僕の知っているあの人はとても破天荒だ。
まるで極のように正反対のあなたと僕。

くるくる変わる表情に

少し不敵に笑ってみせる顔


その全てを僕にくれるという。

こんな僕に ―――





― 狼さんと紳士 ―






「柳生っちゃん、部活いきましょーや。」

教室で静かに読書をしていた僕にがらりと教室の扉を開ける音と共に声がした。
顔を少しあげると扉のまえには仁王君が立っている。

テニスをするにはうざったいと思うぐらいの長い銀髪を後ろに一つにたばねて。
口もとの黒子が妙に印象的だ。

彼はいつも何を考えているのか分からない。
否、分からないが故に一緒にいるのかもしれない。

「・・・・・・・・・分かりました。」

「今日はちゃんと一緒じゃないんやね。」

「ええ。今日は用事があるみたいですよ。」

「それってどんな用事じゃ?」

「さあ。」

「・・・・・・・・・・・・・・。」

しばらくなんとも言えないような顔をして僕のことを見ていたので疑問符をあげた。
あまり僕は饒舌なほうじゃない。
それは仁王君とて同じ事。
だからダブルスをくんでるといえどあまり話をしない。

それでもどこかで繋がってる気がする。

ソウ、彼女のように。

「・・・・・・・・・・・・自分の彼女のことなら把握せんと。」

「そういうもんですか?」

と、いうか別に彼女というわけではない。
どちらかが好きだとかそういう事を言ったわけではないし。
付き合ってといったわけではないし。

ただただ彼女が知らず知らずのうちに僕のテリトリーに踏み込んできて。
しまいにはそれが自然の形になった。ただそれだけのこと。

だからお互いに愛の言葉なんて囁きあわない。

それでもどこかに見えない糸で繋がれていると思うのは何故だろう。

「柳生は本当になーんもわかってないんやから。」

「君のいう女心ですか?」

のことどう思ってるんか知りたいね。」

にっ、と口元を楽しげに歪めて仁王君は笑う。
彼の言い方には自分のような堅物がどうして正反対の彼女と一緒にいるのかと尋ねているように聞こえた。

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・それは・・・・。」

それは?

何故だろう


「好きなんか?」

「嫌いだったら一緒にいません。」

「そんならのほうはどうやろ?」

そんな事は知らない

は好きじゃっていったか?」

僕の精神を揺さぶってそんなに楽しいのか






「比呂士に変なこと吹きこまないでくれる?」


涼やかな声が教室に響いたと思うと、後ろの扉が開く音がした。
目を向けると、少し不機嫌気味の彼女が立っていた。

「おおっと。恐いお嬢サンが来てしもた。」

「とっとと失せな、この詐欺師。」

「詐欺師じゃのーてペテン師、じゃ。」

「どっちでも一緒だっつーの。」

言ってるうちにどんんどん瞳の温度は下がってゆく。
その様はあまりにも恐ろしい。
けれどもそんな事にひるむ仁王君ではない。

「比呂氏。」

「はい。」

「いきなよ、部活。」

「良いんですか?用事。」

「あァ・・・・もう済んだから。ちょっと進路の事で先生に呼び出されてただけだから。」

「そうですか。」

「うん、いきなよ。」

「そうですね。」

そういうと教室をあとにした。
それをあえて彼女は追わない。
一見してみればとてもよそよそしい態度の僕達。










それでもどこかで繋がっていると信じているのは何故だろう?
















































