可愛くて、優しくて、テニスが上手くて

かっこよくて、背が高くて、猫みたいで


それから・・・






        それから?






― ラテ・ビオーサス ―


暖かきうららかなある日の朝。
ぴちちと小鳥のさえずりが聞こえる涼やかな日の事。

英二はいつもどおり屋上にてはねのある茶の髪の毛を揺らしていた。
瞳はゆっくりと閉じられていて。
聞こえるのはかすかな寝息だけ。

英二を優しく誘う風が眠りへと導く。




ひたひたひた

   かんかんかん




その音に反応したのか瞳を薄く開けた。
見えたのは、琥珀色の瞳。

ぱちりと開けた猫目の瞳を険しく潜める。
まるで警戒する獣のように。


ぱたぱたぱた



刹那、険しい光は消えて穏やかな瞳が宿る。
緩やかに開けられた琥珀色の瞳は静かに揺れて、英二は上体を起こした。

まるで待ち人を待つように。




がちゃん



「おはよっ!vv」

「!」


扉が開けられた途端、爽やかなまでの笑顔でを迎えた。
一方、迎えられたはというと驚きを隠せない様子。

それはごもっとも。
何故ならまるでその行動が自分を待っている様に思えたから。

「・・・・・・・・・・おはよ。」

少しばかりの警戒は隠せずに、は挨拶をした。
それににっこりと応じる英二を見て、は息を吐く。

嗚呼、何も変わりはないのだと。

そう、思う。

「朝練ご苦労様。」

「ううん、俺テニス好きだし!」

「そっか。」

の方が好きだけど!!!!」

「・・・・・・・・・・ありがと。」

あふれんばかりの笑顔を向けてくる英二に対して動揺を隠せないものの自分も英二への愛情を隠せない。
だから、照れた様にお礼を言った。

「教室、行く?」

「迎えに来てくれたの?」

ぱぁ。と、まるで花が咲いた様に顔を輝かせるのを見て、思わず胸中の自分が「可愛い・・・」と、漏らす。
自分の彼氏に可愛いなどという誉め言葉を使うのはどうかと思うが実際そうなのだから仕方がない。

「行こうか。」

「うん!」


そう言って立ちあがると、英二はの横に並んだ。
その慎重はの頭一個と半程。
中身は可愛いくせに、見目はしっかりオトコノコの英二にときめかないはずはない。

は幸せをかみしめる。

英二の胸中を知りもしないで。


















































**************

********








英二は高いところが好きだ。
それが猫だからかなんなのかは分からない。

ただ、ここならいつだって早く愛しい人を見つける事が出来る。

は自分が猫のようだと思っている。
でも、本当は違う。

いつも自分はを監視しているのだと、そう思った。

思って、どうして彼氏の自分が彼女を監視するのだろうかと思って自嘲の笑みを口元に歪ませる。



ぶらぶらと投げ出された足の下は支えるものなど何もなくて。
それもそのはず、英二は屋上のフェンスを越えてコンクリートの上に腰掛けていた。
一歩踏みこめばそこは奈落の世界が待っているというのに気にも止めない。
否、そちらの方が風が当たって気持ち良いというほどだ。

ただ、違うのはその瞳。
先程までを優しく見ていた瞳に色は消えうせている。
なんの表情もうつしていない冷たい瞳が見据えるのは、視下に広がる学校。
そうして、二人の男女。

