― 崇高性 ―




私は別に青学のマネージャーとかそんな大それた事はしていなくて。
だけど、何故かテニス部の人達とは気が合った。
手塚も、不二も、英二も、乾君も、大石君も、タカさんも。
そのあと、小生意気ルーキーに、蛇に、怪力馬鹿を紹介してもらった。
みんなそれぞれ個性が合って、私はすぐに打ち解けた。
テニス無しでもこんなに仲良くできることに私は感謝しなければならない。
何故って
全校生徒が羨むポジションに私は居るから。



まぁ、そういう事もあってか、最初は嫌がらせとか多かった。
それでも私はこのポジションは好きだし。
居心地良かったから、うんまぁ、無視。
次第に私をねたんでいた子達も、私は本当に友達としてか接していない事を知って、否、気付いてくれて私への風当たりも弱まった。

あぁ、良かったと思う。
恋愛感情なんて無意味だ。

ていうか、私は本当に女なのかな。
だって周りにこんなレベルの高い異性が沢山居るのに、全然全く心踊る事がないなんて。
そりゃ、かっこいいと思うよ。
だけど

ただ、それだけだ。

今のままで良いじゃないか。
彼氏なんぞ作った日には、きっと毎日がうっとうしい。
彼氏に合わせなきゃいけないでしょ。
彼氏以上に友達が大切だし、優しいから。

だから、そんなものは必要ない。

必要ないもののことは、考えないのが私の信条だ。



はっきり言って、テニスに私は興味がない。
だけど、友達を応援しに行く事はたまにある。
テニスをやっているときの彼らはまた違った顔を見せてくれる。
私はうっすら微笑んで見ていればそれで良い。







そんな事を思っていたときだった。








初めて跡部景吾という人物を見たとき、はっきり言って驚いた。
かっこいいとかそういうもの以前に、人を惹きつける「何か」みたいな物を感じた。

崇高性

そんな言葉があってる気がした。

私は捕らわれた様に目を離すことが出来なくて、跡部君はずっと前しか見てなかったけれども。
視線は私なんかに向けられる事はなかったけれども。


その感情が、恋愛のものだとは思わなかった。

だけど、




彼の存在感に惹きつけられたのは、確かだった。






それこそ





地球の引力によって引きつけられる    惑星のように。









私は、分かりやすいのかな。
すぐに、不二にばれた。
そのあと手塚にばれた。

くそぅ、不二はなんで言うかな。
て、不二を睨んだら「手塚が自分で気付いたんだよ?」とかにっこり笑顔で返された。
てか、普通にあの天然ボケが気付くわけないでしょうが。
とか、言ったら。
「手塚にとっては他の女子とはまた特別な人だし、跡部も手塚にとってまた特別な人だから、分かったんだよ。」と、またにっこり返された。






「じゃ、不二はなんなのさ。」

「僕はほら、天才だから。」

「それ関係ない。」

は分かりやすいよ。」

「はいそれ嘘。」

「あはは、まぁ、僕は勘が良いから。」


確かに、不二は勘が良い。
だけど、変な所を勘付かないで欲しい。



だってさ、この感情の意味を党の本人でさえ扱えきれてないから。



「だけど、跡部はよしたほうが良いよ?」

「なんでさ。」

「だって性格上問題あり。」


そうそう、そのあといろんな話を聞いた。
あの容姿じゃしょうがないとおもうけど、なんでも家が金持ちなんだと。
テニスが出来て、かっこよくて、お金持ってると言っちゃ、そりゃぁ女に不自由はしないでしょうよ。

とっかえひっかえ、今に学校中の良い女をむさぼり尽くすとか、話を聞いた。
それでも長く続かないのは。



女のほうが束縛したがるからだと。



でもそんなん無理だ。
良い男が自分の彼氏なのに束縛しないでなにをしようか。
嫉妬しないでなにをしようか。
浮気を許して、黙って見てる。
必要な時だけ愛情を注ぐなんて。


