― ペルシャな猫 ―
跡部家のベットはキングサイズだ。
ふわふわ羽毛布団に包まると、本当に気持ち良くてついつい眠ってしまう。
カすかに香るコロンの香りに惑わされて。
残り香に、私は酔う。
旅立つのは
大海原の海か
はたまた青く広がる大空か。
ペルシャ猫みたいな、この綺麗なオス猫のたずなを掴める権利がある優越感に浸って、私は深く微笑む。
隣りで読書にふけっている、この気ままな恋人の横顔を見るのが
とても好き。
眼鏡の奥に潜む淡く茶色がかった瞳を見ると、堪らなくドキドキする。
ふいに、パタムと本を閉じると瞳がこっちを向いた。
「なんだ?」
「別に。」
ふいと視線を外したら、跡部はふぅとため息を付いて本を横の小さな机に置く。
「暇か?」
「暇だね。」
「ふー―ん。」
何を思ったか、私の手首を掴むと奴は私を押し倒しやがった。
途端に私の眉が訝りげに歪む。
「何さ。」
「暇なんだろ?」
「暇つぶしの猫と戯れる気は、ない。」
ぐいと胸を押して上半身を持ち上げる。
ったく、今は春だからって盛ってんじゃねー。
「今日は駄目。」
「お前今生理じゃねーだろ?」
「っっ!!なんでそんな事をお前が知っている!?」
「じょーしきだろ。」
「いや絶対おかしいって!どこの世界に女の生理日をチェックしている男がいるんだよ!」
あ、そーか。ここに一人いる。
いや、じゃなくてこのままじゃ私がヤバイ。
「はぁ?お前こそ馬鹿じゃねーの。普通は何ヶ月も付き合ってたらわかるだろ。」
「て、いうか。あんたの場合何ヶ月がありえない話しだよね。」
「それもそうだな。」
「(あっさり肯定すんな)」
「良いじゃねぇか。暇なんだろ?」
「だからさァ。暇とかそーゆーんじゃなくて、生理前とか後とかって一番危険なんだよ?子供が出来たらどーすんのさ。」
「別に俺は構わなねぇぜ。」
「はァ?」
「金はあるし。安心して産め。」
「あんたの金じゃぁないだろ!!」
ああもう、嫌だね。こういう奴は。産むのは私なんだよ!!
そりゃあんたは種を植え付けるだけでいいでしょーがね!!!!
「無責任な!!私はまだ中学生だよ!!」
「アホ。そんな事気にするよのなかじゃねーよ。」
「この年で子供が出来たら親が卒倒する!!!」
アホとか言われたよコイツに。
だから嫌なんだよ春はっ!!!怒。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
しばらく黙った後、ふと思う。
これ以上この話をしたくなかったけど気になるから聞いてみた。
「・・・・・・・・・・・・・・跡部子供欲しいの?」
「別に。でもお前の子供なら良い。」
・・・・・・・・・・なんでそう言う事いうかな。
私はそんな一言に凄く戸惑ってしまうのに。
嘘みたいな夢が現実の様に思えてしまうから。
この男が私の一生の人になるなんて考えられないし考えたくもない。
誰にも束縛されないのが、
跡部景吾だと私は思うから。
所詮は一瞬の輝きにすぎないのに。
「(あーやだやだ、センチメンタルで)」
「遠い目すんな。」
声をかけられて我に返った。
枕を抱いて横たわってる跡部の瞳がこっちを見てた。
駄目だ、夢を見るな。
私がこの血統書を手に入れるなんて到底無理な話しなんだから。
「平気だよ。」
「そうか?」
「何さ。」
「一応教えといてやるけど。」
「?」
そこで言葉を打ちきって、スゥと瞳を細めた。
楽しそうに唇が吊り上げられる。
「現実だぜ。」
そうだよね。
跡部はいつも私の一番欲しいものをくれるよね。
だけど私は何を跡部にあげてる?
そんな心情と裏腹に、私は平静を装って言葉を並べた。
「よく考えたら跡部が父親なんて考えられない話だったね。」
「なんでだよ。」
「えーー?だってやだもん。こんな親父。」
「あぁ?」
「絶対浮気するよー。金使い荒いしー。」
「馬鹿。俺の子供は美形だぞ?」
「もう男だってきまってんのかよ!!」
「女は要らん。男じゃなきゃ駄目だ。」
「(ああそう、何せ跡部ん家って貴族っぽいもんね) なんでさ?」
「女だったら襲いかねねーよ。」
「そいつは犯罪だ――――――――――!!!」
「俺の子供だったら絶対美人だし。」
「てか人の話聞こうよ!!!」
何をいっとんじゃ、コイツ。
私は近親相姦なんて絶対ごめんだね。
だけどきっと女だったら可愛がるよな―――。
近づけば嫌そうな顔するくせに、本当は愛しくて。
可愛くて。
はっ!!いかんいかん。夢見るな私!!
