向かれたものだとは思ったけれどそんな事を言ったらきっと嫌な方向(今までの経験上)いくと思ったのであえて嘘をついた。
「二人に、だと思う。」
「ふーーん…・。」
なんとも意味ありげな「ふーーん。」を残しては視線を動かした。
そうして好みの女の子を見つけたのか、にっこりと笑って手を振った。
きゃぁっ。と、嬉々とした女の子達の声が上がる。頬は桃色。
(あぁ……男なのに…・・ι)
「可愛いvv」
(あぁ・・…しかもこっちも……ι)




、自分女だって分かってる?」
げっそりとして、未だほくほく顔の彼女に質問した。
「勿論。でも折角男になれたんだしこんな幸せも味わらせてよ。」
手を振っては嬉しそうに答える。


(………幸せって…。汗。がそっちの方向に行ったらどうしよう…)


いや、こういうのは勿論個人の趣味な訳で。
俺がいちいち口出す事無いとは思うんだけど、でもやっぱりは俺の彼女だし。
いくらなんでも女に負けるのは嫌だなぁ。

とか、思って横顔を見ていたら視線が俺へと向けられた。
そしては、ふっ……と笑う。
「安心しなよ、女の子には走らないってば。」
自分の心を見透かされたようでどきりとした。
「・………なんで分かったの?」
「分かるよ。英二はすぐに顔に出るからね。」
にこにことは笑う。でも、俺は更に聞きたくなった。
「・……………ってさ、女の子好きじゃん。」
「うん。好きvv」
あっさり肯定したに対して俺はがっくりと肩を落とす。
(んなはっきりと・………ιι)
少々頭が痛くなりつつも俺は勇気を振りしぼって尋ねた。
「恋愛感情とは違うの?それって。ていうか恋愛感情に移らないの?」
「ないね。」
今度はあっさり否定。しかも即答だったので予想できずに俺は躊躇してしまった。
そしたら魅惑ありげな瞳が楽しそうに俺をちらりと見遣る。
「どうして?」
「………だって、女の子好きだから、さ。」
「女の子って言うか可愛いものが好きなの。英二だって十分可愛いよ?」
「だからさぁ、男が言われたって嬉しくない。」
「あぁ、でもそれは私が勝手に思ってることだから気にしないで良いよ?」
(…………・・勝手に思われてるほうが性質悪い気がする……・。)
「そういう感情とはまた別。だって私レズじゃないもん。」
「でもすれすれじゃん。」
「あー―、ひっど。」
そうは言ってもの口元には微笑。
本当に、何処までが本当で何処までが冗談なのか分かりはしない。









そんなことを話していたら家に着いた。
何度も来ているので躊躇する事も無くは俺の家の敷居をまたぐ。
そこで俺はまたホッとするんだ。
だって、普通一度も来てなかったら少しは遠慮するはずだから。

と、こんな事を思ってしまうのはやはりまだ何処かで疑っているのかもしれない。


「家の人は?」
「皆お出かけ中。」
「めっずらし。それじゃぁ今は一人で留守番だったの?」
「まぁね。」





は「ふーーん。」とか漏らしながら二階への階段を上って俺の部屋へと入った。
俺はそんなの一部始終を見る。
そしたらくるりとは振り返って俺を見た。意志の強い瞳で。
「安心した?」
「?」
「ためらわずに、迷わずに、英二の部屋にたどり着いたから。」
にっ。と、見透かしたようには笑う。
「べっ…・別に疑ってたわけじゃないよ。」
「良いよ。私だったら信じられないし。」
言うと、はポスリとベットの上に腰掛けた。そうは言ってもその表情は寂しげ。







