― 狼さんとの出会い ―
最初、ジローちゃんと付き合う前の私は、決して女らしくもなく。
むしろそこらへんの男を食ってしまうような女だった。
「っはー、良い男いないかなァ。」
「あん?お前の目は節穴かよ。目の前にいるだろうが。」
「えー、どこに?」
「・・・・・・・・・・・(コイツ・・・わかってていってやがる、怒。)」
「ゴメン。タイプじゃない。」
「っ・・・てめぇ・・天下の跡部景吾に向かってよくそんなこと言えるな。」
「だって本当だもん。跡部は確かに綺麗だけど美人は対象外なの。」
私はそうして溜息をつく。
我ながら勿体無い事をしていると百も承知だが、本当のことなのだ。
私はどうしてか美人系というよりも可愛い系の方を好んでいて、跡部や侑士にはときめいたりもしない。だからこそか、跡部も私には他の女の子とは違った接し方をしてくれる。
可愛い子を見ると、妙に色々と教えてしまいたくなる私の悪い癖だ。
「この学校、レベル高いんだけどさー。」
「ほー。」
「だけど下級生で美味しそうな子は全部食っちゃったしさー。」
「ほーぅ(微笑)」
「(びくっ)なによ、跡部だって好き勝手な事してんじゃん。」
「ふっ、お前も所詮ケダモノだと思っただけだ。」
「ちょっとぉ!!それは聞き捨てならないわね!!万年発情期のあんたと同じにすんなァ!!」
「それはこっちの台詞だ馬鹿。この盛りのついた雌猫が。」
「・・・・・・・っ・・・・・なんだとぉ?」
私はふつふつと沸いてくる怒りを拳でにぎりしめて、震わせた。
そのまま座っている跡部に近づくと、ぐいとネクタイを引き寄せる。
口元に月を象り、嗤う。
「・・・・・・・・・・なんなら今ここで犯し殺してもよくてよ?景吾ちゃん。」
「はっ、やってみろよ。出来るものなら、な。」
「(・・・・・っ・・・可愛くなーい!!)」
一色触発の私達はお互いの視線を外さずに睨みつける。
だが、それも一瞬の事。
視界の端に私は捕らえたのだ。
ふわふわの茶色の髪の毛。
独特を持った柔らかい空気。
チョコレート色の甘い瞳。
私は言葉を失い彼から目が離せない。
「・・・・・・っ・・・・・・・・。」
「・・・・・・・・・・・?」
「ねぇ!あの子誰!!??」
「ぐっ・・・!」
ぐいと締めていたネクタイを更にきつく握り締めてしまったので思わず跡部は息を詰まらせる。
「おまっ・・・俺を殺す気かよ、怒。」
「んな事はどうでもいい!ああっ!!行っちゃう!!!」
「(全然話を聞いていやしねぇ・・マジ激ムカツク)・・・・・・・・・・・・・あん?ジローじゃねーか。」
「知ってんの!!??」
「だからっ!!それ以上首を締めるな!!!!」
「だったら早く吐きなさいよ!!あの子誰!!??」
「芥川ジロー。テニス部レギュラーだ!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・名前も可愛いわね(ほぅ)」
「・・・(この変態め)・・・・。」
「てゆーか、盲点だったわ。テニス部レギュラー?可愛い顔してかっこいいなんて更に得点アップねvv」
「アイツはいつもは寝てるからほとんど授業には出てね―しな。」
「可愛いvv」
「・・・・・・・・・・。」
「よし!!次のターゲットはあの子よ!!!」
「はぁっ!?(早ぇよ!)」
「必ずや!あの子のバージンを奪ってみせる!!!」
「なっ・・ちょ、!待て・・・!!」
跡部の制止も聞かずに私はかけだした。
先手必勝ぅぅ!!!(間違ってますよ?)
