先日、ウチの部室に乱入してきた賑やかな人がいます。
その人は分け隔てなく部員に接して、レギュラーとかそうでないとかぜんぜん関係無く接するから、いわば皆の人気者です。
疲れてる時も、何時も笑顔でいる人。
俺は宍戸さんのことが好きだけど、先輩の事、が、凄く好きです。
でも、あの人自分の事女って自覚してないと思うんです。






― らぶじぇねれーしょん  ドングリを取りにゆこう2 ―






「おはよーございます。」

「おはよー。」


先輩の朝は早い。
「なんでマネージャーになっちゃったんだろう。」とか、「仕事が大変だよ―――。」とか、文句を言うくせに朝はきっちり一番ノリだ。
こんな風に、ちゃんとマネージャー業をしてくれるところを凄く尊敬してる。

今日の先輩は、ドングリ・・・だろうか。
透明のおぼんみたいなものにドングリを入れて水につけてた。
ゆらゆらゆら・・・わずかな振動でドングリが揺れる。
先輩の目がそれを追う。
ゆらゆらゆら・・・水面でドングリが緩やかなダンスを見せる。
イスの上に置いたドングリを、自分はイスの上に乗せてる腕に顔をうずめて目だけを出してた。
上目遣いのその瞳が、時々揺れる。


「(かっ・・・可愛い)」

いえ、別に顔が可愛いとかそんなんじゃないんですけど(失礼)

「先輩・・・何してるんですか?(どきどき)」

「んーーー?見れば分かるじゃん。ドングリ漬けてんだよ。」

先輩はドングリから目を離すことなく応答した。
何をそんなに真剣になってるんですか?

「なんで、漬けてるんですか?」

「ん?だってこのまま漬けてたら芽がでるかもしれないじゃん?」

えへへー、と、笑う先輩の笑顔が眩しい。
そーですよねっ!!やっぱり女の子はそうでなくちゃあ!!
やっぱり先輩もまがりなりにも女の子だったって訳ですね!!(超失礼)





















「て、いうのは建て前で、今は渋みを取ってるんだよ。」



ちょっと黒い微笑を浮かべる先輩をみて、すこぉし嫌な予感がした。
まさか・・・まさか先輩・・・

「胸キュンでしょ?」

「え?」

「今、胸キュンしたでしょ?」

それこそ、にっこり。って感じで先輩は笑った。
えぇ、笑顔がまぶしいです。でも影が見えてるのは何故ですか?

「・・・・・・・・・・ちょっと。」

「あはは!!やっぱりね!!昨日の忍足の反応で男はこの言葉のやり取りに弱いって思ったよ!!」

いつも通りに豪快に笑う先輩を見て、ちょっと心の中で「ああ、またか。」とか思ってため息をついてしまう。この次に来る展開が、俺には・・・見えてしまう。
憐れだ、俺。
たった二ヶ月で先輩の性格を把握するなんてっっ!!

「・・・・・・・ちょっとおたずねしますが(おそるおそる)」

「おう、なんだい。少年。」

「それ、"本来の目的"はなんなんですか?」

「ふふ、流石チョタ朗。聞いて驚け。」

「もう驚きません。」

「た・べ・る・のvv(うふ)」

「(嗚呼、やっぱり・・・)」


ああ、宍戸さん。
やっぱりこの人に女らしさを求めたのは間違いだったようです。
なんだかいいかげんに悲しくなって来ちゃいました。













「無理ですよ。」

「何故に!?人はやろうと思えばなんでも出来んだよ!?」

「いや、むしろそんな事しなくても…」

「夢が!!ロマンがなぁい!!!」

「……………すみません。」


もうすでに暴走してる先輩を止めるすべを僕は見つけられません。
うぅ、本当に食べるんですか?