そんな・・……顔。しないでよ。







たまらずに、俺はへと手を伸ばす。
前髪の毛っ先に指の先が触れる。は視線を上げる。
瞳が、交わる。

その身体を、俺は抱き締めた。
「……・英二?」
今では女の子特有の柔らかな感触はない。
男ならでわのしっかりとした骨の感触のみが俺の腕へと伝わる。
「なぁに、どうしたの?」
少し不安げには聞いた。俺はその言葉を聞いてプッと、吹き出してしまった。
「な、何?」
「いや、やっぱりなんだなって思って。気付いてる?
はいつも俺が突然抱き締めると同じ台詞言う事。」
「ぇ・………そうだった・・…カナ?」
「そうだよ。」
なんだかうれしくて俺は笑った。はまだ「そうかなぁ。」とか言ってぽりぽりと首筋を掻いた。









ちゃらりらりー―――チャラ――――♪

      ランラララン……………・♪









不意にの携帯が鳴って、は手に取る。
そして「乾からだ。」と、呟くと通話のボタンを押す。



……………・ねぇ…・なんでも良いけどどうして着信音が「太陽に吠えろ」なの…・?



なんとも女の子ではありえない着信音を耳にしてしまって落ちこんでいてもと電話の向こうの乾との会話は続けられる。


「はぁ!!!!???」


思いっきり不機嫌をあらわにした声で俺はびくりと体を震わせてを見た。
案の定、その額にはしわが一つ増えている。
「ちょぉっと…・それどう言う事よ。……………え、今英二の家にいるけどさぁ…………
………………    あのね、それ無責任だから。
はぁ?誰でも良いって、んなのした事無いんだから困るじゃん。

………………………・うん…………・うん……………・。

………・あーー、もう。分かったよ!!!」

ブチッ。
「くっそっ。」
苦虫を噛み潰したように唸っては電源を切った。
その横顔は明かに恐ろしいまでの黒いオーラが出ていて、とても声がかけられない。
それでも、電話の内容が気になるから話しかけるけどさ。



「乾、なんて?」
「戻れる方法、分かったって。」
「え?マジ?良かったじゃん。」
「良くないよ、全然!!!」
声をが荒げたからその方法が良くないものだと俺は読み取る。
「・…………………………方法に問題あり?」
の表情は厳しい。
視線は携帯から外さない。

















「セックス。」
少し投げやりに、今は低くてハスキーな声が答える。








予想外の言葉に俺は言葉を失った。
「…………・セックスで得られる女の姿の時とは違う特別の感情と快感。感覚。
それら全てが私を女に戻す方法。」




目の前が、真っ暗になりそうだった。
だって、今のは男で。
セックスってっても、まさか俺とする訳にはいかないし。そうすると、必然的に……












その後は、考えたくなかった。どうしても。

























― 狼さんと彼の秘密 (第2話) ―



突然告げられた事実に身体が固まった。
けれど当の本人はあっさりとしたもの。先ほどは怒っていたのにもかかわらず今は落ちついていて。
そしてすっくと立ちあがった。視線の向こうにあるのは、ドア。


一歩を踏み出す足。





俺の視界から消えてしまうのが嫌で。
















気がついていたら俺はの腕をつかんでいた。




「・・・・・・英二?」
「何処へ行くの?」
尋ねていた。勝手に口が動いていた。
「どこって・・・・・・決まってるじゃない。明日学校だし。戻らないわけにはいかないでしょ?」
「だから他の女と寝るの?」
「だって・・・・・・仕方ないじゃん。」




『仕方ない』
その一言で済ませてしまうの?
はそれでも平気なの?
そう、尋ねたかった。



でも、俺の口はそんな言葉は乗せずに別の事を言う。











まっすぐその瞳を見つめる。今は少し困ったような色を宿すその瞳を、捕らえる。


「・・・・・・・・・・・・・・しよ。」




言ったら、の身体が硬直するのが分かった。
綺麗な瞳が大きく見開かれて俺の事を凝視する。


「む、無理……だよ。」
「なんで?」
「なんでって・・・・・・・・・・ιι男同士じゃない。」
「世の中にはそういう人達もいるよ?」


ただ、嫌だった。
その瞳が、自分の事を見ないのが。
その指が、誰かの肌をなぞるのが。
その声が、しらない名前を・・・・・・・・・呼ぶのが。



「それは特別でしょ。私には・・・・・・。」
「できないの?」
言われて、うっ・・・と、言葉を詰まらせる。
躊躇いがちに身体を後ろへ引く。
「どうしたの。なんか英二、恐いよ。」
「恐い?いつもの俺じゃないから?」
「・・・・・・・なんだか、別人みたい。」