「・・・・はっ・・・はぁ。ねぇ、君!!」
意外にも背の高いことに近づいてから気付く。
くるりと振り向いたその顔はとても眠そうで、異常な色気が漂ってどきりとする。
しばらく何かを考えた後、彼はゆっくりと口を開いた。
「・・・・・・・・・なに・・・?」
「(はっ!!何みとれてるんだ!自分!!!)・・・いや、その。」
「・・・・・・・・・・・・・?」
「(首傾げてるよ!!可愛いし!!!てゆか今すぐ食いたい!!←コラ)」
「何も用ないなら俺行くけど。」
「ああ!ちょっと待って!!芥川君って今付き合ってる子いるの!?」
言った後、しまったと思った。
彼は私のことをしらない。なのに突然こんな質問は相手をひかせるだけだ。
「(・・・・ああ・・しまった・・。先走りすぎた、汗)」
「・・・・・・いないけど・・・。」
「(へっ!?なんで真面目に返してくれんの!?)・・・え、じゃぁ、私と付き合ってみる気ない?」
「・・・・・・いーけど。」
「嘘!マジで!?」
「なんで自分で言って驚いてるの?」
きょとんとした眠そうな瞳が私を見つめる。
とんでもなく可愛い彼は、あっさりと私にOKを出した。
「俺の事はジローで良いから。それじゃまたね。」
あっさりと、ジローちゃんはそう言って、私にばいばいと手を振ると行ってしまった。
私は呆然と立ちすくむ。
「良かったじゃねーか。上手くいって。」
背後からかけられた跡部の声に我に返る。
そうして勢いよく振り返ると、跡部の身体がびくりと硬直した。
「・・・・なんだよ。」
「ねぇ、あの子って天然なの!?絶対引かれると思ったんですけど!!」
「・・・・・・・・・・・つーか、あいつは・・・。」
「何!?」
「いや、それは俺が言うべきことじゃねーし。」
「なんだそれ!!!」
私は跡部にくってかかったけれど、跡部は口をひらくことなく閉口した。
その茶色の瞳は全てを見透かすように私を見つめつつも、何も語ったりはしない。
その瞳の力強さを知っているから、私も閉口する。
「・・・・・・・ふん、良いわよ。上手く行った事には変わりはないし。バージンを奪うわ!!!」
「お前な、そういう事を白昼堂々と大声でぬかすな。」
「・・・・・ねー、聞いた聞いた?」
「聞いたよー!あの噂でしょ!!」
「噂じゃないよー。」
「きゃー、いやー!」
「・・・・・・・・・・・・・なんの話?」
「きゃぁ!ジロー君!!」
「・・・・・・・?」
きょとんと首をかしげるその姿に女性徒達はくらりと眩暈を起こす。
流石天然可愛いパウダーを振りまく男、芥川ジロー(どんな肩書きだよ)
「ねぇ、ジロー君本当なの?と付き合ってるって!」
「・・・・・・・・・・・・うん、本当だよ。」
「「「「(がーーーん!!!)」」」」
今、この場にいる誰もが、男も女も関係なくショックを受けただろう。
ジローは学校のアイドルだ。
高3になってレギュラーになって頭角を表したジローだが、その可愛さも更に磨きがかかる。
無論、女の子達の注目の的にならないわけがない。
「おかしい?」
「おかしいよ!てゆーか、絶対ジロー君はだまされてるんだって!!」
「そうだよ!あんな尻軽女!!!」
「・・・・・・・・・・・・・・・・。」
彼女達がに対してどんなイメージを持っているのか。
それともただの嫉妬か。
ジローは必死で自分を説得する彼女達をただただ"無感情"で見ていた。
茶の瞳は何を思うのか。
何を考えているのか。
それは誰にも分からない。
そんな女性徒達の背後にゆらりと近づく人物が一人。
その人物を見つけて、ジローの瞳に色が成す。
「・・・・・・・・・・・ぁ・・・。」
「「「え?」」」
「一体なんの話?」
ゆらりと恐ろしいまでの微笑を浮かべて立っていたのは、。
その姿を見て「ひぃ!」と、小さな恐怖を示すと、彼女達は石と化す。
それに更に止めを刺すが如く、はにっこぉりと微笑んだ。
「・・・・・・・ジローちゃん、跡部がさっき呼んでたよ。」
「・・・・・え、うそ。なんでだろ。」
「さー?だけど早く行った方がいいとおもうけど。」
「・・・・・そうだねー。跡部怒ると恐いし・・・。」
そう言って、ジローはその場を離れる。
だけれど当の女性徒達はその姿を見てただただ「嗚呼、いかないでぇ・・。」と、願うばかりだ。
その後の彼女達の行方は誰もしらない―――
私は誰とも分からない名も知らない無礼者達を始末して(?)誰も来ないだろう分かっている教室の扉を開けた。
そう、私は罠をかけたのだ。
「・・・・・・・・・あれ、どうしたの?」
「(跡部が呼んでたなんて、嘘、だよ。ジローちゃん)」
今日こそ彼のバージンを!!!!(そもそも男にバージンが存在するのか?)