「とにかく(ゴホン)私はあんた意外の男と結婚するよ。」
「ほーーぅ?」
「う゛、何よ。」
刹那、凄い力で手首を掴まれたかとおもうと一気に押し倒された。
「っっ!なにすんのよ!!」
細まった瞳が悪戯気に笑う。
不敵に唇はかたどられる。
「それなら。お前の口から俺がいないと駄目だって言わせてやる。」
やべぇ、マジだ。
「今日は駄目だっていったじゃん!」
「ガキができれば産めばいい。」
「っざけんな!!!」
「ホント。お前は口が悪いな。」
そう言って満足気にほほえむと、「まぁ、そこが良い所なんだけどな。」とか言ってあっさり私の唇を奪いやがった。
こうなったら抵抗出来ない事をしってる跡部はずるい。
「卑怯者。」
「なんどでも?」
まるでその後に"そういえばいい"と、言ってるような口調にむかついたけど、意識が飛ぶ事ぐらい目に見えてる。
夢なんかみたくないよ。
見れば見るほど悲しく切なくなるから。
だけどペルシャの王様の跡部は
そんな私の気持ちは知る事もないんだよね。
ねぇ、私はあと何度
貴方に抱いてもらえる?
「迷うな。」
するすると私の服のボタンを外してく跡部が強い口調で言った。
私は奴のいってる意味がわからなくて。
本当に跡部は私の考えてる事が全部お見通しなのか。
私の手を取って、指を自分の首に這わせた。
「お前は、俺のたずなを離さないように気をつける事だけを考えるだけでいいんだよ。
無駄な事を考えんな。」
目を丸くして、跡部を呆然と見てた。
指先が、こまやかに震えるのが分かる。
私は
腕を精一杯伸ばして跡部の首に巻きつけた。
跡部は何も言わずに私の背中を背で支える。
「うん。」
瞳から一筋
水滴がこぼれた。
すっかり外は暗くなって、俺はスタンドの明かりをつける。
ポゥ、と淡い光が照らす。
隣りで疲れきってる奴の乱れた髪をゆっくりとすく。
やべぇ、調子に乗りすぎたな。
そんな事を思うけどしかたねー。
こいつが他の男のところに行くとか言うのが悪い(なんでも他人が悪いのか)
本当に疲労困憊という感じの寝顔を見て、前髪をかきあげると小さくため息をついた。
いつもなら立ち止まれる場所を俺は知ってる。
けれどそれを平気で踏み越えてしまう奴がいる。
境界線
止めがね
そんなものはこの女の前では無用だ。
それを、コイツはどこまで知ってるのか。
「きっと1%も理解してねーよな。」
髪をかきあげて額に優しくキスを贈る。
きっとこんな事をしてることさえ知らないのに。
とうして俺の心の中が分かるだろう。
「まぁいい。時間はたっぷり用意した。」
もう手の中に入れてしまったから・
あとはじわじわ追い詰めるだけでいい。
ゆっくりと、時間をかけて。
自分にとって一番必要なものは何かを。
気付かせればそれでいい。
ゆっくり唇を歪めたら、だんだん眠気が襲ってきて
また俺は二度目の睡眠を取る為に布団の中に入った。
――――――――――――
「おはよー。あーー腰いた――――――。」
「おはよーさん。なんやー、ごっつ機嫌悪いなぁ。」
「あァ、盛りのついたペルシャ猫にちょっと噛まれてね。」
「・・・・・・・・腰を?」
「うん。」
「大変やな。」
「・・・・・・・・まぁね。」
本当に、うちのペルシャ猫は気ままな王様だ。
金で縁取られた赤いブランドもんの首輪じゃないとつけもしないし。
だけど
私はこのたずなを離さなければそれで良いと、あの人が昨日教えてくれた。
そう思って、私は小さく笑うのだった。
―――――――――――――
ちょっと短めなお話し。
私基本的にドリ夢で子供がどーとかそういう話はあんまし書きたくなかったんですけど
書いちゃいました(てへ)
まぁ、ベイビー話一直線じゃないだけいいかなと。
ていうか跡部ってペルシャだよね、絶対。
あとシャム猫とか。シャムでもいいね、うん。
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