本当に、そうかもしれない。
でも苛立ちは募るばかり。
胸を鷲づかみされたような感覚。ざわざわする。止められない。




「だって、は平気なの?他の女の人抱くんだよ!?出来るの?」
「だから慣れてる人に頼もっかなって。今の私は男だと思って、別人だと思って考えようかなって。」
「だから、それで良いの?」
自然と口調が荒くなる。


「仕方ない・・・・・・・・・・から。」


は困った時目を見ない。
押されてしまって流されてしまいそうになるからだと言っていた。
特に俺は強い瞳を持ってるから直視出来ないと、以前そんな事を話してくれた。

だから俺は両手での頬を包み込む。
目をそらせないように覗き込む。
「逃げないでよ。俺は絶対嫌だからねっ。」
「・…んな事言ったって・・・・さ、英二。」
どうにもまだ乗り気でないを見て、俺はむーーっ・・・・・・と思う。
そして躊躇うの腕を思いきり引いた。
「わっ!!!」
男の身体のは女のときとは違って体重も重かったけれど普段俺はテニスで鍛えてるからどうって事なかった。
の身体は俺の横を通りすぎてどさりとベットの上へと倒れる。
「いったぁ・・・なにすんの!!!」
怒るを見据えて、俺はベットに手をつく。きしり。と、スプリントが鳴って軋む音がする。
途端に、びくりとの身体は震えた。

「え・・・・・英二?」
無理にでも笑顔を作る
引きつってるってば、顔が。

じりじりと間を詰めて逃げられないように両腕で挟みこんだ。






「要は、がやる気になれば良いんだよね。」

淡い笑顔を浮かべて俺は笑う。けれど心の中に渦巻くのは、暗い。底知れない闇。



「は・・・・?・・・・・・・・・・・・・って・・えぇ!!!???何処さわってんの!!!!」
うぎゃぁっ!と、叫びながら俺の手を押さえる。
それでも俺は構わずにのはいているズボンを脱がした。
まだ誰の手でも、勿論自身にも汚されていないモノが外気にさらされる。
綺麗でピンク色のソレを、俺が触れるとの身体がビクンッと跳ねた。
「なっ・・・・・・・やっっっ!!!!」
「どうして?がいつもしてくれる事なのに。」
口元に微笑を浮かべて俺は少しずつ勃起し始めているの分身をこすった。
「っ!」
手で刺激するだけでびくびくと身体が素直に反応して、やっぱりは感度が良いと、そう思った。
次第に硬くなっていくソレに俺は唇を近づける。

「英・・・・・・・二っっ!!!!」
察してか、が制止の声をかける。でも俺は聞かない。
聞くはずがない。
ふっ・・・・・・と、口元を笑みの形でかたどると自身を含んだ。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・っっっ!!!!」
舌で刺激する。甘い蜜がもれる。
の掴む手が、震えて、力を失う。

その過程が、なんとも快感だった。
同性にこういうことを教えるのが快感だとは気付かなかった。
否、だからかもしれない。

男の目から見ても魅力的な肢体。上等のピスクのような白い肌。
紅を引いたような赤い唇。
それら全てが俺を刺激させた。




「・・・・・・・・・・ァ・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
「気持ち良いの?」
甘い声を一声出したに尋ねて、先端を軽くかんだ。
「はっ・・・・・・・・やっ・・・・・・・・いや・・・・。」
「なんで?嫌なはずが無いよ。それは男の俺だから分かってる。」
「だ・・・・って・・・・・・自分じゃないの。」



