ただ、貴女が好き
それだけなんです
― らぶじぇねれーしょん like or love ―
の背を見つめて、俺は扉の向こうへと消える姿を目を反らす事無く見ていた。
それから色んな騒ぎがあったけど、俺は動けなかった。
とても綺麗に笑ったの顔が頭から離れなくて。
「なんだ、まだいたのかジロー。」
跡部こそ、ジャージ姿じゃん。
とか思いながらちろりと跡部を見た。
少し髪が汗で濡れている。
何を話したんだろう。
忍足の言うように何も言えないだろうに。
でも、追いかけられずにいられなかった気持ちも分かる。
俺だって多分追いかける。
あんな顔で笑われたら
きっと本人はとてもたまらない。
ソファにちょこんと座って
そうして視線を天井へと向ける。
「…………あとべ。」
「何だ。」
「俺、反省した。」
ポツリと呟く。
跡部の瞳の色が静かになる。
「あんな風に笑うなんて。」
「…………。」
「を傷つけた。」
苦しい。
おても胸が苦しい。
ゆっくりと瞳を細める。
あの子の笑顔が頭から離れない。
跡部はしばらく俺を見つめて、歩を進める。
そうしてわしゃわしゃと俺の頭をなでた。
「うわっっ!?」
跡部はただ何もいわずにぐしゃぐしゃ撫で続ける。
そうして手を放した時はすっかりぐしゃぐしゃになってしまった。
「っもー。なんだよ、超ぐしゃぐしゃー。」
絡まる縮り毛をほどこうとして涙目になりながら文句を言った。
そしたら目の前の跡部が妙に静かで。
とても沈んでいるように見えたから困った。
どうして
跡部が泣きそうなの?
「最低だ、俺は。」
搾り出した小さな小さな呟きはうっかりしたら聞き取れなくて。
うつむいてさらさらと前髪がこぼれたから表情は見えない。
でも、きっと泣いていると思った。
身体ではなく心が。
跡部の魂が。
だから、俺も泣きそうになる。
凄く切なくて。
誰も悪くないのに。
どうして悲しまなければならないの?
「泣かないでよ。」
「泣いてねーよ。」
そうだよね。跡部は強いもん。
でも知ってるんだ
跡部はの前では時々弱さを見せてたこと。
「これは裏切りじゃないよ。」
「ジロー?」
しばらくたって言った言葉。
それに跡部は顔を上げる。
目が合って
情けない顔をした跡部に微笑んだ。
「跡部は…本当にが好きなんだね。」
「………。」
「俺、そんな跡部好きだよ。」
「…………………てめーもか。」
「うん!」
俺のは親愛だけどね。
誇り高くて自信家で
気高くて、本当は優しくて
意地っ張りで、でも寂しがりやで
面倒見が良くて
そうして時々笑うその表情はとても綺麗
「だからね、跡部幸せなら良いんだ。」
「…………。」
「でもどうしてが悲しまなくちゃいけないのかなぁ。」
軽く睫毛を伏せた。
「ジローは…あいつが好きなのか。」
「うん、好きー。」
にこぉ。と、笑ったら跡部が少しひるんだ。
なんとも複雑な表情の跡部を見て、可愛いなぁと思った。
「てゆか、嫌いな人なんていないよ。」
「心配?」
「ばっ…、別に、俺は…。」
最後を濁らして、フイと目を反らす。
跡部は困った時いつも目を反らすよね。
跡部は分かってるんだ。
自分にそんな資格ないこと
でも手に入れたいと思っていて
それは強欲だとわかってる
「人間て、むつかしいねぇ…。」
跡部の心の葛藤をしっているから俺は瞳を閉じて呟いた。
口元には微笑。
でも、そんな跡部のことをたまらなく好きだと思うのです。
けれど
まだ気付かない俺は後々違うことを思うようになる
心の中の深い底で
自分でも気付かなかった宝箱を開けるように
知らないもう一人の俺が目を覚ます。
「……………ねぇ、跡部。うかうかしてたら俺がもらっちゃうよ?」
そういって微笑むのだ。
―――――――
親愛は情愛に変わる
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