そんなの



他のキープとみんな一緒だ。






「そんなん、意味ないじゃん。自分は特別じゃないよ?」

「そうだね。」

「他の女といちゃつくんだったら自分の存在価値ってなんなの?」

「そう思うから長続きしないんだよ。」





でも、分かる気がする。
だれにも捕らわれない。


崇高性




その言葉は彼にとても似合う気がする。






手塚にも言われた。


「跡部はやめとけ。」

「めずらし。そんな事言うんだ。」

「・・・・・・・・・・。」

手塚はあまり話さない。
だけど、それは彼の性格であり、無理に強要するのは嫌だった。
そしたらなんだか仲良くなれた。
人間って不思議。

「なんで?」

ためしに聞いて見たくなる。
跡部君の事はなんでも知りたい。
今はただ情報が欲しい。
私が彼を見たときに感じたものは

一体なんなのか知りたいから。


「あいつの女癖は誉めたものじゃないぞ。」

「それ、不二にも聞いた。」

「不二はなんて言ってた?」

「"僕は絶対反対゛」

「あいつらしいな。」

あ、笑った。
今、少しだけど、かすかにだけど。
笑ってくれた。
ふ・・・と、笑う手塚は綺麗だと思う。
前をそれを言ったら頬を赤くして黙ってしまった。
うん、つまり機嫌が悪くなったんだけど。
なんで良いじゃん。誉めたのにぃ。

「だけど俺も同じ意見だ。」

「数少ない女友達の恋を応援してくれないのですか。」

ちょっと苦笑気味に私は言う。

「お前が傷つくのは見えてる。」

「ははっ、私はそんな手塚が好き。」

言ったら、ちょっと驚いた顔をしたけど、また私の好きな笑い方をしてくれた。
"仕方ないな゛と、言ってくれた。
だけど、やっぱり反対だってさ。なんだよう。

てか、この感情がなんなのか私は分からない。

手塚も良いと思う。不二も良いと思う。
だけどなんだか違う気がする。
でも手塚にも似たものは感じる。


崇高性


手塚は静かに漂う水面みたいだ。
水滴を一粒落としただけでわんわんと輪がひろがってゆく。
それが凄く綺麗なの。
静かなんだけど、かがやく水色のイメージ。

跡部君のは月みたいだ。だけど太陽みたいでもある。
金色に輝くくせに、中身は銀なの。
太陽と月を両方もったようなイメージ。

















そして今。
私は乾君の隣で歩いている。
乾君は背が高い。長身だ。そんでもってかっこいい。
眼鏡が良い。
桃君を完膚なきにぶったおして、あっさりと薫ちゃんをパートナーにした。
だけど、乾汁には研究を怠らない。
いやはや、感心。
そしてレギュラーの皆さんご愁傷様。
乾君の買い物は好きだ。
私の知らない世界がある。
一緒に付いて行くといろんな所に連れて行ってくれる。
だから好きだ。
今日は、なんだかよく分からないけど市場に言った。
マグロの頭をかってった。
あははん、一体なにに使うのかね。
あと、なんだか怪しいスーパーに行って、怪しい調味料を買ってるのに付き合った。
あははん、一体なににいれるのかね。

言っとくけど、味見はしないよ?

そういったら、「他にさせるから良いよ。」て、言われた。流石乾君。

私はふと気付く。
乾君になら沢山聞けるかもしれない。
だって彼データ―マシーンだし。
なんていったってデータ―マシーンだし(二度も言うな)