「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・おかしくなりそうっっっ!!!!!」




荒い息がはかれて、俺は微笑した。
小さな叫びと共に出された手のひらの白い液体。
顔についてしまったそれを舐め取る。続いて手のひらも綺麗に舐める。
息づかいを整えてつつは俺の行動を見ていた。頬は桃色。
「・・・やっぱり初めてだからかな?早かった。」
「っ!!なんでそんな事言うかなぁ!?」
「だって本当の事だし。剥いてただけなんだけどね。」
「ぎゃぁっっ!!やめてよっ!!!」
首まで赤く染めて耳をふさぐ。
普段はが上に立っているのになんだかその仕草が可愛くて、俺は手を伸ばすとふさいでいる手を外す。目を見て、にっこりと笑う。
「んで、どうなの?する気になった?」
「しない。」
ちょっとその言葉は意外。
だって伝わってくる温度はやっぱり熱くて。きっとこれ以上の快感を身体は求めているはずなのに。
それなのに“しない”と、確かには言った。

「なんでぇ?」
納得がどうしてもいかなくて俺はを睨む。
けれども負けずと睨み返した。



「言ったでしょ?男同士は嫌なの。」
「それってどっちが受けするとかそう言う事?」
「重要じゃんっ。私嫌だもん、痛いの。」















「別に良いよ、俺がするから。」







この言葉には流石に意外だった様で。
言葉を失って瞳は俺の事を凝視した。
「英二が・・・・・・・受けんの?」
「うん。誘ったのは俺だし、別に良いけど?」

がそんなに嫌悪感を持ってるなら受ける事は構いはしない。
相手はだし。
何より、訪れる痛みよりもが他の人とする事が嫌だった。




(・・・・・・・・・・・・っっ・・・・・・・英二が受け??
っていうか・・・・おいしすぎっ・・・なにこの展開・・じゃなくてぇ。
でもやっぱり英二も辛いわけでしょ?だったら別に女相手でも構わないし。どっちかが辛い思いするなら・・・・・・・・んでも英二きっと可愛いだろうなぁ・・・・・・・・・・・・・・じゃなくてぇ!!!!!)


なにやらすごく葛藤してるを見て、ふっ・・・・と息をつく。
「それで?してくれるの?俺と。」
その言葉で現実に戻ってきたは俺の肩をがしりと掴んだ。
「良いの!?めちゃめちゃ魅力的な誘いだけど、痛いよ!?」
「う、うん・・・・・・・・・・・・。」
すこし躊躇って言ったら、はがっくりと肩を落としてため息をついた。
「だって!!!後ろ使った友達言ってたもん!!痛いって!!!!それに私の男友達なんて痛すぎて泣いたっていってたよ!!!???」
どうしてそんな友達を持ってるんだ・・・・・ていうかどういう話をしてるのさ。
と、疑問が沸いたけどあえてそこには触れない。
「だから、俺的にはが他の人とする事のほうがずっと嫌だから。
でも俺がいいだしっぺだから、良いよ。」
「だめぇ!!!!自分を大切にしてよ!!!!!」
なんだか良く分からない事をは言う。
魅力的な誘いだと言ったくせに自分の身体を大切に?


もう・・・・・・・・・・・・・・心が読めないなぁ。












突然、静かになって口を噤む。
そうして俺の瞳を見据えた。
「オーケィ、良いよ。しよ?」
やっと覚悟を決めたように、言った。
その言葉を聞いて俺はやっと安堵する。だから笑った。




















++++++++++


ゆっくりとの着ているシャツのボタンを外していく。
そうして一言。
「胸が無い。」
「当然でしょ。」
呆れた様には言う。それでもが俺とする事を決めてくれた事に嬉しさを感じて胸の飾りに舌を這わせた。ぴく・・・と体が硬直する。
首筋、指の先、太股。
感じる場所は男の場所でも変わりなくて、やりやすいといえばやりやすかった。
問題は、俺のほう。果たして欲望にたぎったを受け切れるかどうかと言う不安があった。