一人は。もう一人の男は知らない。


「どうして?」

呟く声は風に乗ってさらわれた。
それほどまでに小さな声。

「・・・・・・・・・どうしてそんな風に笑うの?」

ぎゅうと右手を握り、拳を作る。
次第に力を込められる右手は血管が浮き出るほどに。
もう少し力を入れれば血が出るだろうという寸前で、奥歯がぎしりと鳴った。



「・・・・・・・・・・・・・・・・・殺してやりたい。」



「(クス)ぶっそうだねぇ。」

背後でかけられた言葉に英二はふっ、と自分の猛る思いを消した。
けれど、細めた瞳の険しさは消えない。
消えないまま、肩越しに振り向いて口を開いた。

「気配消すなっていつも言ってんじゃん。」

「そりゃぁ失礼。でも僕達の間に遠慮は無用・・・でしょ?」

そういって爽やかなまでの微笑を称えるのは、薄い蜂蜜色の髪を持つ少年。
整った顔立ちに、薄い色素の瞳。

 不二  周助


「危ないよ、英二。」

フェンスのぎりぎりの所に立って、あえてその境界線を踏み越えようとはせずに不二はまっすぐ前を向いて言った。

「ほっとけよ。」

冷たく言い放つその言葉は、英二のものではないように聞こえる。

達のこと見てたの?」

言ったら、一度瞳を前に戻したものをまた後ろに戻して立ちあがった。
ゆらりと風が動いたかと思うと、ひょいと軽々とフェンスを越えてみせた。
そんな行動はいつものことなので、不二もあえてつっこまない。

「アイツ、誰?」

かしゃりとフェンスの間に指を滑りこませて握る。
瞳は険しいまま。
見つめるのは二人の姿。

笑ってるの姿。

と同じクラスの鈴木君でしょ?」

「知らない。」

「(うわぁ、酷い)一応彼生徒会に属してるし、頭良いし、顔良いし有名なんだけど?」

「俺の方がかっこいいじゃん。」

「自分で言う?」

くすりと笑ったら、「何さ」みたいな目で不二を見た。
それがおかしくて不二はまた笑う。

「気に食わないな。」

そうぽつりと漏らすと、英二は胸ポケットからマルボロを取り出して火をつけた。
ゆらりと紫煙が空へと浮かんで、口に含むと息を吸う。

「匂いがつくとに気付かれるよ。」

微笑みながら、不二は英二の口から煙草を取り上げた。
その無駄のない行動に、英二は軽く不二を睨む。

「ほっとけよ。」

二度目のその言葉を聞いて、不二は苦笑した。

「嫌われるよ?」

「それは嫌。」

「じゃぁ、しょうがないよね。大会も近いし。」

「煙草一つぐらい吸ったって俺は負けないし。」

「随分強気だね。次回が楽しみだよ。」

「ヤ、期待しないで。」

淡々とかわされる会話は教室でかわされるものとは違う。
違うのは、英二の声の調子。
音の変化のない声は冷たく聞こえてしまう。

「ああもう、いらいらする。」

「だから、"殺してやりたい"?」

「・・・・・・・・・・・」

一体いつからいたんだ。
そんな事を思って不二を睨んだ。

そうして、瞳を閉じる。
暗黙が猫を包む。

「ラテ・ビオーサス、ラテ・ビオーサス、ラテ・ビオーサス・・・・(ぶつぶつ)」

「なに?それ。」

「呪文みたいなもん。」

言って、瞳を開けた。
開けられた瞳は穏やかさを取り戻している。
そこには琥珀色の瞳がただ、在った。


「落ちついたー。」

「凄いね、それ。」

「うん、結構効くよ。」

「なんて意味?」

「教えてあげない。」

「ふふ、そう。」



軽く会話を交わした後、しばし沈黙が流れた。
けれどその沈黙を嫌だと二人は思わない。
それが自然なことであり、気にする必要はない。



「ねぇ、英二。いつまで猫かぶってるつもり?」

不意に、口を開いた不二の言葉は嫌に冷めていた。
その声の調子を読みとって、英二の瞳の色も変わる。

「さぁ、いつまでだろ。」

「まさかずっと騙せると思ってるの?」

「思ってないよ。だけどさー、にとって俺は夢なんだもん。」

「夢?」

「そ。自分の理想を俺に求めてる幻想。」

「幻想は虚像だよ。」

「厳しい事言うなよ。彼女の夢をかなえてあげたいってのが心情じゃん?」

「そういうもの?」

「うん。俺の事は別に良いんだ。でも、俺のこと好きだし。も俺のこと好きでいてくれるし。」

「羨ましい限りだよ。」

「出来る事なら・・・もう少し夢を見させてあげたい。」

そう言う英二の表情はとても穏やかだ。
語る英二はとても優しさに満ちている。
だから不二は微笑んだ。

「そこが英二の良いところだよね。」

なんだか嬉しくて微笑んで言ったら、英二は「ム」として唇を尖らせた。

「不二は本当の腹黒だもんにゃー。」

「そうそう、英二はなんだかんだ言っても根が優しいもの。僕はなんだかんだ言っても極悪非道だもんね(にっこり)」

「(笑顔で言うなんてこの子恐いヨ!!!)」

あっさりと笑顔で言い放った不二を見て、英二は青ざめる。
確かに不二はこぉんな可愛くて綺麗な顔しているのに中身は真っ黒だ。
けれど、例え英二でもそれは口には出せない。