「・・………………何やってんだ、お前ら。」


ガチャリという音を立てて入ってきたのは跡部部長だった。



「あ、跡部―――――――――!!!」

「(うっ) なっ、なんだよ…」


とんでもなく目を輝かして嬉しそうに走ってくる先輩に跡部部長はひるんだ。
そうですよねぇ、その眩しい笑顔には裏があるのかそうでないのか迷うとこがありますよね。


「あのねっ、携帯貸して?」

「断わる(即答)」

「ぎゃぁ!即答だよ!!なんで!?」

「てめー、また変な悪戯する気だろ!」

「しないよ!!」

「とにかく駄目だ。」

「先輩…なにしたんですか?」

「別にぃ。」

「(怪しい)」

「コイツ、人の携帯の登録を全部消しやがったんだ。」

「ええ!!(それは酷い)」

「だって跡部、忍足がいるのに何!?あのデータ―!!女のばっかりじゃん!!」

「ええ!!(それも問題)」

「そんなのお前に関係ないだろーが!」

「関係ないけどむかつくじゃん!だから私が忍足の変わりに敵をだね――――。」

「勝手に取るな!!」

「(それはごもっとも)」

「兎に角、なんでもいいから貸してよ。別に悪戯しないから!!」

「……………何に使うんだ?」

「……………秘密。」

「断わる。」

「なんで!!??」

「(どうどうめぐり)」

「…………・・っっっっ………・・」

「(げ)」

「(あ゛)」



しまいには泣き攻撃ですか。
いや、普通男はそういうのに弱いって事を計算に入れてですか?














「………………」







「仕方ねぇな。(はぁ)」

「やたvv」



折れるんですか、跡部部長…
結局は跡部さんも先輩には弱いんですね。


というか、よく考えるとこの人に勝てる人はそういないと思う。
なんだか自分の世界に引きずり込んで、自分中心に世界が回っているからだ。
それでも憎めないのは、彼女の人徳なのだろうとふと思う。



「ありがとー――。」

仕方無しに渡した携帯を、嬉しそうに受け取ると、さっそくピコピコ操作し始める先輩。





「・・…………………鳳。」

「はい?」

「あれは…なんだ?」


『アレ』と、跡部部長はおぼんをさした。
その瞳はなんだか疑わしそうな怪訝の表情。


「ああ、あれは先輩が渋抜きを…。」

「渋抜き?なんでだ。」

「え?なんか食べるそうですよ。」

「………………。」

「びっくりですよねぇ。僕も流石にドングリまでは…」

「ドングリって食えるのか?」

「いえ、僕は食べた事ありませんけど。」

「…………………・あ。」

「?」

「・……………アイツっっ!!」

怒りの表情をあらわにして、「!!」と、名前を呼んで振り向いたがそこに先輩の姿はない。
けれど跡部部長は迷わずロッカーへと足を進める。

「てめぇ!!何こんな所に逃げ込んでやがるんだよ!!」

「ふっ、あまいわねぇ、跡部。泣き落としごとき、何度も見てきたでしょうに。」

「開けろ!!!」

「イ・ヤ。」


ガタガタとロッカーを揺らすが、中から鍵をかけてるらしく、まったくびくともしない(用意周到ですね)







「もしもーーし。あ、跡部宅のシェフさんですか?」

!!てめぇ!!」



シェフ…?シェフってなんだ…?



「えーーと、ドングリを調理して欲しくて。」

「家のシェフにドングリなんて調理させるな!!!」

「五月蝿いなぁ、ちょっと黙ってて跡部。……・・え?無理?それは残念ですねぇ。
 跡部家きってのシェフが無理なんですか。       やっぱりドングリなんて無謀ですかね?
 え?出来る?やってみせる?       そうですかぁ、それじゃぁお願いします(うふ)」





ピッ。と、電源を切る音がしたかと思ったら、ロッカーの扉が開いた。
そこには悠然とたたずむ先輩が、いた。



・・………怒。」

「なにそんなに怒ってんのよ。心配しなくても跡部にもあげるって。」

「いらねぇよ!!」

「しかし、流石跡部のシェフだね。挑戦されたら拒めない(にやり)」


先輩…まさかそこまで読んでるとは。汗。


「怒るんなら忍足に言ってよ。私を山に誘ったのは忍足なんだから。」

「侑士…だと?」

「そうだよ?」

にっこりと笑う笑顔はどこか企んでいる様でない様で。
とにかく跡部部長が凄く怒っているって事は良く分かる。




「おはよーさん。」

「侑士ぃぃぃぃぃぃ………・」

「え、何?なんで怒ってんの?」

「忍足!聞いてよ!!跡部のシェフがドングリ調理してくれるって。」

「え、マジで調理するん?」

「うん、きっと材料がドングリでもきっとおいしく出来るよね!!」

「せやなぁ、できたらえぇな。」


なでなで。と、忍足先輩は先輩の頭をなでてた。
でもお二人とも、気付いてますか?跡部部長が……ぶるぶる。


「そうか、全てはお前の責任と見て良いんだな。」

「だから、さっきからなんやねん。」

「お前、今日から一週間部活前のメニュー追加だぞ。」

「え゛、なんでやねん!」



先輩…みごとな罪なすりつけ作戦ですね(ほろり)
ていうか自分がよければ他人を犠牲にする精神素敵です。











宍戸さん、どうやら先輩は最強のようです・…





























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ドングリの行方はどうなるのかな。
チョタ朗編でした。




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