「ね、乾君。」

「跡部の事?」

「わお、凄いね。ドピシャン。」

「何が聞きたい?」

「全部。」

「全部?」

「うん。」

跡部の事好きなの?」

「うー―ん分からない。それを見定める為に乾君に聞いてる。」

「嫌だって言ったら?」

「折角買い物付き合ってあげたじゃん。」

が付いてきたいっていったんじゃなかったっけ。」

「それ嘘。」

「嘘っていうか・・・。」

「なんでもいいから情報をよこしな。」

「(ついに強迫・・・)跡部はあまりお勧めしないよ。」

「みんなそう言うんだよね。」

「それはそうだと思うけど。」

「なんで?」

当然の様に質問したのに、乾君は私に視線を向けると、少し黙った。
そして、かすかに笑った。

「みんなの事が好きなんだよ。」

「別に告白が聞きたいわけじゃないんだけど。」

「そうやって普通に返すよね。」

「だって友達の好きじゃん。真剣に返す必要はナッシング・・・でしょ?」

「正解。」

なんだか乾君は楽しそうだ。
なんでかな。

のことが心配なんだよ。」

「乾君も?」

「そう。」

「ふー――ん。とりあえずありがと。」

「いえいえ。」

「で、なんで心配なの?」

が変な男にひっかかりしないやしないかって。」

「それは保護者じゃん!!」

「そうとも言う。」

「やだよ!!保護者がそんなにいたらお嫁に行けないよ!!」

「あはは、は本当におもしろいなぁ。」

おもしろいのはあんたの方だよ。
てかそんなに真面目に返さなくても良いんだけどね。
てかなにげに言ってる言葉が棒読みなあたり気になるんですけど。

「跡部はそこらへんの女じゃ扱い切れない人物だよ。」

「知ってる。だって崇高な人だもん。」

「ナニソレ。」

「私がそう名付けたの!!」

えへへん。と、私は乾君を見上げてにやりと笑った。
きっとこの意味を話せば長くなってしまうだろうから私は省略した。
























その時、見てしまった。















跡部景吾の姿を私は見た。











私の目はまた釘付けになって。
捕らわれた。







「あ、噂をすれば。」


ぎゃぁ!なんでそんな事言うの?
言ったら気付いちゃうじゃん。


その時、どうして私がそんな事を思ったかは分からない。
だけど

何故か関わりたくないと思ってしまった。
遠巻きに見ることが一番良いと私のなかの誰かが答えを出したから。


跡部君は乾君に気づいて、立ち止まる。
乾君も、立ち止まる。

隣りには、綺麗な人がいた。
長い髪に、端整な顔立ち。
超絶美人。
流石帝王。連れてる人が違うよね。

別に乾君を卑下するわけじゃないけど、同情するよ。
ごめん私で。

跡部君は別に立ち止まる気はなかったらしいんだけど、隣りの彼女が組んでる腕を引っ張って、私のところに連れてきた。

みればみるほど綺麗な人。






だけど


あの時感じた崇高性は感じられない。




それは、やっぱり特別な人だけしかもてないものだと思う。





「よぉ。」


そういえば、初めて声を聞いたかも。
手塚が肩を痛めた試合には見に行けなくて。
そりゃぁ、跡部君が試合をするって言うからみたいのやまやまだったんだけど。
ちょっと失敗して補習だったんだよ。
全然自慢出来ないけどさ。

そのあと、手塚が肩を痛めたって聞いて。
九州行くって聞いて。





私の心情は複雑だった。






まぁ、それはさておき。
今は跡部君が目の前に居る。
初めてこんな間近でみる彼はやっぱり綺麗で。
薄茶色の髪の毛に、透明な瞳。
泣きボクロがなんとも色っぽくて、それなのに体つきはしっかりしてた。
声はハスキーで、やっぱり思ったとおりの声だった。



「手塚の肩の調子はどうだ?」

「とりあえず、療養かな。」

「そうか。」


自分がそう仕向けたくせに、なんだか心配そうな感情がふとよぎったのを私は見逃さなかった。

試合が終わった後、
傷ついた手塚に私は言った。







「跡部君はひどいやつなの?」

「試合ではそういうの関係ない。」

「だって、手塚はこんなに酷い怪我してるのに。」

「人の弱点をつくのは当たり前だ。」

「憎くないの?」

「憎む?どうして。」


私は、手塚の言ってる事が分からなくて。
自分を故障させた人間を特に憎くもないと思うなんて。

だってテニスは手塚の全てなのに。

その時、私は初めて跡部君が嫌いになった。

大好きな手塚を傷つけた跡部君が許せなかった。


やっぱり噂通り冷酷無比な人間なんだと、私は確信づけた。


そしたら手塚は

「どうしたら伝わるんだ。」

とか言って困ってた。

自分は反対したくせに。
それなのに跡部君の弁護につくわけ?


