気づいて欲しい。
決して報われない恋がある事。
誰よりも愛している事。
誰よりも願っている事。
幸せ、を。
− Love Generation −
山吹中の部室の中に紫煙がふわりと浮かぶ。
男子生徒が一人。煙草をふかしてどこか遠くを眺める。
小さな身体はすっぽりとソファにもたれかけさせていて、天上を見ながら煙草をふかす。
開いた窓から吹く風は、優しく橙色の髪の毛を揺らす。
榛の瞳はすぅと伏せられていて。
何を見つめているのか。
何処を見つめているのか。
彼の制服には少しだけ香水の臭いがする。
それは、先ほど遊んでいった女性徒のもの。
そんな事も気にせずに千石は息をはいた。
そうして、ちろりとドアを見ると、そこにいる人物を悟って微笑む。
「ったく、しようのない男ね。」
呆れたような声。
その声音は少し高い女のもの。
橙色髪を持つの少年は目線をそちらに向けて口元を月の形に象った。
「なにが?」
「しらばっくれないでよ。窓開けてするやつがいるか。」
「あれぇ?聞こえてた?」
「分かっててやってたくせに性格悪いね。」
くす、と微笑むのは千石清純。
溜息をつきつつも女性徒は扉を閉める。
彼女の名前はという。
榛の瞳が印象的な女性徒。一応山吹のマネージャーだ。
「よくやるよ。亜久津ってもんがいながらさァ。」
ふっ・・・と唇を吊り上げ嗤う。
彼女はこの目の前の愚かな行為を笑って済ませる。
だから千石も笑う。
「亜久津は特別。あっちは遊び。」
「ははっ、さいてー。」
煙草の煙を深く吸いこむ。
は一歩を踏み出して千石の側に寄った。
さぁ・・・
風が吹く。
彼女の髪がゆるやかになびく。
の髪も、また
橙色。
「こそ人のこと言えないんじゃない?」
「一緒にしないでよ。私は特別な人なんていないしね。」
「そーなの?」
「何よ。」
「・・・・・・・・・・・へぇ。」
なんだか嬉しそうに口元を歪める。
目を細めて千石は笑ってに手を伸ばす。
伸ばされた手を振り払うことはしない。
男のくせに細い指はするりとの首の後ろをなぞって。
「・・・・・・・・・・・そいつは初耳だなぁ。」
手に力をこめて自分の方へと近づけた。
触れ合う唇。
抵抗したりしない。
けれど、瞳も閉じたりしない。
これは
決して自分がのめりこんでいないという証拠だ。
証を作るために、はいつも自分を制御する。
千石が他の女を抱く時のように。
自分もまた自分を制御する。
決してこれが夢であっちが現実だということを忘れない為に。
「・・・・・・・・・・・ん・・・っ・・。」
するりと柔らかな舌がすべりこむ。
抵抗は、しない。
「・・・・・・・は・・・。」
少し離して、今度は角度を変えてもう一度。
今度は自分も舌を使って相手を翻弄させる。
お互いの口端から透明の液が流れていても気にしたりしない。
ちゅく。
舌と舌が絡みつく音も旋律となして鼓膜に鳴り響く。
「・・・・・・・・・・・・・・・・はぁ・・。」
やっと解放されて一息ついた。
目と鼻の先にいる千石は口端を歪めて嗤う。
「・・・・・・・・・・・・・・・可愛い顔して、やらしいキスするよね。」
「自分もね。」
相手が笑うから自分も笑い返す。
余裕たっぷりのこの二人。
笑ってはいるけど瞳はどこか暗い光を帯びていて。
お互いの腹を探り合っている。
それが
と千石の付き合い方だ。
「亜久津と寝てんの?」
笑いながら千石は尋ねる。
の顔から表情が消えた。
しばらく流れる沈黙。
ゆるやかな時間。
「だったら何?」
「別になにも?(にっこり)」
「ふん、嫉妬したりしないわけ?」
「なんで?」
「なんでって・・・。」
あっけらかんと言う千石に少しムッとしながら訝りげに眉を潜めた。
そんな表情もとても可愛いものだ。
千石は笑いながら、スゥと人差し指をの方に向けた。
「俺は特別。は遊び。」
笑いかけるその表情はマジ。
呆気に取られて表情をまたなくして、けれどもすぐに笑う。
頬には一筋の汗。
それはまるで蜘蛛の糸のように。
「言ってくれるじゃん。」
「まぁね。」
「・・・・・・・・っとに、正確悪。清純ぶって、なにが"きよすみ"よ。」
「こそ。いかにも"私は穢れてません"って顔してるくせに遊んでるよね?」
にぃっこり。
極上の笑顔を浮かべるから、の頬にまた一筋の汗が流れた。
決して口もとの笑みは消さないけれど。
「ばっかばかしい。そんなん私に理想をもってる奴らが馬鹿なのよ。」
するりと身体を離すとソファの足に背もたれた。
「大体さぁ、なんなの?勝手に理想持って、そんでもって私に押し付けて。」
「けど充分期待に応えてるじゃん。」
くすりと笑いの息を漏らしてまた煙草を吸う。は睨みつけながら肩越しに千石を見上げる。
その怒りの瞳を受けとって千石は苦笑した。
「キヨもね。」
「まー、世の中上手く渡って行く為の知恵だよね。」
はまた視線を前に戻す。
瞳を伏せると長い睫毛が榛の瞳を隠した。
願ってる。
気づいてよ。
幸せ、を。
私にちょうだい?
