― 食べない人 ―



その部屋に入って少し唖然とした。
一人暮しだって事は聞いている。
だけどこの様はどうだ。


「もー、突然来るなんて言わなきゃきれーにしといたのに。」


そう言って千石はがさがさと雑誌を片付け始めた。
足の踏み場もない・・・とは言わないが汚い。

「お前・・・きったねーな。掃除してんのか?」

「酷いなー。これでもしてるよ。」

結構千石は自分の事になると横着だ。

「どーぞ。入って。」

「入れねーだろ。」

「入れる入れる。こことか。」

ぽすぽす。と、空いたスペースを叩いて示した。
いや、しかしこれは酷すぎだろうが。

俺は仕方なく(というか突然家におしかけたのは俺だが)そこに座る。
千石はまだ片づけをしてる。

「この部屋・・・。」

「あー。結構良い物件だったんだよ?跡部君も一人暮しだよね?」

「あぁ、まぁな。」

「てか跡部君家凄いよね。高級マンションの最上階。」

「あぁ、まぁな。」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・さっきからそればっかりですが?」

「ここは、俺の家の物置と同じ広さだ。」

「なにげ失礼ですよ。跡部君。」

「気にするな。いつものことだろ。」

いったら、千石は溜息を一回つくとまた片付ける。
てか、どこをどーしたらここまで汚くできんだよ。

「亜久津にも良く言われるんだけどね――。」

「・・・・・・・・・・・・亜久津もよく来るのか?」

「ん?うん。」

ちりりと胸が妬かれる気がした。
はっ、この俺をここまで本気にさせるなんて大した男だぜ、千石よぉ。

俺はまだ片付けてる千石の腕を掴んだ。
茶色がかった瞳がこちらを驚いたように見る。
俺はそのまま腕を引く。

引力に従って逆らうことなく千石は引かれた。
あぐらをかいてる俺の膝の上にぽすりとおさまる。


一瞬、時が止まる。

「・・・・・・・・・・・・えぇと。」

「今更、だろ?」

「ですね。」

しばらくはその状態のままテレビを見てた。
千石はというとぼーーっとテレビを見たり、窓から見える空を見てたりした。
ふと髪の毛をいじってみたりしている。
別に、一緒にいれればそれでいい。
例え言葉は交わされなくとも。













ぐぅ。











どっちの音かと聞かれれば千石のほうだ。
ったく、緊張感のない奴だな。
いや、俺の前で緊張されても困るか。





「・・・・・・・お腹すいたね?」

「お前がだろ。」

「ですね。」



千石はむくりと起きあがると、どうやら台所らしい所まで四つんばいになってはっていった。
・・・・・・・・・・・あれは・・・台所といって良いんだよな。
妙に暗くて、流しの面影もない場所を、俺は台所とみなした。


ひらきを開けてしばし止まる。
果たしてあの中にまともの物が入っているかどうかは謎だ。



ぽりぽりぽり・・・


なんの音だよ。


「おい、何くってんだ?」

「きのこの山。」

「(がくぅ)そんなものしかねーのか?」

「いつもは亜久津が作ってくれるんだけどね。」

「また亜久津かよ。」

「あれ?嫉妬?」


なんだか嬉しそうに振り向いたので「ちげぇよ。」と、言ってやった。
それでも、まだ嬉しそうににっこり笑ってる。

また四つんばいで戻ってくると、あぐらの上にちょこんと座った。


「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・ぁ・・・・。」

「今度はなんだ。」

「そーいや二日間ぐらいごはん食べてなかったや。お腹すくはずだよねーー(あはは)」

「!?」

「・・・・・跡部君?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・っっ・・・・・馬鹿かお前は――――――――――っっ!!!」

思わず怒鳴ってしまったら、大きな瞳が更に大きく見開いて固まってた。
とにかく凄く驚いているようでフリーズしてる。

「・・・・・そんなに怒るなんて・・・びっくりした。」

「当たり前だろ!!この馬鹿!!!」

「えー、馬鹿だなんて。」


本当に頭痛ぇ。こいつ、よく今日まで生きてたよな。汗。
今日ばかりは嫉妬深い俺も(認めてる)亜久津に感謝しなきゃいけねーな。




・・・・・・・・



ぎゅぅ。と、千石の身体を抱き締めた。
その身体はきゃしゃでいまにも壊れそう。
何度も愛したこの身体の何処まで    俺は知ってるんだ?


「・・・・・・・跡部・・・くん?」

きっとこいつが俺といる時いつもの感じを見せないで静かなのはきっとパワー補給なのだろう。
そんな事を気がついた。
それは俺だけの特権であり、千石のそんな位置までこれたことに嬉しさを感じていたものだが。






「・・・・・・・・・・・・・こうしちゃいられねー。」

「・・・・は?」



そうだ。こんな事で喜んでる場合じゃねーよ。
そのうちマジで死んじまいそうだし。


「お前、今日から飯の時俺の家に来い。」

「え?」

「一人で食うから駄目なんだよ。お前の場合。」

「・・・・・・・・跡部君も一人では?」

「ばぁか。お前と一緒にするな。」

「(そんな事いって一人寂しがるくせに)」

「・・・・・・・りょーかいです。」

「よし。」



あーあ、こうなったら俺も料理覚えねーといけねーじゃねーか。
まぁ、俺様にできねーことはねーが。
料理ぐらいちょろいぜ。


「その代わり、駄賃は払えよ?」

にぃ。と笑って千石に近づく。
抱き締めてる腕にいっそう力をこめた。

「・・・・・・・・・・・マジっすか。」

「今更、だろ?」

「ですね。」

ふ・・・と嗤うと、俺は千石の唇をふさいだ。


































―――――――――――――

「あー、跡部君じゃーん。」

試合会場で跡部を見つけた千石は嬉しそうに駆け寄った。
氷帝メンバーがいるなかでもおくびもしない。
氷帝メンバーも今更驚かない。

そして山吹中のメンバーももうそろそろ驚かずに、溜息をついて千石の後に続く。




かくして、跡部様の第一声は―――


「千石、今日お前朝飯食ったか?」

「・・・・・・・第一声がそれ?」

「食べたのかどうか聞いてるのは俺だぞ?」

「食べたよ。」

「よし。」



妙な会話にその場にいた全員がフリーズした。
二人にとってはもう珍しくない会話でも、他人から見たら奇妙だ。

言ってはいけない事をいってしまうのは、いつも侑士の役目である。



「・・・・・・・・跡部、一言いってもえぇ?」

肩に腕をまわして、あいた手のほうでこめかみを押さえた。
跡部はその行為になれなれしいと言わんばかりに顔をしかめる。

「なんだ。」

「それじゃぁお母さんやで?」

「ああ?もう一回言ってみろ。」

「いや、だからな・・・(もう一回言う必要があるんか?)」

「あー、それ分かる。だけど、跡部君料理も上手いよね。」

「当然だろ。俺に不可能はないぜ。」

「さっすがーーー。」

「(ふん)」

「(おかしい・・・こいつらめっさ危なっかしいカップルやで)」

天下の跡部が料理?
そんな事を一同思っただろう。



恋の力って凄いな・・・・・・そう侑士は思ったのであった。






















―――――――

初めて書いちゃったー。
なにげ跡千好きでした。
でもうじうじして書けませんでしたが書いて満足。
跡部保護者じゃん。これじゃゴクアクに似てるや――――。あはは。


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