「時間が経てば経つほど苦しくなるのは英二だけど。」

「ねぇ、なんでそんな事言うの?」

鋭い発言だ。
不二はそう思った。

自分を射る英二の瞳は厳しい。
けれど、まっすぐ自分を見つめてくる。

不二にとって、その瞳を見れる事はなによりも楽しみなのだ。
例え趣味が悪いと言われていても、彼女であるが見れなくて自分に見れるものがあるというのが快楽だった。

「この前、英二S高の生徒ぼこぼこにしたでしょ?」

「覚えてない。」

「(苦笑)したの。」

「ふーん。それで?」

「結構根に持つタイプらしくて、この頃嗅ぎまわってるよ。」

「は、だったらまた返り討ちにしてやりゃー良いじゃん。」

「じゃぁ、大切なものにもっと目を向けるべきだよね。」

瞳を閉じて、微笑むその穏やかな表情から出たのは厳しい言葉。
それに、英二の表情が変わる。

「・・・・・・・・・・・・・連中はを狙ってる?」

「極めて僕自身の考えだよ。でも、さっきねちっこいって言わなかったっけ?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ご忠告さんきゅー。」

あえて根元には触れない不二の瞳を見て、英二は答えた。
答えたその表情に笑みはない。

「でも、見物だなぁ。」

「何が?」

くすくすと笑いを漏らす不二を見て、英二は不機嫌そうに眉を上げる。

「いや?英二の事を知ったはどうなるんだろうと思って。」

「ほっとけよ。」

三度目のその言葉は少し怒りと苛立ちが混じっていた。
けれど、それさえも楽しいと不二は口元を歪める。

「だってそうじゃない?だって今ここにいる英二はの幻想とぜんぜん正反対なものでしょ。」

「そんなに俺をいびって楽しい?」

かしゃん。


フェンスが鳴った。

不二の細い首の間に自分の指をフェンスで絡ませて挟みこむ形になる。
一気に二人の距離は縮まる。

前髪が触れ合うぐらいに近くなった瞳と瞳は、交じり合う。
交じりあって、見えない静電気が眼前散った。

「自分の事を棚にあげてよく言うよ。」

口元には、紅く光る月の如く。

「一見誰とでも親しくしてそうで、本当は誰も信用してないのは誰でしょう?」

くすりと耳元でこそばよく囁かれるのは、甘い警告。

けれど、そんな言葉にもひるむことはない。
表情は消えて、瞳はただただ冷淡に光るだけ。

「君もね。」

「信じてるよ。を。」

口元を弓張り型に吊り上げて、身体を離した。
そうしてきすびを返して背中を向ける。




「忠告どうもありがと。気に留めておくよ。」

「御武運を。」

ゆっくりと微笑む不二を背中に感じたのか、英二は軽く右腕を上げてひらりと手を振った。








































***********

******


ぺたぺたと上履きを鳴らしながらの教室へと足を運ぶ。
その間色々な人に声をかけられたので適当に笑っといた。

例え心の中で


てめーらうっせぇんだよ。消えろ。


とか思ったりしたが全然顔に出したりしない。

英二は基本的にはその性格と笑顔で友達が多い。
だから、声もかけられる事も多数。






進める足を突如止めた。
止めて、一呼吸開けた後また進める。

その瞳はとても厳しい。
と、いうか苛立っている。

ゆっくりとした足取りは悟られない為。
今すぐにでもその横っ面をぶんなぐってやりたい衝動を押さえながら愛しい人の名前をよんだ。

。」

その声に導かれる様には振り向く。
同時に話していた男も振り向いた。

「英二。」

嬉しそうに自分の名前を呼ぶ彼女を見て「可愛いなぁ。」とかちょっと悦ったりしながらも、某鈴木君の事を警戒することを怠らない。

「ね、今時間ある?」

「うん?あるよ。」

「んじゃ、資料室に行くの手伝って。」

「良いけど?」

「やりっ。」

笑ったら、も嬉しそうに微笑んだ。
そうして行こうとを促す。