と、意気込む私。私は心の中でガッツポーズをとりながらゆっくりと微笑む。
「(ぃよーし!今日こそは貰ったぁ!!!)」
思えばこの3ヶ月はとんでもなく邪魔ばかり入った3ヶ月だった。
折角恋人同士になれた私達だったのに、私が手を出そうとすると、いつもタイミング悪く。
と、いうかわざとかもしれないが邪魔が入ってしまう。
ディ―プキスをかまそうとすれば樺地がジローちゃんを迎えに来て。
保健室で押し倒そうとすれば侑士が彼女とよろしく入ってきた。
はっきりいって・・・超うぜぇ・・・。
今こうやってみると、本当に綺麗な子だなと思う。
黙っているとかっこよくて可愛くて。
口を開けば更にいっそう可愛さを増す。
ふわふわの茶色の髪の毛に、眠たげなチョコレート色の瞳。
ゆっくりとした口調に、空気。
その全て、が、私を誘う。
少し瞳を伏せている横顔を見た。
「・・・・・・・・(ヤバイ・・美味しそう)」
「・・・・・ね、跡部は?」
「・・・・・・・・・ごめんね、ジローちゃん。あれ嘘なの。」
「嘘?」
茶色の瞳が少し見開かれる。
驚いたような、疑惑のような。
私は、しゅ・・・と制服のネクタイを取った。
「この3ヶ月、邪魔ばかり。私は結構限界なんだよ、ジローちゃん。」
「・・・・・・・。」
「・・・・・・・そろそろ、いただかせてもらうよ。」
緩く口元を吊り上げて笑うと、ジローちゃんに近づいた。
そのまま胸元に手の平をはわせて唇を近づける。
ジローちゃんは抵抗することなく私のキスを受け入れた。
最初は触れる程度に、少し離して今度は角度を変えて。
茶色の瞳は閉じることなく細く開けられたまま私を見つめていた。
ふ・・・と口を離すとチョコレートの色の瞳とぶつかった。
一瞬
その光が厳しいものへと変わったと思った。
桃色の唇が言葉を成す。
「・・・・・・・・・・・俺は君にとってセックスの玩具程度の価値しかないの?」
私は心が凍りついたのを感じた。
今度は私が目を見開いて固まる。
「・・・え・・・?」
「そーゆー目で俺の事3ヶ月間見てたわけ。」
瞳を伏せて私を見るジローちゃんの顔はいつもと変わらないのに威圧感があって。
本能と経験で諭す
ヤバイ
「・・・・・・・・・・っ・・・・。」
ぐいとその可愛い顔に似合わず力強く私の両手首を掴んだ。
その強さに思わず私は顔をしかめる。
ぐ・・・ぐ・・・とその力は微量ながらに加えられて、いく。
「・・・・・・ジローちゃ・・・。」
「ショックだよ。」
「・・・・・・・・・・・・・・・。」
瞳に厳しさが増した。
私の身体が硬直する。
手首に痛みが鋭く走る。
唇が
近づく
「・・・・・・・・・っ・・・・ぁ・・・・。」
はぁ。と、私の息から熱い吐息が漏れた。
触れる程度のキスが、深くなる。
舌がからみついて求められる。
「・・・・・・・はっ・・ぁ・・・・・・・・・ちょ、待っ・・・。」
息が上がって制止をかけるように首を横に反らした。
ぷは、と解放した唇で息をすう。
だけれど、そんな私の制止は聞くこともなくジローちゃんは片手で私の頭をつかむと強引に唇を奪う。
今度はきつく頭をおさえられてびくともできない。
男の人の指が私の髪の毛を絡ませて、私を支配する。
ぴちゃ
水の音が私を刺激する。
その音があまりにも響いてやらしくて、私の身体は熱くなる。
可愛い顔の、可愛い性格。
彼のまわりにはいつも緩やかな空気が流れていて。
だけれど
こんなに激しい一面も持っていただなんて。
私は初めてジローちゃんを一人の「男」として見た。
「・・・・・・・・や・・・・・・・・やだっ!!!」
力が抜ける身体に鞭を打って、私は思いきりジローちゃんの胸を押した。
これ以上進んでしまうのを恐れた為か。
初めて見える「男の子」のジローちゃんに戸惑った為か。
ジローちゃんの身体はひるんだように後退して、柔らかな髪がなびく。
ふわりとくしゃくしゃの髪の毛が踊る。
その髪の毛の合間から見える瞳。
その瞳が私を捕らえる。
「・・・・・・・・・・・・・っ・・・・。」
「驚いた?」
「・・・・・・・・ジローちゃん。」
「だけどさ、何も見てないんだもん。可愛いだけの俺がそんなに好き?寝たらそれで終わりなわけ?」
「・・・・・そんな事・・・。」
「言ってなくない。」
こんなジローちゃんは知らない。
