きっかけはほんのささいな事。
偶然保健室の前を通ったら、喘ぎ声がした。
一つは若い男の子。
その声に交じって聞きなれたテノールの声がしたから足を止める。
いつもなら、仕方ないと通りすぎる所。
だけど
その日は何故だか無性に腹が立って。
もしかしたら私の今日の相手に振られたかたかもしれないが。
とにかく、腹が立って。
私らしくもない
最中の途中に思いっきりドアを開けた。
鍵ぐらいかけとけっての。
相手の男の子はあっけにとられた跡顔を真っ赤に染め上げて侑士から身体を引き離そうとした。
まァ、初々しいこと。
だけどあの男、顔色一つ変えずに、むしろ楽しげに口を歪めて男の子を押し倒した。
「おしっ・・・・・・っっ、ああ!!」
「良い声で鳴くわねぇ。」
「せやろ?」
湿る声がバックミュージックとなる。
私達の瞳は妙に冷めていて。
侑士の肌に汗がきらめく。
身体は動かしているのに、瞳はまっすぐ私だけを見ていて。
その男の子が憐れで
なおかつ私も憐れに思えて
抱かれてもいないのに、弄ばれてる気がした。
それがとても不愉快で
何を考えているんだとか思って。
思わず動いた身体を止める事もしないで本能のままに侑士の頬をはたいた。
どうして、腹が立ったのか。
お互い同姓しか愛せないと分かっていたのに。
その直後、侑士の下で鳴いている小鳥が一際高く声を上げ、力なくその場にしなだれる。
侑士はそれを確認していとおしそうにその人の髪をすくと自分自身を抜いた。
何よ
なんでそんな顔すんのよ
男と抱くたびにそんな表情を見せているのかと思うと更にストレスが増した。
イってないくせに。
てゆか、私の時もイってないけど。
「・・・・・・・・・・恐い顔。」
クスを唇を吊り上げて、精液まみれの指で私の頬を撫でた。
だんだん険しくなる私の顔を見て、侑士は一層笑みを深める。
瞳を嫌そうに細めて、私は言った。
「まんねりセックスの良い刺激になった?」
「せやな、ありがとう。」
「この変態。」
にんまりと侑士が答えたものだから、私は憎々しげに言い放つ。
オイ、その笑顔はなんだ。
「興奮したんなら相手になるねんけど?(にっこり)」
「お断り。男は別に侑士だけじゃないし。」
その言葉を言ったら、侑士の表情が消えた。
私の言った事場にどんな効果があったか分からないけれど、侑士の気が向いた事を言った事は確かな事。
「?なに・・・。」
「嘘ついたらあかん。は女しか愛せへん。」
「ばっかじゃないの?別に愛なんぞなくともセックス出来るよ。」
「せやけど唯一を抱けるのは俺だけやで。」
「うぬぼれないでよ、誰がそんなん決めたの?」
ケッと、言い放ったら侑士はゆっくりと目を細めて微笑んだ。
「が"彼氏"として選んだんは俺やろ?」
なに言ってるんだ。
"せやから浮気はあかんで?"と、侑士は笑う。
だってお互い浮気してんじゃん。
侑士は男を抱いて、私は女を抱く。
お互い同姓の身体しか愛せない。
侑士とは気があって、流されるまま恋人のレッテルを貼ったけれども
私達の根源が変わるわけないじゃない。
だからお互いなにも言わない。
だって侑士とは一緒にいるだけで価値がある。
身体の繋がりなんてなくても
それを教えてくれたのは侑士だ。
黒髪が揺れて、侑士は私に微笑む。
髪に触れられて気持ち良くて、私も微笑む。
お互いそれで満足してたから、暗黙の了解で浮気を許した。
なのに
"浮気はいけない?"
何よソレ、侑士のやってる事はなんなのよ。
「もう良い。なんか話すの疲れた。」
どうでも良くなって。
なんかもー、どうでも良いってかんじになって。
だって私達は同じモノだけど、お互いの考え方なんて分かるはずもない。
侑士の考えている事なんて分からない。
いや、違う
分かってしまうから
私はこんなに恐いんだ
分かってしまうから
私はこんなにも逃げようとする
私は溜息をつくときすびをかえした。
「。」
耳に心地よく残る低い声が私を呼んだ。
その声に導かれるように振り返ると、侑士はまるでとても愛しいものを見るかのように微笑んだ。
その穏やかな瞳は、侑士の下で気絶している男の子を見る眼よりずっと優しい。
「また、屋上で。」
その言葉が妙に癇にさわって顔をしかめて、私は応える事もせずにドアのぶに手をかけた。
バタンと思いっきり腕に力をこめて扉をしめると、木の板が振動するのと同じに
私の心も震えた気がした。
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あれあれ、雲行きが怪しくなって来ましたよー。
てゆか、また私長いし(どうしよう)
侑士とのラブシーンが見れるのはもう少し先の話になりそうです(ちっ←最低)
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