それに応えてからは鈴木の事を見て「それじゃあね。」と、笑った。
その笑いかける笑顔にぴくりと反応しつつも、気にしない素振りを見せる。

「じゃーね、鈴木君。」

精一杯の努力で言葉に刺々しさを残すだけにして、微笑みかけた。




例え



  何てめーは人の女といちゃこいてんだ。


とか、思ったりしても。





























さ、今日から…じゃなくて、気をつけてね。」

「何を?」

「んー、だからぁ。夜道とか危ないじゃん?」

「あはは、おかしな英二。何を今更!」

「今更じゃないもんっ。ずっと思ってたんだもん(嘘だけど)」

「ありがと、でも私生徒会の仕事あるし。」

「……………生徒会?(ぴく)」

確か、不二が鈴木なんたらは生徒会に所属してるっていってたきがする。
いや、絶対言ってた。
間違いない。

てーことは、結構ヤバクない?

「(…………奴は処刑決定だな)」

「この頃忙しくて早く帰れないんだよ。」

「だから鈴木に送ってもらってんの?」

「………………なんでそこで鈴木君が出てくるわけ?(そうなんだけどさ)」

一トーン下がったその声に、も不穏な空気を感じつつもまだ気がつかない。
英二は英二で爆発しそうな怒りを押さえるので必死だ。

「(駄目だって、俺。こういうの攻め急いだら駄目だって不二も言ってたじゃん。二兎追うもの一兎を得ずだって………ん?なんか違うかな。て、まいっかぁ。)」

「ちょ、英二。さっきから何ぶつぶついってんの?」

「は?」

きょとんとしてを見たら、すっかり不審がっている目を向けていた。
それを見て、ああヤバイ。と、英二は自分を叱咤する。

「ラテ…なんとか?ずっと言ってたけど。」

どうやらずっとそれを口ずさんでいたらしい。
無意識は恐いものだ。

「ラテ・ビオーサスだよ。」

「何?それ。」

「おまじない(にっこり)」

「どういう意味?」

「うーんと、紀元前300年前ローマで使われてた言葉で“隠れて生きよ”って意味。」

「うわっ、何英二!頭おかしくなったんじゃない!?」

「し、失礼だにょ!!!」

半分瞳を伏せて、少し本当の自分を受け入れて唇に言葉を乗せた。
英二には似合わない頭のよさそうなその言葉に、は動揺を隠せないでいる。

「しかも隠れて生きよ。って…なによ。」

「うん、俺の信条。」

「英二は隠れてなんかないじゃない。」

「そだね。だから心を落ち着ける為のおまじない。」

ゆっくりと瞳を伏せて、英二は口元に笑みを称えた。

「嘘だ。」

きっぱりと、けれど強い口調でそう言い放ったの言葉に瞳をぱちりと開ける。
猫目の瞳があらわになる。

「なんでそんな嘘つくの?英二この頃変だよ。」

訝りげに、けれどもまっすぐに見つめてくるの瞳。
それを同じくまっすぐ受けとめて英二は目を細めた。

ぞくりともう一人の自分が目を覚ましそうになる。

「(・・・・・・ぁ、ヤバイ)」

こんな時、いつも決まって身震いする。
それは恐れというよりもむしろ武者震い。

彼女がもう一人の自分を探していると思うとたまらなくぞくぞくした。

「ホントに、なんでもないよ。」

困った風に苦笑したら、も少し困った風な表情をした。
それを見て、心の中の自分が嗤う。

「(甘い)」

「……………別に…隠し事してないんなら良い。」

「うん。」

幸せをかみしめつつ、英二はそう言っての手を握った。
釈然としないながらもも握り返す。

「そういや、資料室過ぎたけど?」

「え?」

「………………。」

「………………えーと。」

「英二?」


ひんやりとした言葉は、静かながらも英二を責めていた。

「ごめっ!急用思い出した!!!」

そういうと、脱兎の如く逃げ出して自分の彼氏を目で追いつつも身体では追おうとはしない。
どうせテニス部レギュラーの英二に自分は敵うはずもないし、追いつくはずもないと知っているから。