私は知らない。
心の
崩 壊
自然と瞳から涙がこぼれた。
愛がないと分かっていた。
強引に奪った。
犬が欲しかった。自分だけのペットが。
可愛くて、忠実な自分だけのモノ。
ジローちゃんはなにも言わなくて、いつも流されてくれてたから私は満足していたけれど、そんなのとっくのとおにお見通しだったんだ。
それなのに、枯れた心が痛いよと叫んで血をの涙を流す。
失うのが、恐い。
本当は分かっていたのに。
遊びだと自分に言い聞かせていたのに。
こんなにもジローちゃんが好きなんだ。
「・・・・・・・なんで泣くの・・・?」
「私のことなんて見てないでしょ。」
ぼろぼろとこぼれる涙を拭くこともしない。
まっすぐジローちゃんのことを見ることも出来ない。
「私のこと、一度も名前で呼んだ事ないくせにっっっ!!!!」
大きく見開いた目からは大粒の涙があふれる。
ジローちゃんはそんな情けない私の姿をいつもの無表情で見ていた。
「・・・・・私の事なんて、好きじゃないなら好きじゃないって言えば!?」
心が崩れる音が痛い。
自分が悪いと分かっていながら、ジローちゃんを責めてしまう。
ジローちゃんのビー玉のような瞳が揺れた。
「。」
初めて名前を呼ばれて、びくりと身体を震わす。
「・・・・・・っ・・・今・・・更・・・。」
「聞いて。」
「聞かない!聞きたくない!!!!」
「。」
「嫌!名前を呼ばないで!!!!!」
「俺はのことずっと見てたし、好きだった。」
三度名前を呼ばれる。呪にかかる。
私は耳をふさいだまま大きく目を見開いた。
九の字に折り曲げた身体をゆっくりと持ち上げた。
瞳が交わる。
「今・・・なんて・・・?」
「俺、は俺のこと知らないと思ってた。付き合って、って言われた時もたぶんまた冗談なのかなって思って。たぶん遊びだと思って。分かっていたんだけど、やっぱり好きだから・・・。」
嗚呼、跡部が言っていた事はこの事だったんだ。
―――― つーか、あいつは
お前のこと好きだろ。
「俺はの事好きだから、の望む俺でいようと思ったんだ。だけど、やっぱり・・・好き、だからそれ以上のことしたいって思うのは当然の事だし・・・。」
しどろもどろに私に話すジローちゃんを見て、私の心の氷が溶けるのが分かる。
だからゆっくりと近づくと頬をなでた。
「良いの、ありがとう。」
「・・・・・・・・・・・・・幻滅した?」
「ううん、もっと好きになった。」
言ったら、ジローちゃんはうれしそうに微笑む。
初めて見たその表情に私の心臓はわしずかみされたような感じがした。
+++++++
「・・・・・・・あー、そんな事もあったわねぇ。」
私は昔話を跡部としながら思い出して赤面する。
その後の事はもう知れた事。
百戦錬磨とよばれた私はどこにもいない。
ここにいるのはすっかり可愛いわんこに骨抜きにされた表向きは飼い主の女が一人いるだけ。
「本当に馬鹿としか言いようがないな。」
「ああ、どうせどうせ馬鹿ですよー。」
唇をとがらせて私は跡部を睨みつける。
つーかな、分かってるんだよ。
だけど良いじゃん、今は仲良くやってえるんだからさぁ。
「それでお前も今だったら分かるだろ?」
「何が。」
「あいつは可愛いだけの犬だけじゃないって。」
「ぶっ・・・。」
「きたねーな。」
「跡部が!そんな真昼間からいうからだよ!!」
思わず吹き出してしまったお茶が私の口端をぬらして、それを拭う。
「・・・・・・・―!!!!」
「ジ、ジローちゃん、汗。」
「なんの話?」
「いや、別に。」
「ふーぅん。ま、良いや。一緒にプリンたーべよ。」
「プリン!?(何故に!?)」
「駄目―?」
「いや、駄目じゃないけど…。」
「じゃ、決まりねー(わーい)屋上で食べよvv」
「今から!?もう授業始まるよ。」
「そうだよー。だって跡部ばっかりを独占してずるいもんねー。」
にっこにこの笑顔でそう言い放った。
その言葉が棘の入ったものなのか見分けがつくわけがない。
天然なのか、そうでないのか
見分けがつくわけがない。
ジローちゃんは微笑みながら私の手を引く。
私は引かれるままに教室を後にした。
「ジ、ジローちゃんっ!!」
私はついてゆく。
だけど、屋上とは反対の方向へとジローちゃんは足を進めた。
どこへつれてゆくつもり?