やっぱり良い奴。








そんな事を思ったことを、フラッシュバックのように思い出した。
だけど、今なら分かる。
戦ったもの同士が分かるもの。
憎むとか、そういうんじゃない、きっと。
お互いはずっとずっと良いライバルなんだと、跡部君を見てれば分かる。

私はスポーツの世界に足を踏み込んでなかったから、分からなかった。
今でもちょっと、分からないけど。

だけど、お互いが納得してるんだってことは分かる。








「だけどやられたぜ、まさかこの俺様が負けるとわな。」

「お前自身は勝っただろ?」

「ばぁか。氷帝が俺自身なんだよ。」


ふ・・・と、口元を吊り上げて不敵に笑う。


あう、やっぱり崇高な人はどんな表情でも良いわよね(また言ってる)


そしたら、今までずっと乾君に向けられてた視線が、私に向けられた。



「・・・・・っっ・・・・(ビクッ!!)」

瞬間、体に走ったもの。
電撃に似たものだった。


ていうか、睨まれた(なんで!!)


「跡部、あまり睨むな。がおびえてる。」

「睨んでねーよ。」

「(睨んでるよ!!睨んでるよ!!)」

てか何故に初対面の人に睨まれなきゃいけないわけ!!
そりゃ私は跡部君を知ってるよ。
だけど跡部君は私のこと初めて見たんでしょ。
なんで睨むんだ!!

「乾君・・・・こわい・・・。」

思わず耐え切れなくなって背中に隠れてしまった。

「まさに蛇に睨まれる蛙って感じかな。」

「てか冷静に判断しないで!!てか私はそんな蛙ごとき価値しかないわけ!?」

「例えだよ、。それにそんな事言ったら蛙に失礼だよ。」

「あくまで蛙の弁護かよ!!」

非難の声を乾君に浴びせた。
そしたら、跡部君の横に立っていた美人さんがくすくすと笑った。
え、何?おかしいこと言った?

「お似合いなのね。」

はぁ!?冗談じゃないよ!!
てかお上品ですね。流石氷帝。

「乾君がお似合いって私は別に乾汁には興味無いんだけど。」

「え?」

、論点が激しくずれてるよ。」

「え、嘘。」

背中のシャツをくしゃくしゃにしてごめん。とか思いながら私は乾君の後ろにまだ隠れてた。





痛い、視線が痛い。

何故か跡部君はますます機嫌が悪くなってる。

なんでだ―――――――――――!!

はっ、もしや私が彼女との仲を邪魔したから?てか絶対そうだ!!!



これ以上この場にいると悪い気がして。
私は恐る恐るその崇高な瞳を見た。

「えと、・・・・・・・・・ごめんなさい。」

「なんでてめーが謝る。」

「てかなんでそんなに恐いんですか!?私を睨んでるわけは何!?」

「ごめんね。景吾いつも不機嫌そうだから。」

「といういか、同い年なのに景吾を使うって面白いよね。」

「初対面の人にタメ口使うほどなれなれしくないよ!!」

うわぁ!!なんだかしらないけどまた眉間にしわがよってる!!恐いよう。
必死に彼女がなだめてる。ごめん、すぐ去るから。
ていうか、
景吾。景吾ですか。呼び捨てですか。
あーあーあ、もう決定。
私の失恋決定。




・・・・・・・・・・ん・・・・・・・・・・?




「しつれん・・・?」





思わず声に出してしまった。
声に出すと、はっきりとする。


しつれん、て。

私が好きみたいな言い方だ。





人差し指を口元に持って行って、唸ってる私を乾君は横目で見た。



?」



呼ばれて、はっとした。

そうだ。とにかく今はこれ以上彼女に迷惑かけるのはいけない!!

