どこからともなく現れて
訳のわからない、意味不明な事を言う。
けれど、困ってしまったその度に、道を、照らす。
灯火―――――のように。
それでも最後にせせら笑う「チェシャ猫」

出口はどこにも、ない。
入り込んでしまった迷路をさまようだけ。
どうして初めに彼に会ってしまったのか。
第一黒い毛皮を着て、どこがどう「チェシャ」なのか。
本当に訳がわからない。
塀の上に上っていたチェシャ猫は眠たげな目で私を見る。
そして一度大きく伸びをして、ふわぁ。とあくびをした。
「ここは、君のような人間がくる所じゃないよ。お帰り。」
帰れといわれても、どうやって帰ったら良いのか分からないし。
第一白ウサギを探している。
まだ、帰れない。
「仕方ないなぁ。それじゃ、向こうに行ってごらん。今はティ―パーティーが開かれているはず。きっと楽しい時を過ごせると思うよ。」
指差したその先に、光が灯る。
まるで私を導くように道が現れる。
「パーティ―って?」
「一年中お茶会をしてる奴らのこと。俺は「いかれたお茶会」言ってるよ。」
「・・・・・・・・いかれてるの・・?」
「ここの世界の住人はみんないかれてるんだよ。」
「それは思う。皆言ってる事がおかしいもの。」
言うと、チェシャ猫はその金色の瞳をすぅ。と細めた。
「さぁ、もうお行き。俺はまだ眠りたいんだ。」
「それじゃ、寝れば良かったのに!」
また塀に寝そべって、あくびをする。
「君が予定よりも早く来ちゃったから。それに、何か話した気だったから。」
「あなたが話しかけたんでしょう?私が望んだって言いたいの?」
「そうだよ。違うの?」
全く訳がわからない。チェシャ猫の言動にイライラしつつも私は行く当てもないので言う通に道に足を踏み出す。
振り帰ると、すぅすぅとき持ち良さそうに眠るチェシャ猫の姿が見えた。




・・・・・・・・・・・ティ―パーティ?