「ふぅっ・・・・・・・・・・・・は・・・・・・ぁ・・。」
それでも、目じりに涙を浮かべて頬を赤く染め上げるを見るとそれでも良いかもと思ってしまう。
絶対に、絶対に他の人にこんな所は見せられない。




「良かったね、他の人としなくて。」
身体を起こしたの首筋に舌を這わせて俺は言う。
「な・・・・・・んで・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」
「だって身体は男でも思いっきり女の子だよ?。」
にっ・・・・と目を細めると、かぁぁぁ・・・と顔が赤くなって俺は笑みを深める。
「そう、そんな表情とか。」










「まぁ、渡す気は全然無いけど。」














歯を立てて印を刻み込む。
「んっ・・・・・・・・・・。」
「絶対に渡さないよ。何処にもいけないように俺が繋ぎとめておいてあげるね。「オレ」を身体に教え込めば、その分だけは離れられない。」
「・・・・っっ・・・・・・・・・・・・・」
不意に、細腕が離れた。
離れてするりと首に回される。
「そろそろ、英二も限界?」
うつろな瞳が見透かした様に俺を見る。
確かに、俺の男の性は雄雄しく猛っている。限界と言えば、限界。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」
何も言えずにいると、ふっ・・・・・・とは息を吐くと俺の上に膝立ちになった。
その行動が、掴めない。
額から流れるのは一筋の汗。
の表情はどこか硬い。
・・・・・・・?」
名前を呼ぶとようやく焦点が合った。
「やっぱ、英二にはさせられないな。」
「なんの話?」
「私が・・・・・・受けるよ。」
「!」
険しい表情はその事だったのかと思って焦った。思わずその腰を掴む。
「だ・・・大丈夫だよっ。無理しないで?」
は微笑を浮かべる。そこで初めて口付けられた。
どこか躊躇う事があったのか一度もキスをしようとはしなかったし、させてもくれなかったのにこんな時に唇を合わせるなんて卑怯だ。
「良いの。私もね・・・・・・・英二の事好きだから。」
やんわりと百合の様に笑う。
白い彼女にはその花がとても似合う。











「動かないで・・・・ね。」
「濡らさなくて、平気?」
ちょっと罪悪感を感じて俺は尋ねる。慣らしたほうが幾分か楽ではないのかと思ったから。
「いや、これ以上英二を待たせるの申し訳ないし。私のほうは十分準備おっけーよ?」
そう言ってはウインクすると体重を下に向けた。
腰を落とす。


「・・・・・・・・・・・・ん・・・・・・・・・・・・・・・・。」
俺自身が温かくて柔らかい所に包まれる。
の顔をじっと見るけどそれは苦悩の表情。とても、つらそうで胸がきしんだ。
・・・。」
「へ・・いき・・・・・・・・初めてだからキツイけど・・・・・・。」
ゆっくりゆっくり腰を落として、最後まで鋳れるとは大きく息をつく。
「は・・・・・・・・ぁ・・・・・入った・・・・・・・・・・・・・良いよ、動いて。」
「大丈夫?」
言葉をかけるとは優しく笑う。
それでも、息は荒いし、どこか顔は青い。

やはりにわがままを言うべきではなかったと、後悔した。








それでも俺の体は正直で。
訪れる快感に逆らえるはずもなく腰を突き上げた。
「あっ・・・!!!!!」
短く叫ばれる声。
その声はハスキーだけど、とても情熱的を秘めている。
相変わらずその気にさせる声をは出す。だから俺も理性がもたなくなる。
早く、早く鈴のような声を聞きたいと思った。
華奢なその身体を力いっぱい抱き締めたかった。








「・・・・・・ん・・・・・・・・・ぅ・・・・・・・・・・・・・・英二ぃ・・・・。」
「す・・・ごいね・・・・・・・ぎゅうぎゅう締め付けてくる。」









突き上げるたびに上げられる声。
震える躯。
頬に手を当てる。あごを掴んで唇を引き寄せる。
けれど、触れ合う事はなく荒い時だけが二人の間で交換される。





「ごめんね・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・・・・・・え・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・?」
「俺、もう駄目かも。」