けれどまんまとはめられた自分に腹がたつよりも先に英二が憎々しい。
後でどんなし返しをしてやろうかと思考錯誤する。


「……………。」

そんな風にうんうんと悩むにかけられたのは涼やかな声。
振り向くと、鈴木が淡い微笑を称えて立っていた。

「どうしたの?」

「うん、実は調べたい事があるから放課後残って欲しいんだけど。」

にっこりと微笑まれるその笑顔を拒否する理由もなく。


けれど、を呼ぶその声こそ怪しいと気付くはずもなく。































一番気にしていたはずなのに、危機には気付かない。



そっと忍び寄る悪の足音に。

























































********

*****




嗚呼、だから英二のいうことをきけば良かったのに。
そんな事を思っては自分を叱咤した。
けれど、それも遅い。

今は下校時刻はすっかり過ぎて、夕焼けも終わりそうな時刻。

人生最大のピンチに陥っているのを身に感じつつもどうする事も出来ない。

「全く、ここまで来るのにどんなに時間がかかったか。」

そう冷ややかな声を漏らすのは、まぎれもない某鈴木君。

某ではない!!!(誰?)

「どうして?信じてたんだけど。」

ためらいつつも、厳しいその言葉。
気高いまでの態度に、鈴木はいっそう楽しげに目を細めた。

「君が菊丸の女だって知っていたけれど、なかなか近くに寄せてもらえなくてね。」

「英二関係ないじゃん。」

「それが大いに関係あるのさ、お嬢サン。」

自分を囲む多数の男共。
どうやら自分を無傷で返すつもりはさらさらないらしい。
その制服から見て、S高。
何故にS高がうちに用があるのかと思ったが聞くとややこしくなりそうなのであえて聞かなかった。

調べものがあるなんてとんでもない。
図書館か生徒会室に行くのだと思ったら連れていかれたのは人気のこない中庭。
現れたのは、大勢の他校生徒。

ぼこり決定。拉致リ決定。リンチ決定?


はぁぁぁぁぁぁぁぁぁ(溜息)




あの子猫ちゃんは一体なにをやらかしたんだと盛大な溜息をつく。











「それで?私に何かよう?」

「勿論、囮になってもらうのさ。」

「英二がなにかそそうでも?」

「そそうどころか、大暴れだよ。」

「?」

事態を知らないはきょとんと自分の頭に疑問符を上げた。

「ただの囮もつまらないから、美人で可愛いさんと仲良くしたいなぁって。」

爽やかなまでのその笑顔の背後で、男たちが汚い笑みを浮かべる。

「お断り。」

「君に選択権なんてないよ。」

そういって、ぐいと手首を掴んで上に上げた。

「っっ!!!」

「細い手首だねぇ…。」

「鈴木ぃ、お前だけ楽しむなよ?」

「分かってるって。そんなにがっつくなよ。第一このお穣さんの彼氏は今ごろテニスの真っ最中さ。」

「そんでもってその間俺らはこの女とお楽しみの真っ最中ってか?」

その下品なものいいに、ぎゃははと周りの男たちが声をあげる。
それを不快そうに見つめては片眉を上げた。

「さぁて、そろそろ相手をしてもらおうか?」

大柄の男がの腕をつかんだ。

「離してよ!!!」

「可愛いねぇ、抵抗する女を組み敷くのはいつもぞくぞくさせられる。」

「汚い顔を寄せるなっつの!!!!怒。」

「その強気な台詞、どこまで続くかなぁ…?」

「イヤっっっ!!!」

頭を振ったらさらさらとした髪が揺れた。
顔を反らしたその刹那…


「うごふっ!!!!」

「っ!?」

ありえない言葉を発して自分の手首が自由になったのを感じた。

それもそのはず、












突如現れた猫が恐ろしく強い殺人的な脚力で容赦なく大柄の男を踏みつけたからだ。

否、踏みつけたというかそのまま押し倒した……ふっ飛ばしたというほうが正しい。

頬にくっきりと足型をつけた大柄の男は木と衝突してそのまま昇天した(アーメン)