「今日のデートコースは、ここ。」
淡い微笑を浮かべて、ジローちゃんはある教室の前で立ち止まった。
私は足がすくわれる思いがする。
あの、教室。
忘れもしない。
「覚えてるー?」
「………忘れるわけがない。」
「良かった。」
笑顔でジローちゃんは私のことを責める。
可愛い人。
怒っているのかさえ隠す事の出来る笑顔。
「………いやがらせ?」
「まさかー。」
がらりと教室を開ける。
刹那、鮮明に思い出される記憶。
ここに来ると、きまって私は足がすくむ。
ジローちゃんの男の子の部分を垣間見たから。
「………ねぇ、。」
「なに。」
「あれから俺達の関係は随分変わったよね。」
「そうだね。」
「そんじゃさー………わぁ!!」
「ぎゃ――――!!」
きゃー、と、抱き付いてきたジローちゃんに抵抗する間もなく押し倒された。
「な、なにすんの!!??」
「えへへー。やっと二人きりになれたと思ってー。」
「(……犬の嫉妬?←相当酷い)」
本当に嬉しそうに笑うから、私は彼の頭をよしよしとなでる。
この可愛いテディベアプードルが、私を癒し、時には翻弄する。
優しくにっこりと笑うと、ジローちゃんは私の肌に優しく触れる。
「…………好き。」
「分かってるわよ、そんなん。」
「あはは、かわいー。赤くなってるー。」
「………(むぅ)」
この子は可愛い。
そんなん分かりきってることだ。
茶色の瞳がいっそう濃くなった。
犬の瞳が細まり、深みを増す。
ジローちゃんは私の手を取って指先にキスをした。
強い瞳だけが私を捕らえる。否、捕らえられる。
「浮気しちゃ駄目だよー。俺はこんなんだけど、可愛いだけじゃないんだからさー。」
そう、ジローちゃんはにっこり笑う。
押し倒されて、強い瞳にいられれば、その意味をたやすく理解する事が出来る。
ジローちゃんは思ったよりも独占欲が強いお犬様だ。
「…………っ…以後気をつけるわ。」
微笑を浮かべるけど、頬に浮かぶのは冷たい汗。
だけど、大丈夫。
ジローちゃんの瞳はあの時よりずっと優しい。
縛られるのは、心地良い。
私は犬を支配する事なんて出来なくて、犬が飼い主を支配する。
それは、とても心地の良い事だ。
ジローちゃんは微笑を浮かべて唇を重ねる。
「…………ジローちゃんてさ、キス、上手くない?」
「え、そう?」
きょとんとした顔で言わないでください。
ていうか、なんでそんなに上手いわけ?
「………えっへへ、気持ちE−?」
「だからさ!そういうことなんで言うわけ?」
私はジローちゃんが他で練習してやしないか心配なのよ!!!
そうだ、可愛い顔してるくせに結構色々上手いジローちゃんは一体なんだろう。
ジローちゃんはそんな私の心を読んだのか、微笑を浮かべる。
「…………俺、が思ってるほど可愛い犬じゃないよ。」
「それはもう知ってる。」
「バージンじゃないしー。」
「ええ!!!なんだそれ!!」
「えー、今時そんな純な子いないよー。」
「ジローちゃんは純だし天然だよ!!!」
「おっけーぃ。そんじゃそういう事にしといてあげるー。」
「違う!!!」
「男の子はみんな狼です(にっこり)」
「(不覚…超不覚………っっ!!!)」
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シリアスなんだかそうでないんだかよく分からなくなってしまいました、汗。
だけどちょっと黒いジローちゃんは好きだよ。
でも黒くしすぎて落ちこみ系な私…
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