手首を掴むとそのまま後ろへ倒した。
ポスリと白い肢体はシーツと溶けこみ、膝を抱え上げて俺自身を押しこんだ。
「・・・・・っっ・・・・・・・・・・・・・・・・・・あァ・・ん!!!!」
男とは想像出来ないほどの甘い声。
俺を受け入れてるソコからはたまらなく愛液が溢れ出す。
この声が女性のものだったらばどんなに興奮したかと思う。
それでも苦痛に耐えるその表情は、妖艶で、とても俺を引き寄せた。



百合のような躯がピンクへと変わる。
桜の色へと、変る。





ひらひらと俺は花弁を身体に散らす。
ず・・っ・・・・・・ぐちゅ・・・・・・・
水の音。奏でられる楽はあまりにも美しく、艶かしい。
「あっ・・・・・・・・・・は・・・・・・・や・・・・っっ・・・・・。」
「どう?男の身体で男とすんの。」
自身を掴むと身体はびくりと震えて、長い睫毛がゆるゆると揺れた。
少しでも快感を感じて欲しくて指を這わせる。
「だ・・・・・・・だめっっ!!!!」
「どうして?」
「そこ・・・・触られると自分が保てなくなるっ!!!!」
初めて感じる感覚。男の悦び。
それを全て今は共通に感じる。




だから、俺は嬉しくて笑う。
「悦んでよ、それだけで俺は感じられる。」























「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あぁぁぁっっっ!!!!!!!」














白濁した液を俺へと向けて、は達する。
達した俺自身を蕾から抜き取ると放たれた液が溢れる。
涙が、こぼれる。














そして、俺は見た。










荒い息遣いをする彼女の身体が小さくなるのを。
結ばれていたゴムがするりと髪から落ちてさらりと首筋に流れるのを。



平らだった胸に膨らみが出来る。
やんわりとした体つき。
それは女性特有のもの。





確かに、は女へと「戻った」












「え・・・・・・・・いじ・・・・・・・・・。」
名前を呼ばれる。
優しい高い声。鈴の音。聞きなれた、鳥の声。
白い肌は相変わらず。そのままその身体は・・・・・




俺のほうへと倒れた。
「っ!!」
反射的に受けとめると、女へと戻ったはすぅすぅと寝息をたて始める。
「・・…気絶・・・・・・しちゃったのかな・・・・・・・・。」



うーーんと・・・・・ちょっと最初にしてはあんなに激しいのは良くなかったのかもしれないと腕に愛しい人を腕に抱えて反省した。
それでもあんな風に喘ぐを見て理性を保てる男が何処にいよう。
男の姿であっても、十二分に人を引き寄せる力を持っていて。
誰が拒む事が出来よう。










指に流れる髪をすいて、呟く。
「早く・・・・・・・・・・・もっと名前を呼んで欲しいなぁ。」
そう、渇いたものはまだまだ満たされない。
もっともっと満たして欲しい。その身体を抱き締めて口付けたい。
そんな事を考えて細い身体を抱き締めた。








































「・・・・・・・・・・・・・・・・じ・・・・・・・・・・・・え・・・・・・・いじっっ!!!!」



声が聞こえる。俺を呼ぶ声












「起きろ馬鹿者ぉぉぉぉぉぉ・・・・・・・・!!!!!!!!」


ばしんっ!!!!!と、頬に伝わった衝撃で俺は瞼を上げた・br> 目の前にいるの
額にしわを寄せて俺を睨んでいる
ひりひりと頬が痛い。
「…・・・・・・すんごいビンタ・・・・・じゃなくって良かったね、本当に戻れたんだ。」
「はぁぁ?何いってんの?授業始まるよ!!!」
盛大に顔をしかめると俺の頬から手を放した。けれど距離は縮まる事も離れる事も無く
「・・・・・・・?・・・・・・・・・」
「もう、昼休みいないと思ったらこんな所で寝ちゃってさ私が起こさなかったら放課後まで寝てたつもり?」
「え・・・・・・・・・・がっ・・・・こう?ここ。」
「そうだよ、まだ寝ぼけてるの?」
言っては首をかしげた