「・・・・・・・・・・・・それでも亜久津の事が好きなのね。」
「まぁ、特別ですからvv、」
「そうですか。」
「そうですvv」
は瞳を閉じて笑う。
やっぱりね。そんな事を思いながら。
「だったらさぁ、もうちょっと本気を見せなよ。亜久津がかわいそーじゃん。」
「見せてるよぉ。亜久津が俺を見てくれないんだもん。」
「(もんじゃねーだろ)努力が足りないんじゃない、清純さん?」
「に言われたくないなー。」
けらけら笑う千石を見て、は苦笑した。
言い訳はしない。言い返しもしない。
それは認めたという証。
「アタシはね、なぁんでも分かるのよ。」
前髪が表情を隠す。
真っ赤に染まる唇だけが見える。
微笑みの形に象られている。
嘲笑したような笑いに千石は視線を下に向けた。
「そうでショ?」
顔を上げて、振り返った。
日の光を浴びたような髪の毛はきらりと木漏れ日に反射して金に染まる。
楽しげに笑う表情は誰かさんそのもの。
「・・・・・そうだね。」
瞳を伏せて千石も微笑む。
両腕をソファに乗せてその上に首を乗せた。
「アンタと私は一緒なの。だから分かるよ。」
「興味あるな。なにが?」
「キヨは誰も愛してなんか、いない。」
表情が真剣になって瞳は厳しくなった。
千石の顔から表情が消える。
強い瞳と瞳がぶつかる。
しばしの沈黙は針のように痛い。
けれども、それは一瞬だけ。
お互いににっこりと笑った。
「うふふふ、なんてね。」
「あははは、ったら上手いなぁ。」
お互いから笑いをしてる事に気がついても気にしたりしない。
は立ちあがるとスカートについた埃を取る。
「そろそろ行かなきゃ。伴爺に呼び出しくらってるんだよね。」
「セクハラに気を付けろよー。」
「うん、賄賂でももらってくるかな。」
「うそっ、あんな爺相手にすんの嫌じゃない?」
「マジにしないでよ。私だっていくらなんでも嫌だし。」
目を細めて嫌そうに口元を歪めた。
鞄を取って肩にかける。
「じゃ、また後で。」
「ん。」
ひらひらと千石は手を振る。
はかすかに微笑んで背を向けた。
風が吹く。
二人の髪がなびく。
千石の口が薄く開く。
「ねぇ・・・。」
「?なに。」
「ほんとにさ、そう思う?」
「だからなにが。」
「俺って愛してないように見える?」
振り向いて、足を止めた。
はしばし考えて口を開いた。
「キヨがそう思ってるならそうなんじゃない?」
「うわっ、さっきあんなにぼろくそ言っといて今逃げんの?」
「ばぁか。違うわよ。キヨが私のこと分かるように、私もキヨのことが分かるの。だったら今キヨの考えてることなんて容易に想像できるっての。」
「へぇ、なに考えてるって?」
「言って、安心させてなんてあげないよ。自分で確かめて来な。」
「はは、手厳しいなぁ。」
「亜久津よりかはましでしょ。」
「亜久津は拳がとんでくるからね。」
「それを受けとめられるキヨも凄いと思うけど。」
「「愛ですからvv」」
はもった声に驚いて千石は目を見開いた。
逆には楽しそうに笑う。
それを見て、千石は目を細めて微笑む。
「本当に、お見通しなんだなぁ。」
言われて、は一層笑みを深める。
「当然でしょ?」
勝ち誇ったように、嗤う。
口端が弓張り型に象られる。
太陽の髪の毛を持つ少女は月を口元に宿す。
「私達きょーだいなんだから。」
その少女は、とても誇らしげに笑う。
だから言ったじゃん。報われないってさ。
いくら愛しても。
いくら願っても。
きっと私は幸せになることはないんだ。
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山吹は熟慮の末大人目でいきます!!(宣言?)
双子さんってどんなんだろうと思い書いてみました。
本当は妹とかと×××っていうのはどうかと思うんですけど双子は自分のなかでぎりぎりセーフです。しかもキヨならなんとなくセーフ(ナニソレ)
跡部とか侑士とかだったらヤバそうだ、うん、ヤバイだろ。
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