「あ、ごめん。なんでもない。乾君、かえろ?」

「え、良いの?」

「うん。なんか・・・もう、いい。」

よく分からないけど気分が沈む。
それでいいのだと思う自分がいて。
それでいいのかと尋ねる自分がいる。



「それじゃぁ、俺達はこれで。」

「あぁ。」


短く返事すると、となりの彼女に「行くぞ。」と、言った。
美人な彼女は私達に軽く会釈をして跡部君の後を付いて行った。


私はそれを見つめていて。
物足りないような感情に捕らわれていた。


、平気?」

「え?なんで。」

「ショックじゃなかったの?」

言われて、私は笑った。

「乾君はやっぱり優しいね。でもありがとう。」

「それは平気ってことかな。」

「うん、とりあえずはね。なんだかふんぎりつきそう。」

言ったら、乾君が私の頭をよしよし。と、撫でてくれた。
やっぱり青学テニス部は良い奴ばかりだ。

きっと明日その事を不二とか手塚に話したら、ちょっと安堵した様子で慰めてくれるだろう。



これでいい。


私の気持ちの正体がわかっただけで良いじゃないか。


きっと


みんな優しく私を慰めてくれるはずだから。






崇高な人は


やっぱり崇高だから。


付き合う人も、連れ歩く人も、"それなり"に崇高で。


遊びはそれこそキープでしかないという事を今日学んだ。


そういう世界があるって言う事。


私は知らなきゃならない。
















「乾君、なんか奢ってよ。」

「……………跡部が追ってくる確率は80%だけど?」

「は?」





眼鏡の奥にひそむ瞳がまっすぐ前を見てた。

なにいっとんじゃ、コイツは。








けども、私の肩に手を置かれたのはすぐ後のこと。
その力強さに驚いて振り向いたのはすぐ後のこと。







「…………・っ……・はぁ。」

「ほらな。」

なんだか走ってきたようで、息は少し切れている。
だけど崇高な跡部君には似合わない気がした。

「乾。」

「何。」

「この女、借りてくぞ。」

「どうぞご自由に。」

「っええ!!!???」

ってぇあんたが許可するんですか?

そのままするり手首を掴むと私をひっぱった。
私はひらひらと手を振る乾君に目をやるけれどどんどん小さくなってゆく。










なにがなんだか分からない。
一体私の身に何が起こってる?








跡部君はやっぱり足が長いから歩幅が大きい。
てかつい行けないだろうが。









「あ…跡部君・・汗。」

「なんだ。」

「どこへ行くつもりですか?」

「そんな事お前が決めろ。」


なんて人だ。話しに聞いたより性格は悪い。
ああ、そう話してる間もどんどん人とすれ違って行く。
すれ違う人は跡部君をみて頬を染め、そして私を羨ましげに見る。
てか、そんな風に見るならこの人止めて下さい。









「っつー――――――――か、止まれぇぇぇぇ―――――!!!」



は、とする。
しまった。思わず地が出た。


そしたら跡部君は驚いた様に足を止めた。
くそう、ギャラリーの視線が痛い。







開口一番




「お前は目立ちたいのか?」




それかよ。それですか。









「別にそう言うわけじゃないんですけどね。でもま、崇高なる人物には分かりはしないでしょーが。」

「何訳分からない事いってやがる。」

「どうせ私は訳分からないですよ。てか私自身が分かってるのでご心配なく。」

「つーか、その変な敬語を止めろ。」

「つーか、誰のせいだと思ってるんでしょうか。」



む、とした感じで跡部君を見上げた。
けっ、やっぱり良い男。
しかし、まぁ。おかしなこともあるもんだ。
さっきやっと区切りを付けたつもりだったのに。




「で?」

「もう少し歩調をゆっくりしてもらえる?」

「なんで俺がそんな事しなきゃならねぇ。」

「また崇高なる人物はそう言う事を…。」

「だから崇高なるってなんだよ。」

「気にしないで。てか私跡部君みたいに足が長くないから。」

「俺に女に合わせろと?」

「先にどっちが喧嘩をしかけてきたのかな。」

「………仕方ね―な。」

それはこっちの台詞だい。
仕方ないなぁ。ふぅ。


少しゆっくりになった歩調に合わせて、私は隣りに並んだ。
しばらく沈黙が続く。
跡部君にとって初対面の私は、何を話せば良いのか。







「乾とは付き合ってるのか?」

「は?違うよ。」



突然口を開いたと思ったらなんでそんな事を聞くんですか。
もしやそれが知りたかったんですか。
てか世界中の女がもしや自分のものだと思ってるとか?



「だったらとっくのとうに地球は滅びてるわね。」

「だから、最後に思ったことだけ口にするのヤメロ。」

「だって何話して良いかわかんないんだもん。」

「意味訳わからないだろ。」

「そうだね、気を付ける。」


ってぇ!!自分!!なに和んでるんだよ!!!

うー――ん・・………うー―――ん………・?