周りを見渡す。そこは見なれた裏庭。
B匂いを肺に吸い込むと緑の匂い
B確かに、ここは学校だ

てことは












「・・…・・・・・・夢オチなんて・・・・・・・ありなわけ?」と、思わずもれる一言
そりゃそうだ。あんな生々しい夢がただの夢だなんてあんまりだよ
「夢?夢見てたの?」
「う・・・・・・・ん。まぁ。」
「へぇ、どんな?」
興味津々。といの感じを見て、俺は口を開く
「が男になっちゃう夢。」
「へ・・・・・・え・・・・・。」
ちょっと面食らった顔をしたけどすぐにそれは笑顔へと変る
「ふーーん。英二の夢に出て来れたなんて嬉しいな。良い男だった?」
「うん。俺好みの良い男だったよ?」
あえてその男姿・script language="JavaScript">フ とやらしい事しちゃいました。なんて言えるはずもなく。そんな事言ったら最後
殴られるか怒鳴られるか・・・・・・どちらにしても起こる事には変わりないし良い方向に進むと思わなかったから。




それでも、まだあれが夢だとは信じられなくての頬に手を寄せる
手のひらに伝わってくる温かい体温
柔らかい肌
首筋に唇を寄せると柔和な肌は俺の唇を素直に受け入れて赤い痣を残す



・・・・・・・・・・やっぱり・・・・・・・・・女の子、だ


「・・・・・・・・・え・・・えいじ?どうしたの。」
まだ寝ぼけてるの?と、瞳は語りかける
まだ、熱が冷めない。まだ、満たされない






「ね、今日家に来ない?」
たしか、今日は一人で留守番なはず
「…別に良いけどさ。」
「やったvv」
今はあえて俺が何を考えてるか伏せておこう
言えばそれこそ逃げられる・・・・・・・ていうか良いように弄ばれる事になるから
とっさの行動。突然の行動
それが弱い事を知っているから









「あ、そうだ。」
首に白くて細い腕は回して触れそうになる唇を止めて呟く。
後少しで触れられたのに、と。思ったけど耳を傾けた・br>








「あのねぇ、さっきね。乾に新作のクッキーもらったんだよ。
なかなか美味しくてビックリしちゃった。」













その言葉に                  時間が止まる
      
       

        自然と 背中が冷たくなった













  ま    さか

                  そんな馬鹿な

「まさか・・・・・・・食べたの?」
「うん、食べたよ?」
鮮やかなまでの爽やかな笑顔は俺に向ける。
でも俺は笑えない・

















夢の終りなんかじゃぁない


                       これは   「始まり」   だ


物語は、まだ始まったばかりだ


知らなかっただけ。気付かなかっただけ
まだこれは前置きに過ぎない
それを俺は知っている

知らないのは、目の前にいると、流れている時間。









くるりくるりと不思議な事が起きる

くるりくるりと運命の輪は回る













ソウ、油断してはならない
長い時間はこれから始まるのだから


















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後書

なんだか以上に長くなってしまってどうしよう…という感じです
二話からはきっとおいしいほうこう…・・ではなくて、裏っぽくなります。ふぅ
しかしなんだかパラレルっぽいのは初めて書きます。うぅ、楽しい…・

もともと狼さんの英二バージョンの主人公は姐さんでしかも女版不二なのでもう…っ良い男間違い無し!!!!と、書いてる本人が妄想大爆発でうはうはしているとは誰が予想したでしょうか…・br> あぁもうっ!!!菊ちゃんが惚れるほどの良い男なんだ!!!!!(病気)

最後はミステリー風です。うふふ
こぉんなオチがあっただなんて星新一先生と似ているかも?と、思ってしまいました
しかも誰だよ、この人
菊ちゃんじゃないよ・・・・・でも良いや。菊ちゃんで
狼さんシリーズだし。良いや(やけくそだな)


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