「100万年早い(ぎり)」

ぎしりと奥歯を鳴らして、まるで汚いものでもみるかのように見下ろす。
冷たい瞳とその言葉はその場の空気まで凍らした。

一番驚いているのはだ。
へたりとその場に崩れて、ただただ目を大きく見開いて変貌した自分の彼氏を見上げている。


「………………なんか嫌な感じがするって不二がいうから来てみれば…お前が親玉か、鈴木。」

一体不二はどこまで人間なのでしょう。
そんな疑問は今はおいといて。

怒りと蔑みに満ちた紅い瞳が鈴木へと向けられる。
半分青い顔をした鈴木は、怯えながらも声を張り上げた。

「――――――――――っ、や、やっちまえ!!!」

「甘ぇ!!!!!!」

背後から襲いかかる3人の男をまとめて回し蹴りで倒した。

「「!!!!!」」

ボーン、と、と鈴木はその場で凍る。
見事なまでの蹴り。死亡確実。

その後左から襲う釘入りバット(まぁ、ご丁寧vv)を右腕で受けとめ、そのまま右の男を肘鉄でノックアウト。そのまま左の男をすさまじく速い強烈なパンチで地獄へご招待。

「ごーとぅーざ・へる。」

静かな声音は恐ろしく冷徹で。
それよりも二度程下がる瞳はさらに氷の様に冷たい。

親指を立てて握った拳を思いっきり地面へと向けて下げた。




地獄へ落ちろ



日本語に訳すとこうなる。




「「「「「「(悪魔だっっ……!!!)」」」」」」


その場にいた全員がそう思った事間違いない。



































********

******


「ったく、二度とに触れんなよ。」

確かに大暴れだ。


ぽかんと、怒号のようにさっていった嵐の時間。
血と汗が飛び散る。ああ、素晴らしい(じゃなくて)

当然のことながら英二の逆鱗に触れたS高の生徒達に情けをかけるはずもなく。
そこには人の山が築かれていた。



ふと、その刺々しい空気が和らぐ。
そうして振り返った瞳はどこか怯えていて。
琥珀色の瞳は不安で一杯だった。


まるで捨てられる猫のように。

震える睫毛がまっすぐとただ一人を見つめた。

…平気?」

気遣う声はどこか震えていて。
ゆっくりと足を伸ばしたけれど、どこか戸惑っていて。


指し延ばした手はおずおずとしていた。







先程までの英二はどこにいったのよ。




そんな事をは思う。
これでは本当に二重人格ではないか。

そんな事を、思う。

は溜息をついて英二の手を取った。
どこか冷たいその手の平を、手に取る。

「!」

頬を赤らめてあらかさまにびっくりする英二を見て、更に溜息をついた。
これでは責めるものも責められない。


どうして黙っていたの?

あれは全部嘘だったの?

夢だったの?










でも、本当は分かっている。


自分が英二を追いつめた。

私が夢を見るから夢を見せようとしてくれた。







だって






英二はこんなにも私に優しいじゃない?











「英二は随分強い子だね。」

微笑んだら、ますますその顔を赤らめた。
本当に、先程までの悪魔的顔はどこいったんだ。

今目の前にいるのはまぎれもない自分が好きな英二の姿。

これも、英二。

あれも、英二。



それなら










「どっちも愛せば良いだけの話じゃない?(にっこり)」

「………………理解ある彼女で助かった。」

「でも、夢壊されたから一週間手出し禁止ね。」

「そんなっ!!!俺ずっと我慢してたのに!!!(もう解禁じゃないの!!??)」

「絶対禁止!!!!!!」





どうやら猫殿の先は長そうである。













―――――――
ふいー、書いた書いた。黒菊。
なんだか最後がしまらないですがいっかぁ。
ごめん、長すぎて途中で力尽きたのが本音です(駄目じゃん)

return  挿絵が見たい方は