「跡部君の彼女…美人だったね?」





うっわ!!また睨まれた!!
てかなんでそんな不機嫌そうに「ああ?」とかいう目で見るんですか!!!
そりゃぁ話のネタに困ったからってそんな事を言った私もどうしようもないけど!!!



怒らなくたっていいじゃんよ…

「なっ、なにさ!!なんで怒ってんの!?」

「あんな女彼女じゃねぇよ。」

「ぎゃぁ!あんな女とかぬかしやがったよ!!あんな美人な人に!!」

「この俺にそんな言葉使いすんのはお前ぐらいだぜ。」

ふっ…と、それはそれは邪悪な感じで口端を跡部君はあげた。
ひぃぃぃぃぃ………・こわいこわい!!!泣。号泣。

「てゆーか、同い年に気を使ってもしょうがないでしょ。」

「まぁな。」

「けど、それをしないって事はみんな跡部君の前では良い女でありたいんだね。」

性格どうしようもなくても付き合って欲しいほど凄い人なんだ。


なんてたって崇高なる人物だしね!!!(得意げ)




「お前は?」

「うぃ?」

「ぷっ、なんだその返答の仕方。」


うわっ、笑った。跡部君が笑ったよ。
手塚並に驚きだ。
手塚並に綺麗だ。



「なんだよ。」

「折角笑ったのにまた不機嫌だよこの人は。」

「うるせぇ。」


うわっ、今度は照れてる。照れてるよぅ!!
全国の跡部ファンの方々見てますかぁ?






「初対面の人に随分なれなれしいね。」

「初対面?それは違う。」

「?」

「お前、試合に来てただろ?だから俺は初対面じゃねーよ。」


本当に日本人かな。灰色が混じったような茶色の瞳が私を見てた。
私はその時本当に驚いてしまって。
でも、逆に嬉しくもあった。


私も初対面じゃないけどね。


とか思ったけど言わなかった。
逆に別の事を言った。


「跡部君女の子の友達居ないでしょ。」

「ああ?」

「だってきっと、みんな跡部君の彼女になりたいんだもんね?」

にっこり笑ったら、ゆっくりと目を細めて考える素振りをした跡部君。

「そんなん奴らに聞け。」

「あはは。じゃぁ、私が跡部君の友達第1号ね?」

「はぁ?」

「友達になろ?」

面と向かって友達になろとかいう奴いるかよ。
とかいうふうに言われてる気がした。
その目が語ってた。

「(俺は友達じゃなくて別の方が良いっつーの…………何の為に目をつけてたと思ってんだよ。)」

つーか、この俺がここまでしてやってんのに分からない女もめったにいない。
しかも友達になろうとか言いやがる。

視線を下げたら満足げに笑うまだ名も知らない女がいた。

「(まぁ…………………いいか。)」





跡部君はふぅとため息を付く。
私は嬉しい。
別に彼女になりたかったわけじゃない。
恋心だと知ったけれど、友達のほうがずっといい。
彼女は分かれてしまうかもしれないけど友達だったらその確率は随分減る。
そんなん青学テニス部でよぅく学んだ事だから。



「で、どこに行くつもりだったんだよ。」

「乾君との買い物はもう終わってたんだ。跡部君は?」

「途中。」

「じゃ、そこいこ。」

「・・……………良いのか?」

「なんでさ。友達に遠慮は無用だよ。」

「ラブホだぞ。」

「っっっっばかぁ!!!!!!」

「なんで怒るんだよ!!お前が言ったんだろ!!!」

「つー――――か昼間っからなにしとんじゃあんたらわー――――――――――――!!!!!」





人ごみの中、私の絶叫が響き渡る。
くっそ、だから嫌なんだよ崇高なる人物はさぁ(まだ言ってる)
やっぱりやっぱり性格は最低だ。先が思いやられる…頭痛いわ。


「仕方ないなぁ!!私が今時の中学生の遊び方をおしえてあげよう!!」

「疲れそうだから嫌だ。」

「跡部君のほうがずっと疲れるよ!!!」

「俺は別に疲れねーよ。女が勝手に…。」

「ギャ―――――――!!!ストップストップ!!!!!」



















―――――――――――――――――――――――――――

跡部たまは普通の遊びをしてないよ。
てか中学生かよ。
まずは、お友達。からね?


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