柳生が去った後でも、仁王は動こうとしない。
それを不審気に見つめると、は眉を動かした。

「なァに?仁王君。」

妙に甘ったるい声が仁王を誘う。
けれど、瞳は笑ってない。

「愛しの比呂士君をつついたことまだ怒ってるん?」

「当然。」

「でもダブルスのパートナーとして興味あったかんな。」

「別に邪魔しようってわけじゃなさそうね。」

「興味あっただけじゃ。」

「へー。」

そこで、しばしの沈黙。
お互い口元に微笑を浮かべたまま瞳の温度は下がる。
一歩も引かずににらみ合いつづける。


けれど




その直後分かり合ったように同時ににっこりと微笑んだ。







そうして、先に口を開いたのはのほう。
不敵な微笑を浮かべたまま薄く唇を開く。

桃色の唇が言葉を紡ぐ。






「私達は、運命のつがいなの。」

「ほー。それは興味深い話じゃな。」

「私は自分を好きになれない。」

「なんでじゃ。自分は充分素敵じゃと思うが。」

破天荒で、でも行動力があって優しくて綺麗で。
嫌でもその姿は目に付くし、目立つ。
そんな彼女に憧れるひとは沢山いる。

それなのに自分のことを嫌いだというの心境を分かりかねた。

「イエスは『汝の隣人を愛せ』と言った。」

「キリスト教じゃな。」

「隣人は、自分。自分こそが"自分の"隣人だから。」

行儀悪く机に腰をかけては遠くを見つめながら天上を見つめた。
その瞳の光は、何を見ているのか。

「でも、私はその隣人さえ愛せない。」

「どうして?」

「汚いもの。仁王は自分好き?」

「好きじゃ(にっこり)」

「幸せ者ね。私は嫌いよ。」

どこが汚いというのか。
そんな事を仁王は思った。
目の前に座っている彼女の横顔はこんなに綺麗なのに。
けれども彼女がいってることはの内面だと悟る。


「こんな汚い世界の空気吸ってると自分が汚れてる気がしてならないのよ。」

「そんじゃ俺はどろどろじゃな。」

「その空気に汚染されない人間だっている。」

そういって、は目を細めた。





隣人さえ愛せないといったらあなたは困る?




































「だけど私は比呂士が好き。」

そこで色が生まれた。
やんわりと春の蕾が花を咲かせるように。
とても優しく笑ったのを仁王は見た。


「自分は好きになれないけど、比呂士は好き。」

それは運命というにはあまりにも綺麗事すぎて。
けれど偶然というにはあまりにも単調すぎて。

幼いけれど、それは必然だと思った。

月が引力のように引きつけられる人だとは笑った。
























「・・・・・・・・あっ、!!!」

がらりと勢いよく入ってきたのはブン太。
少し息を切らしぎみでへと視線を向ける。

「どうしたの?」

「どうしたもこうしたも、倒れたんだって!!」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・誰が?」































































薄らいでいる意識の中で、ゆらゆらと揺れる

彼女は僕には勿体無い。
そう思ったから何度も突き放したのに。

だのに何時も彼女はそんな時
決まって泣きそうな顔をするものだから






倒れた時に頭を打ったのか、少し痛い。
きっとこの頃試合もあったし、疲れていたのだと思う。
慣れないテニスと、負けられないというプレッシャー、そしてダブルス。加えて勉強。
気になる事は山ほどあった。






ぱたたと何か冷たいものが頬にかかったので目を開ける。
ゆっくりと瞳を開けたら彼女の顔が在った。

自分の頭の横に両腕をついて、ベットに腰掛けると覗きこんでいた。
目を覚ますとほっとしたのか、ふ・・・と瞳が和むのが分かった。
白い肌からぽたぽたと汗がしたたり落ちる。
走ってきたのか、息は荒く、下に俯いているから汗が頬にかかったのだ。

でも

どうしてそんな表情をするのだろう。




「良かった。目ぇ覚まして。」

ふ・・・と笑うと頬に手の平をあてた。
別に死ぬようなことはないのだから目を覚ますのに。
でも本当にホッとしたように呟くものだから逆に何も言えない。


別にただ疲れて倒れただけ



なのに






「泣きそうな顔しないで微笑まないで下さい。」








僕は彼女を無意識に引き寄せてきつく抱き締めた
















離れられぬ、そう思った。






























―――――――――

よく分からない。しかも仁王への愛なのか彼が出張っている。
比呂士があまり登場していない。よく分からない。
てゆか仁王の方言が上手くかけない。どこが狼なのか。最後か?
と、謎を多くしたまま去ります・・・(土下座)

return